2-7
光が全て体に消え、手には刀が握られていた。刃は夕焼けを反射して明るく輝いていた。
「変身ってこんなもんなのか」
今の状態は変身済みなのだろうか。変わった事と言えば、刀が出てきたのと、髪がより左に流れたくらいか。
「天照さん、これで終わりなのぉ」
試しに聞いてみた。
「うん、初めてにしては上出来だよ。ボク何て最初は猫耳だけだったよ」
耳だけあっても仕方ないしな。刀があるだけ良い方なのかな。
変身の出来を確認している隙に網切りが突進してきた。普通なら切り裂かれていただろう。だが今は違った。相手が動き出す瞬間、空気というか気配を感じ取ることが出来た。
網切りの突進をすかさず回避した。見た目は変わっていないが変身の効果は確かにあった。これなら倒せる。そう確信した俺は刀を構えた。
「さあ、来い変質者」
網切りを挑発すると、また中に浮きながら突進して来た。
刀を真上に振り上げ、網切りの下をくぐるように振り下ろした。振り下す刀と突進がぶつかると、相手の頭から胴体、尻尾まで刃が進んで行き真っ二つに切り裂いた。
半分になった網切りは地面に落ちると光となって空に消えた。それを見て安心すると、急に腕に力が入らなくなり持っていた刀を落としてしまった。
「刀ってこんな重いんだ」
刀は光の塊になり、みるみる形を変えて行き烏天狗が現れた。
「なかなかの腕前でござったな」
「すっごく良かったよ」
二人とも誉めてくれたが、腕がプルプルだ。腹も減ったし。ラーメンでも食い行こうかな。
「天照さんも一緒に行く? ラーメン」
天照さんは少しうつむいてしまった。一人では寂しいので誘ってみたけど今日初めて話した女の子にラーメンってのも駄目だったかな。
「ごめん、やっぱいいや」
俺は歩き出した。
「あっ、待って行く。絶対行く。ラーメン大好き、ていうかボク、君の事……、って、ちょっと、待ってよお」
すでに遠く離れていた俺を小走りで追いかけた。