第零章
西暦二〇三九年、三回目にも関わらず、ある四ヶ所の地方に現れた漆黒の悪魔により建物や公園などが全て消され死亡者も多く出された。そのうちの一ヶ所にある青年が率いる[北武学園第二部隊]やその他多数の部隊は住民の救助や漆黒の悪魔と対峙していた。
青年は辺りが燃やされている中、住宅街を一人で走っていた。
いつもの青年なら数名と行動していたのだろうが、そこまで青年自身の余裕が無かったからだ。理由は極めて簡単だ。
「貴様、明華さんをどうする気だ!」
青年は声を荒げながら炎のように紅いフード付きロングコートを着ている男性に言った。その男性はまるで当然かのように答えた。
「この娘を貰わせてもらう」
「なっ、ふざけるな!そんなことはさせない!」
「今のお前に出来るのか。もしかして腰に付けている剣一本でこの俺に立ち向かうというのか」
「そ、そうだ」
青年は身体が恐怖で震えながらも抜刀し、肯定した。
「お前には無理だ。勝つ可能性なんて殆ど無い」
「『殆ど』だろ。俺はそのほんの僅かの可能性であんたを倒し、明華さんを助け出せるなら、俺はその可能性に賭ける」
青年は実力差が離れすぎていることに気付きながらもきっぱりそう言うと、男性はふとニヤけた。
「面白い、かかって来い。この状態でもお前が勝てるのかどうか試してやる」
青年は勢いで攻撃しようとしたが、月影が人質となっていることを思い出し行動に移せないでいた。
「もしかして俺がこれを盾に使うと思っているなら安心しろ、これから媒体にする女を傷つけたりなどしない。それにこの状態でもお前に勝つことが出来る」
「……その余裕、叩き潰してやる!」
男性が月影を地面に置いたのを見た瞬間、青年は恐怖心を捨て、前方に飛びながら垂直斬りをする。だがその直後、青年の身体は後方に飛ばされた。
「え……」
地面に倒れてから青年は自分の左胸が空洞になっていることに気付いた。あの一瞬で男性は紅き閃光で青年の左胸を貫いたのだ。
「お前の勇気、しかと見させてもらった。良く実力差があることに気付きながらも勇敢に仕掛けた。だが、所詮今のお前では無理なのだ。これから死ぬのかそれとも奇跡が起きるのか、この世界のお前はどうかな?」
男性は一拍置いて話し続けた。
「四〇〇日だ。いくらお前より強い私でさえ必要材料が揃っていてもそれほどの期間が必要だ。もしお前が生きていられたら、阻止してみろ」
そう言い残して男性は空間を歪めてその中に消えていった。
その場に残ったのは左胸を開けられた青年一人だけだった。
『ちくしょう……!俺はここで死んでしまうのか。明華さんを助け出すことも出来ずこんな無様な姿で死んでいくのか……!』
そんなことを思っていると、青年の頭上に一人の少女がいた。
「貴方はここで死にたい?それとも生きてあの女性を救いたい?」
青年は考える間もなく答えた。
「俺は、生きて明華さんを救いたい!でも……」
「ここで死ぬかもしれないから諦めるって?」
「……」
「もし私が望む方向に進めるように出来ると言ったら、貴方は信じる?」
青年はもう声が出なく体がほとんど動かない状況だったが、こくん、と頭を縦に振った。その様子を見た少女は微笑んだ。
「だったら、貴方の本来使用できる能力の開花に助力しましょう。その代わり、あの女性を誘拐した男を倒す、そして世界を救う英雄になって貰いますよ」
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執筆初心者なのでどこかおかしな点がありましたらメッセージお願いします!