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泣いてる加賀美さんに不細工達を押しのけ一人の男が現れた。
「ちょっとどけてくれるかな」
血管が透けるような白い肌、艶やかな黒い長髪。星も月さえも無い夜のように暗く深く吸い込まれそうな瞳。
「ちょっとあんた誰よ」
不細工の一人がしゃしゃり出た。
「俺かい? 俺は葛城良だ」
葛城は近くの机に置いてあった筆入れからハサミを取り出した。
「少し短くするけど大丈夫かな? 」
「えっ、うん」
戸惑いながらも返事を返した。すると大胆にも加賀美さんの頭に何の迷いもなくハサミを入れて行く。
なんと言うことでしょう、雑に切られていた加賀美さんの髪は巧の業が生きるすっきりとしたセミロングになったのです。
プロ並みの腕に拍手が起こった。
「そこの君、ここ掃除しといて」
葛城は俺を指差した。何で俺が。そう思ったがこの状況で口答えしたらクラス全員敵に回す気がしたので、素直にほうきとちりとりを持った。
「ボクも手伝うよ」
嬉しい事に天照さんもほうきを持ってくれた。俺達は床に散らばった髪の毛を集め始めた。
どうやら加賀美さんの話では登校時に墓の前で不審者に襲われたらしい。更に犯人について詳しく聞くとはげたしわくちゃの爺さんで蟹のハサミみたいな物で切られたらしい。
犯人の特徴を聞いた天照さんは険しい表情になっていた。女の子だから許せ無いのだろうが、それだけではない別の理由が有りそうだった。
掃除を終えた後は始業式とホームルームをして三時頃学校は終わった。
部活をしていないし放課後残る理由も無いのですぐ帰る事にした。
校門を出て少し歩くと、前方に天照さんがいた。声を掛けようとしたが、不審者の話を聞いていたときの意味深な表情が気になったので少し尾行してみた。
天照さんは何やらただの黒猫に話しかけながら歩いている。この時間でもやはり活気の無い商店街を抜け、住宅地の一角にある人気の無い墓に着くと足が止まった。
「ここら辺にいるかもね」
なにがいるって言うんだよ。つうかその黒猫さっきから、にゃあってしか言ってねえぞ。俺は墓の一つ前の曲がり角、天照さんからは死角になってる場所から様子をうかがっていた。
ふと墓石に目をやった。なんとそこにははげたしわくちゃの爺さんの顔が見え隠れしていた。それはもう、スカート短い女子高生がエスカレーターの前にいる時ぐらい見えそうで見えない。そんな事考えてたらそいつが急に飛び出した。