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その、烙印に忠誠を…  作者: 結月澪
倭の国
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生贄と姫



かつて、人間は、森を壊し、生き物達の住処を奪い、大気を汚染した。


森は、えぐり取られ、その場所は、コンクリートと言う黒い土で覆われた。動物達の住処を人間の住処に変え、緑は、極端に少なくなっていった————。


コンクリートで固められた土からは、草木は育たない。


町に出た動物達は、ただ、食べ物を求めていただけなのにも関わらず、人間の安全の為に、——殺される。


繁栄を極めた人間達は、それだけでは飽き足らず、大気まで汚染していった。


そして、ついには、

————神々の怒りを買ってしまった。


あらゆる天災が、地球を襲い人々は、逃げ惑う。


空想上の動物である、”龍”が森に現れ、入る事は不可能。


いつしか、龍は、————神の化身と呼ばれる様になった。


しかし、愚かな人間達の中には、神に許された民族もいた。その民族は、龍の世話をする代わりに、龍を操る力を授けられた。


その力で、人間達は、己の国を作ろうと協力し、小さな国を作り上げた。


その国の名は、————倭の国


ただ1つ出来上がった国の王になろうと、人間達は、また、醜い争いを開始した。


初代の王は、【龍使い】。神に力を授けられた、民族であった。


この王は、己の私欲の為に、国を動かし、民から金を巻き上げ、結果、初代国王は、失脚した————。


それにより、龍使い達は、民から毛嫌いされる存在となってしまう。


それから、————数百年の時が流れた。


人間は、絶滅する事はなく、小さな国、倭の国を中心に、龍に怯えながらではあるが、着実に、豊かな暮らしへと変わっていったのだった。



***



かつて、ビルと呼ばれた建物。

それは、ガレキと化し、今や、ビルのカタチをとどめて居ない。


そのビルと呼ばれた建物の周りには、木や草が辺りに生え、荒れたその場所に、奇抜な着物のを着た一人の少女と、洋装をした騎士らしき男の姿があった。


ガレキを足で蹴る少女。


「ココが、聖なる地?」


聖なる地には、見えないその場所で、ガレキに視線を向けながら、ちらっと、洋装の騎士に視線を向ける少女。その表情は、まだ、あどけなさが残っていた。


風に腰まである焦げ茶色の髪を靡かせ、騎士を見る少女の瞳は、綺麗な金色。


その金色に、視線を向ける騎士


「はい。ココに神々が現れると、伝わって居ます。」


エメラルドグリーンの彼の瞳が、真っ直ぐな視線を彼女に向け、そう告げた。


「へー。」っと、あまり、納得して無さそうに、視線をガレキに向ける少女。


辺りを見渡し、ある物の前に、彼女は、膝を着き、手を合わせた。


「神様が、生贄なんて欲しがるとは思えないんだけど?」


彼女の前にあるのは、白骨化した遺体。


それは、少女と変わらぬ背丈で、こんな、”聖なる地”と呼ばれた場所に、転がって居た。


「生贄の儀式が行われていると言うのは、ただの噂じゃなさそうですね。————姫様。」


生贄の儀式。

それは、今は、禁止されたモノ。


禁止されて、今年で7年目となる。此処へ来たのは、噂を聞いたからだった。


「————っ!」


突然、頭を抱えた姫と呼ばれた少女。その表情は、苦しげに歪んでいた。


「姫様!」


慌てた様に駆け寄った騎士は、彼女に触れる前に手が止まった。


「人が、人を殺す。

生贄なんて、何の意味も無いのにっ!」


少女の右目は、ルビーの様に赤く変化した。


透き通る様な赤は、彼女の怒りを表してるかの様。

————それは、決して見られてはいけない、彼女の赤い右目。


その赤い右目を男は、何も見えない様に、その赤を隠す様に手で覆った。


「……姫様……」


悲しげに揺れる、エメラルドグリーンが左目に映る。


そして、エメラルドグリーンは、彼女の目から逸らされ、彼女の右手を映し出す。

いつも、彼女は、白いグローブを身につけていた。


そこには、生贄の証である烙印が、今もハッキリと残っていた。


彼女は、まだ6歳の時に、【生贄】として、この場所にやって来た。だが、その2年後、姫様は、城に戻ってきた。


不思議な事に、ココに来たのは覚えているのに

ココで、何があったかは、何も、————覚えていなかった。



「黒羽、もう大丈夫。ごめん。」

「香夜姫様」


そして、右目が赤く変わるそれを隠す様にと、俺が、姫様の従者となった。


赤い瞳は、彼女の感情とリンクしている。それは、最近わかった事だが、怒り。その感情の時に、赤くなる事が多い。


まだ、8歳だった彼女。感情をコントロールする事は、容易では無く、眼帯をした時期もあった。


そして、右手も烙印を見られる事も、右手を触られる事さえ、今でも、嫌がる彼女。そっと、右手に手を伸ばせば、素早く、手を俺から離した。


「何?」


不機嫌そうに、そう言った香夜。まるで、触るな。そう言っている様だ。


「いえ。何でもありませんよ。」


「何?さっきからその話し方。気持ち悪いんだけど……。」


どうやら、男の話し方がお気に召さなかったらしい。

気持ち悪いって、そこまで言うか?


「はぁ。姫様。一応、此処は外ですし。」


と、言い訳じみた言葉を言えば、


「誰も、居ないじゃん。」


だから、いつも通りに話せ。そういう事だろう。


「…………。はい。では、いつも通りに。」


従者とは、辛い仕事である。主の命は絶対。


「香夜、そろそろ帰るぞ。」

「なんか、生意気。」


お前がいつも通りにしろって言ったんだよ!


そう言おうとしたが、その言葉は、発する事はできなかった。真剣な面持ちで、白骨した遺体を見ていたからだ。


「黒羽、私も、こうなってたかも、しれないんだよね?」


白骨化した遺体を前に、そう言った香夜。



その表情は暗く、白いグローブがキュッと音を立てるほど彼女は、手を握りしめた。


「香夜?」


右手に手を重ね様とするが


「………触らないで……。」


彼女を苦しめる、右手の烙印


「……。仰せのままに。」


彼女の従者になって8年。未だ、彼女の心を開く事は出来ていなかった。

































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