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第1章 落ちてくる逃げるビギニングストーリー #1

「まったく……しつこいー!」

 朱色の髪を揺し、息を切らせながら、狭い廊下を走っている少女がいた。周りには、使われていない教室が数多くある。もしくは特別な教室ばかりだ。

 うすい黄色を基調として赤色の混じっている制服を着ている。

「止まってください!!」

 後ろから、数人の黒服の男が近づいてくる。学校には不恰好な服装。

「来ないでって、言ってるでしょ」

 息を切らしながら少女は走っている。

 今まで、ずっと逃げていた。かれこれ数十分は過ぎている。途中で足止めをしながら逃げての繰り返し。それでも後ろからしつこく追ってきており振り切れない状況が続く。

 少女は人気のない校舎を走っていた。誰か助けを呼べなかった。呼べる人がいなかった。

 ほこりがたまって使われていない教室を横切って行く。

(誰でもいいから、助けに来て!)

 心の中で叫んでしまう。

(私には…………)

 少女には親友と呼べる人物なんていない。仮初の友達ばかりを作っていた。うわべだけの友達、本音や自分の悩みなど相談したことはなかった。

 本当の自分を見つけてほしい、そんなことを思う時がある。しかし、それがわかる人は今まで出会えていない。そう思うこと自体わがままなことだと思ってしまう。

 そんな事すら考える時間を与えてくれず。

「これで終わりです」

 目の前からも2人がこっちにくる。後ろからも3人来ており袋の鼠。

「あーもう」

 横にあった扉を思いっきり開ける。たとえ逃げ道がなかったとしてもそうしたかった。捕まりたくなかった。

 教室に入る。使われていない教室で机の上に埃がかぶっていた。窓のそばに近づく。それが無駄な足掻きだろうと関係なかった。体が勝手に動く。

「さぁ、ここまでです」

 合計5人が教室の中に入ってきた。両側の扉から徐々にこっちに来る。

「貴女が、帰ると言えば、それで済む話なのですよ」

「だから、帰らないって言ってるでしょ」

「そう仰らずに」

 一歩一歩近づいて来ている。5人に囲まれている。少女は一歩一歩後ろに後退して窓のほうへと近づく。逃げ道がなくなった。

「それなら、炎の精霊たちよ、今ここで舞え!」

 彼女は魔法を使い、炎が横一列の波となって黒服の男に迫る。

「魔法を使いますか。風よ、一風で我らを守りたまえ」

 少女が放った炎の波は風によって飲み込まれて消されてしまった。ほこりが教室内に舞い散る。白い靄で視界がかすかに悪くなった。

「無駄な抵抗はやめてください」

「いやよ!」

はっきりとした拒絶を示す。黒服の男たちはゆっくりと追い詰めようとする。

「さぁ、おとなしくしてください」

「それじゃあ、火よ、出でよ!」

 指でパチッと音を鳴り大爆発が起こる。小さな火が爆発を呼んだ。

 埃が風によってあたりに舞ったのを利用した粉塵爆発ふんじんばくはつ

「風の盾!」

 2人の男が爆風で飛ばされて、窓を突き破って下へと落ちていく。

「それじゃあね」

 少女は、窓から飛ぶ。いや、飛ぶというのはふさわしくない。彼女は跳んだ。下に降りようとしたのだった

「風の精霊よ、我が体を守りたまえ」

 彼女の周りがエメラルドブルーの光に包まれて、無事に着地できるかと思ったのだが、下には人の姿が見えた。着地点にちょうどいたために避けることはできなかった。

 ぶつかる覚悟をしたたが、口から声が漏れてしまった。

「じゃまーーーーーーー!」


―――――この出会いが物語の始まり―――――

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