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第1章 落ちてくる逃げるビギニングストーリー #7

「これで2対2、互角」

「ちょっと待て、俺は頭数に入れるな」

「一応、数が多いほうがいいの」

「そうかよ」

 一喜は嬉しい気持ちになった。これで少しは役に立ったと思えた。戦闘の邪魔をしない様に後ろへ下がり、沙織が残りの2人と対峙する。

「炎の精霊を加護の元、矢よ顕現して」

 沙織が弓を射る時の体制を作る。そこから炎の矢が出てくる。

「風の盾、我らを守れ」

 風の盾がいち早く出てきた。黒服の男は2人とも同じ魔法を使う。

「付加魔法、風」

 沙織が小声でつぶやいた後に、1本の炎の矢が射られて男へと襲いかかる。

「こっちには。っ!」

 盾で防御していたために意気込んでいたのだが、炎の矢が方向転換して、2つとなり、そのまま1つが盾とぶつかり盾を消し去る。

もう1つは、後ろからぴったりくっついて来て、1人の黒服の男に直撃した。もちろん、死んではいない。気絶しただけだ。

「これで、あとひとり」

 最後に痩せた黒服の男が残った。黒服の男は屋上の出入り口におり、逃げる事をできなくしている。ある程度、距離をとり睨み合っている状況が続く。

 桜の花びらが屋上へと舞い上がり、3人の間を通る。止まっていた時間が動き出す。

「炎の聖霊、私に刃を」

 沙織は炎の剣を手に持つ。距離は随分離れている。2人が睨み合いながら間合いを測るために近づいていく。

 一喜は眺める事しかできない、もどかしい感情が溢れてくる。

「まったく、なめられたものだ」

 先程とは気配が変わる。頭だけではなく全身が震えてしまうほどだった。

「風の三つ又よ。我にすべてを」

 槍の左右に小さな両刃がついた三叉槍さんさそうが手にできた。

「魔法は本当に何でもありだよな」

 足が震えて一歩も動けない。あんなの一撃でも食らったらおしまいだと心が叫んでいる。

「これがほんとうの力だ!!」

 黒服の男は三叉槍を沙織の方に付きたてつつ突進してきた。

 とても速くそして、とてもゆっくりとした時間が流れる。

「つかまるわけにはいかない!」

 三叉槍の真ん中と左の刃の間に剣を当てて防ぐ。しかし、力負けしてしまってどんどん押されていってしまっている。

「ぐっうぅっ!」

「これでどうだ」

 黒服が力を抜いて後ろに下がる。それによって前の力がなくなり倒れこんでしまう。

「終わりだ!!」

 殺気が強くなることがわかる。一喜自身見ていることしかできなかった。もうダメなのか、そんな諦めの気持ちが出てきてしまう。

「まだまだ! 炎の盾!」

 2人の間に火が噴き出てくる。

「ぐはっ」

 黒服の男はモロにかかり、後ろに下がって行く。

「ぐっ」

 沙織の方も衝撃によって倒れたまま、起きることができない。あの瞬間、至近距離で防御したために、自分にもダメージを与えてしまった。

「まだだ、まだだぁぁぁっっ!!」

 黒服の男の目はすでに色を失っていた。狂気に支配されて、直線的に進んできている。

 避けようと思えば簡単に避けられるほどの単調の攻撃。今の沙織は動けないでいた。

 一喜が頭で考えるより先に体が動いていた。いつの間にか一喜と沙織の倒れているところが近くなっていた。それは錯覚でもなんでもなく。一喜が徐々に近づいて行ったためであった。

「男だから、かっこよくしないといけない時があるんだよ!」

 一喜が走る。

 先程と同じようすべてが速く……そして遅く見えた。

「じゃっまだ!!」

「ダメ!」

 沙織が叫び、黒服の男も叫びながら突進。

 一喜は沙織を跳び越え。

 黒服の男の三叉槍に向かって突き進んだ。

 この間の時間はほとんど経過していなかった。体感時間ではゆったりと流れて行った。

――川の小葉が流れていくかのように、

――紅葉した葉が落ちるかのように、

「これで!」

 男の斜め横から体を当てた。先ほどと同じ行動。直線状の動きは殺しきれなかったが、横にずれたことで、攻撃は沙織のわずか左にそれた。三叉槍が屋上の床をえぐる。

 一喜は運が良かったと思った。一歩間違えれば、三叉槍に当たっていたかもしれないし、もしかしたら、当たり損なったかもしれない。体をまたもや床に強打した。肺から酸素がすべて抜けたような感覚に陥る。一喜は一つ学んだ。体を大切にしろと。

 男の近くにいるために、一喜は激痛を耐え離れた。その一瞬の時も無駄にせず、沙織は魔法を詠唱する。

「燃えなさい!」

 沙織が炎の矢を出して黒服の男に当たる。そのまま気絶した。一喜は不思議に思う、どうやったら殺さずにすむのだろうか、魔法の謎だった。

「か、かった……」

「やった!」

 屋上には2人を除いて誰もいなかった。喜びのあまり、恥ずかしさを覚えずに抱き合った。

「うっ!」

「いたっ!」

 2人とも傷が痛み、沙織は腕を押さえつつ、一喜は背中をさすりつつ、うずくまる。沙織は沙織で、魔法の詠唱による消耗が激しく、一喜は体を張った行動により、2人とも疲れ切っていた。

「勝ったんだよね?」

「もちろんだろ」

 2人とも特に一喜は傷だらけだった。

 そんな時に屋上のドアが開く。

「あっ」

「えっ」

 2人が間抜けな声を漏らす。視界に入ってきたのは黒服の男が5人。その中でも真ん中にいる男は今までの奴らとは違う雰囲気を出していた。


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