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天照さんはすかさず横に転がって回避した。その反射速度にも驚いたが、それ以上に驚愕なのが襲った変質者の姿だった。
白髪で天辺がはげたしわくちゃの顔、そして体は人の首ぐらいの太さで一メートル程の蛇のようであり、大きな蟹のハサミがついた腕を持っている。しかもそれが中にふわふわと浮いているのだ。
「やっぱり変質者は妖怪だったんだ」
妖怪って、まじかよ。普通の精神なら疑っている所だが。昨日妖怪に襲われたために、それが妖怪だと受け入れるしか無かった。
妖怪の攻撃をその後もかわし続けて黒猫に言った。
「行くよ、『猫又』(ネコマタ)」
まさかあの猫も妖怪だったのか。そう思った時黒猫は鳴き声をあげた。
「ニャー」
天照さんは黒猫を見ると、みるみる表情が青ざめて行く。
「こ、これただの黒猫だ。いつの間に入れ替わったんだろう」
黒猫はどこかへと消えて行った。
「最初っからだよ」
俺は思わず大声でつっこんでしまった。
「君、何でこんな所にいるのさ」
「そんな事どうでもいいから逃げよう」
天照さんの手をつかみ走った。
「いったいあいつなんなの」
走りながら訪ねた。
「『網切り』普段は網戸切ったりするだけだけど、今は実体化してて……」
話の途中で網切りに追いつかれた。ハサミを大きな持ち上げ思いっきり振るった。
天照さんを抱くように転がり避けると、ハサミは電柱にぶつかり、快音と共に弾かれた。その隙に起き上がってまた走った。
このまま逃げても、疲れて走れなくなって殺されるだけだ。どうにかしないとやばい。昨日みたいにパンチするか、でもあの時も烏天狗にさっぱり効果無しだったし、今やったって結果は目に見えてる。
どうしようもないでいると突然、突風が吹いた。土埃が舞い上がりとっさに目を瞑ると、何者かに抱き上げられ、足が地面から離れた。
恐る恐る目を開けた。横には天照さん、全く状況がつかめていない様子だった。小さな家々と間の細い道。あっ商店街だ、うふふ学校も見えるや。上を見上げてみた。
「ひぃぃぃ」
悲鳴をあげた。何故ならいま俺達が命を預けてるのはあの一生物のトラウマを植え付けられた烏天狗だったのだから。
「驚かせてしまったな、すまない、拙者はもう貴殿らを襲う事はない。助けに来たのだ昨日のお礼にな」
おい、こいつ昨日はニンゲン……コロス……みたいな喋り方だったろ。侍みたいになってるぞ。それにこいつが助けるって、どう言うことなよ。そこん所天照さんに小声で聞いてみた。
「ニャるほど、そういう事か」
天照さんは手のひらをグーでぽんと叩いた。
「そういう事って、どう言う事」
「烏天狗は禊によって正義の心を取り戻したんだ。つまり今の彼はボク達の味方。そうだ、勝てる、奴に勝てるよ」