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第三幕 明石の中宮4

源氏 入道殿は大堰に山荘をお持ちであった。財に任せてさらにこの

 山荘を飾りたて母と娘をお住まわせになった。しかし所詮は受領の

 娘わしが即位せぬ限り中宮にもなれやせぬ。ならば孫娘をと、その

 一念のすさまじさ。それに負けて姫君をわしの養女にすることにし

 た。それなら中宮になる可能性が高まる。


中宮 それで紫の上様のもとへ。

源氏 そういうことじゃ。辛かったのう八年間、ほんとにすまぬ。


中宮 私がまだ三つの時でした。母上ここにお乗りくださいと言っても

 牛車にはお乗りになりませんでした。もう忘れました。


(中宮の目がにじんできますそれを振り払うかのように明るい声で)


中宮 紫の上様があまりにお優しかったのでもう虜になりました。

 泣き止まぬ私に出ぬ乳を含んで泣き疲れて私が眠るまで、あとで

 よくお聞きしました。お子のない紫の上様の心根に何かを感じて

 すぐに私はすべてを受け入れることができました。これはおそらく

 母の血なのでしょうね。


源氏 そのような素直さは間違いなく母御、明石のお方の血じゃ。

 そしてついに一族の念願かなって姫は中宮になられた。入道殿の

 すさまじい執念を感じずにはおれぬ。


(中宮、帰り支度を始めます)


中宮 今日、お話をお聞きして、おじいさまのすさまじい思い入れを

 新たに身に染みて感じ入りました。お疲れでしょう。今日はほんと

 にありがとうございました。


(惟光、お市駆け寄り、中宮帰り始める。源氏、お市手を取り、木履。

庵出口にて中宮を見送ります)


中宮 お父様ほんとにありがとうございました。


(遠見夕暮れ。山並み。中宮橋掛かりへ。皆で見送ります)


                          第三幕 幕 つなぎ

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