XXX. ヤンデレルート カカシ
病デレて・・・・ないね。
この噺が書きたいが為に連載始めたと言っても過言じゃない。
※別サイトでも掲載してます。
http://bakezaru.blog.fc2.com/blog-category-6.html
「あなた、本当にカンザスに帰るんですか?」
最初にドロシーの旅の仲間となったのは私だった。最初に私が彼女に声をかけたとき、彼女はひどく普通の少女に見えた。少し会話をしてみて分かったことだが、事実、彼女は普通の少女であった。結局魔女を倒したのは、私でもブリキの木こりでもライオンでもなく、彼女だったのだけれど。
「帰るわよ。」
ドロシーは彼女の大切な友人を腕に抱えて、悩む間もなくきっぱりと言い切った。
「・・・・・・そこは多少なりとも悩む姿をお見せなさい。」
互いの目的が一致した為に組んだパーティではあったが、カカシも、木こりも、ライオンも、勿論自分も、皆彼女が好きだったから、彼女が居なくなることを私はひどく寂しく思った。
「だって、私魔女になる気ないもの。」
「は・・・?」
「私、この世界で二人も魔女を倒したわ。だから、次の魔女は私なのよ。」
カカシは、彼女の言わんとすることをそこで漸く理解した。
「 あなたが、・・・・魔女。 」
「 そう。 特別な力なんて何ひとつ持っていない私が魔女になるの。 オズ大王が大王になったように。 」
カカシは彼の性質故に温度を感じることは無かったが、ドロシーの言葉にすうっと肝が冷えた心地になった。
それは、ドロシーがこの地に留まればかなりの確率で起こり得る未来だった。
「・・・・・・・・・ああ、ドロシー。」
「なあに?」
この小さな愛しい少女が魔女になってしまうなど、カカシは考えていなかった。 自分が彼女を旅に誘った時、自分にはそんなつもりなんて一欠けらもなかった。
「あなた、本当にカンザスに帰るんですね。」
「ええ、帰るわ。」
オズにもらった脳みそでも、彼女を引き止める言葉は見つからなかった。
彼女が魔女にならないためには、彼女はカンザスに帰るしかなかっった。
「でもその前に、これ以上あなたの顔がインクで滲んでぐちゃぐちゃになったら、私があなたの顔を描いてあげるわ。」
「嫌ですよ。 あなた、随分と絵が下手くそなんですから。 謹んで遠慮します。」
ドロシーは、涙を流すカカシの頬にキスをした。
ああ、可愛い人。二度と会えもしないのに、そんなもの残して行かないで下さい。
私は、あなたに何一つ残せやしないのに。