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第1章 落ちてくる逃げるビギニングストーリー #3

「おい、どこいくんだよ?」

「ちょっと、校門まで……」

「このまま、行くのかよ?」

「仕方ないでしょ」

 彼女の頬は、少し赤みがかっていた。ゴミ捨て場から校門まで急ぐ。

「やっと、見つけました」

 黒服にサングラスを付けた男の数人がこちらに気付くと走ってくる。いかにも怪しい。怪しさが目立つ連中に追われている少女だった。

「やば! もう見つかった!?」

歩くスピードを速めて、競歩となり。走らずに急ぐと言う芸当を見せて、一喜の事を引っ張って行く。一喜はこの状況はまったくわからなかった。落ちてきた男と同じ服を着ているから関係者なのだろうかまでは推測できる。

「あの……もしかして俺に発言権なし?」

「なし」

 たった二言で片づけられてしまった。そのことに少なからず一喜は肩を落とす腕を引っ張る力がすごくて離すことも、ましては止まることすらできなかった。

「もう! 炎の聖霊よ、ここで盾となれ」

「魔法!?」

 後ろに向かって、炎が吹き上がる。

 この高校は魔法科と科学科があるから、瞬時に魔法科の生徒だなと思う。

 科学科は単に魔法が使えない連中が集まっているところ。だから頭が特別いいわけでもなく、何か研究しているわけでもない。ただ、魔法が使えない生徒=科学科の生徒なのだ。

(まじかで見るのは久々だ……)

 一喜は科学科の生徒のために、この至近距離から、攻撃系の魔法を見ることは久々の事だった。

「何度やっても無駄です」

 男の前で炎が消えてしまう。

(おいおい、相手も魔法を使うのかよ)

 今の炎の消え方は普通にはありえない消え方だった。見えた限りでは炎が、切れるはずのない現象である炎が切断されていた。あの黒服も魔法を…おそらくは風系統の魔法を使ったのだろう。風系統など、魔法には系統別に分かれているということは本で読んだことがあった。ただし、実際に見ることになるとは思いもよらなかった。

「どこ行くんだよ?」

 なすすべもなく引っ張られていく。

「とりあえず、人の多い所」

「それで、校門に向かってるのか」

 走っている方向には校門がある。

「前かおいでなすった」

 ちょうど校門の方から黒服の男が近づいてきた。

「いったい、どれだけの数がいるんだよ!」

「知らないわ!」

 校舎の中に入って走り出す。廊下は走っちゃダメじゃないか、なんて言われても気にしていない。

「というより、何で俺まで走ってるんだ!!」

 一喜も一緒に走っていた。なぜだが、わからないので、とにかく走っている。

「いいから、ついてきなさいよ!」

「お前は、何様だ!!」

「お前じゃなくて、私の名前は姫川沙織ひめかわさおりよ!」

「どっちでもいいだろ! えっと、俺の名前は結城一喜な。ってこんなことしてる場合じゃない!」

 必死に走っているために教室を何個過ぎたのか思い出せない。どっちが南で、どっちが北なのか思い出せない。

「結城君、どうすればいいと思う?」

「そうだな……素直に諦めるのは?」

「それはダメ」

「ダメなのか……」

 適当なドアを開けて入る。

 そこは、たくさんの資料などが積まれていて埃臭い。

 沙織は目の前の大きな窓のカーテンを閉める。

「どうするんだ?」

 資料室に入ってから小声で話す。楽しめる状況では、ないのだが……女の子が逃げているとなれば見て見ぬふりはできなかった。

 決して下心があったわけでは……すいません。バリバリ下心あります。こんな美少女と! 何て思ったりしてます。すいません。と心の中で懺悔をする一喜。

「何、ひとりでぶつぶつ言ってるの?」

「いや、すまん。下心があったわけでは」

 口を閉じるが時すでに遅く沙織はバッチリ聞かれていた。

「したごころ」

「いやいや、何もない! 何も!」

 慌てて首を振る。そのことすら意味のないことになる完全に墓穴を掘ってしまう。

「なるほどね」

「あの……その目はやめて。ストップ!」

 蔑んだ目で見られ、我慢できるものでもない。

「それは、おいおい考えるとして」

「おいおいっていつ!? 今の状況、意味がわからなさすぎる」

 一喜の今の状況――意味が分からん。

 沙織の今の状況――逃げ切りたい。

 2人の思惑が別にせよ。一喜が一方的に不幸な状況になってにせよ。

 資料室に立てこもっているのが今の状況であり現実。

(俺が巻き込まれているじゃないか!? 俺だけが何か一方的に不利じゃないか!?)

 愚痴ったところで何も始るわけでもなく。

「それより、私に協力して」

「協力って、俺は魔法も使えないぞ」

「へぇ~、結城君って科学科なんだ」

「そうだ。だから、協力できない」

 一喜は素っ気なく答えた。魔法を使える事態脅威なのだ。一喜は魔法なんて使えないから、魔法を使える相手に対抗する手段はない。そんな魔法を使う相手に対する恐怖というは世界を覆い尽くしている。

 科学と魔法の対立は激しい。時をさかのぼれば、数百年までさかのぼれてしまう。70年前には戦争も起こしている。魔法文明が発達している欧州。科学文明が発達している米州。

 少し昔、科学が迫害を受けていたために、新天地アメリカへと逃げて行き国まで作った。そのために2つの溝は、ますます深まって行った。

 日本は70年前の戦争では科学側に付いていたのだが、手痛い経験から魔法側も受け入れて、中立を取った。そのために日本は珍しい国なのだ。

 国では中立と謳っているのだが、市民レベルになると、差別される―――区別されている。

 この学校でも科学科、魔法科に分かれており。生徒間では差別している。一部の先生達も表には見せていないが、増悪の気持ちが隠れながらあり。科学と魔法が対立しているのが現状なのだ。

 魔法を使える側からとってみれば、魔法を使えない者は弱者として見る。逆に魔法を使えないために、魔法を使える者を恐怖畏怖して、どうにかしようとする。この負の連鎖が世界における対立を作り、深い溝を産み落としたのだ。

 日本は中立だと言っても、このような根底にある意識は中々取り除くことはできない。知らないうちに表に出してしまうからだ。

 よって、魔法科の生徒は普通は協力を求めない。プライドうんぬんで会話すらしない。そもそも戦える云々《うんぬん》で絶望的なまでに力の差が出来上がるからだ。

「別に科学でも歌学でも、いいから協力して」

 そんなことを気にしている様子もなく沙織は言う。

「いや。でも俺は科学科だ。そしてお前は魔法科、OK?」

「バカにしてるの? OKよ」

 彼女は普通ではなかったらしい。科学科だからと言う説得は失敗した。一喜は次の手を考えているうちにタイムリミットはきてしまう。

「ここか!!」

 厳つい黒服&サングラスの男が2人、入ってきた。サングラスで目は見えないが、鋭そうなにらみを肌で感じた。


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