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僕、地下にいる?

作者: 外海 茂寿

 枕元にセットしたスマホが鳴る7時よりもちょっとだけ早めに勝手に起きる習慣が僕にはついている。

 今日も腹時計のアラームを頼りに目が覚めたはいいけど、いつもと違い遮光カーテンの隙間から光は差し込まず小鳥のさえずりは聞こえない。今日はズレたのかなと思いもぞもぞスマホを取り画面を見たら、やっぱり腹時計通りの時間をさしていた。

 はてと思い、シャッとカーテンを開ければ、なんと外は土で埋め着くされている。きょとんとして3秒。「ああ。地下だなこれは。」と、手を叩き一旦納得し、「は?」と声を出したのはさらに3秒後。なんじゃこりゃ。リピートアフターミー。僕、地下にいる?

 ちなみに本来僕が住んでいるのはマンションの2階。ゴミの散らかり方やら机ベッドの位置やら部屋模様は完全に僕のなので、荷物だけそのまま模倣したことは考えられない。再現するなら30日あっても足りないくらいの、物だらけのグルーヴ感のある汚部屋なのだ。マンション丸ごと地下に移動させたか、逆に地下に埋まったかしかない…って殆ど同じか。

 ちなみにトイレは完全に機能した。水まで流せる。なんなんだこれは。

 部屋の外はどうなのだろうとドアを開けようとするが、鍵が掛かっていないことを確認してもノブすら回らない。部屋の外側から溶接されているかのような抵抗を感じた。

 うーんと唸りつつ居間に戻ると、溜めに溜まったゴミ袋の一つから黒い煙が細く出ている。やばい。ぼやだ。消さなきゃと風呂から水を汲んできたらもう手遅れ。瞬く間に熱気のある入道雲が空間の殆どを占めていた。こんな地下で火災事故なんて運が無い。いや、都合がよすぎる。命が狙われたのか。いやいや、それなら僕なんて普通に殺せばいいし。いやいやいや、その前に逃げろ!と思考を一巡させてから、僅かな望みをかけてパニックになりながら必死に部屋の外へのドアを叩きノブを回すが、しっかりチェックした通り無理なものは無理。そうこうしている間に火と煙がすぐ背中に迫っているのが見なくてもわかるようになってしまった。

 ああ。このまま死ぬのかなぁ。なんかもっといろいろやっておけばよかったなぁ。外国いってないなぁ。童貞だなぁ。焼け死ぬの怖くていやだなぁ。という後悔と恐怖と、それ以上のこの状況を受け入れられない気持ちがとてつもなく膨らんで、本当に本当に何が何だか分からなくなってどうしようもなくて頭が破裂しそうになって、というか爆発して、僕は肺がひっくり返るような大声でうわあああああああああああああああああああああと叫んだ。


 で、今。

 枕元にセットしたスマホが鳴る7時よりもちょっとだけ早めに勝手に起きる習慣が僕にはついている。

 遮光カーテンの隙間から光は差し込み小鳥のさえずりは聞こえる。枕もとのスマホを取り画面を見たら、やっぱり腹時計通りの時間をさしていた。

 きょとんとして3秒。「ああ。夢だったんだなこれは。」と、手を叩き一旦納得し、「はぁ。」と斜め下の気分で声を出したのはさらに3秒後。朝は寝ぼけているのに、なんか疲れた。

 そういえば、と、寝る直前を思い出す。

 灰皿を見る。寝タバコが零れてゴミ袋の上に落ちていた。危ない。

 正夢にならないよう、今日は部屋を掃除することにした。ついでに寝タバコもやめようと誓った。

 まだ死ねない。

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