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「最終」 幸せって罪だ!

 今話で『天使な俺の転生物語』は終了です!  ありがとうございました!


 古くから欧州(ヨーロッパ)では、オリーブは平和の象徴とされている。


 そのため、絵画などにおける寓意では登場人物や、その土地において平和が訪れる事などが示唆されているらしい。


 何故俺がこんな事を思っているかって?


 それは、ひとえに目の前のこの、父と弟の師匠に由来する。


 百合(スザンナ)……


 様々な事において純潔を意味するこの花は特に、聖母マリアと関連付けられる事が多いと思う。


 また、その聖母(ノートル・ダム)に対し、神の子を宿したと受胎告知を行った天の伝達者……大天使ガブリエルの持ち物とされる。


 そのため、受胎告知のシーンにおいて、彼が百合の花を持つ事はマリアが純潔……処女のまま子・イエスを身篭った事を表す寓意だ。


 『無原罪の御宿り』と言えば誰でも一度は見たことのある有名絵画の主題だろう。


 「で……ニアくん、相談……て、なに?」


 俺の前でボソボソと言葉を紡ぐのは他でもないリリーさんだ。


 いや、まぁ、確かに俺が呼びましたとも、悩み事があって貴女を呼びましたとも!


 だけれども!  これはないだろう!!


 「そうだって、ニアくん。辛いことが有るんだったら言えよな」


 朗らかな笑顔を浮かべながらその長い赤髪を撫ぜる|《松パン》……


 「そうですよ、ニアさん!  悩み事があったらワタシとお兄ちゃんに行ってください!」


 優しげな微笑みを顔全体に溢れさせて俺に伝えてくれるスコティカちゃん……


 「リリー先生……なんで王族(・・)がここにいるんですか?」


 そう、この赤毛といったら今まさに、諸国の力をかりて復興に勤しむ隣国……フツクエの王子と王女であった。


 確かに、元々国を追い出されたとは言え、しかしその事は現国王レンゲによって謝罪と共に取り消しに為れた筈だ。


 が、何故か中流階級の館に住んでいるとは言え、所詮小市民に過ぎない家にいるかというと……


 「ご…ゴメンね、ニアくん……この2人がどうしてもって言って……」


 結局連れてきてしまった、という事か。


 はぁ~……


 いや、まぁ、確かに悩みを聞いてくれるのは嬉しいが……


 かといってそんなにむやみやたらにはなして良い事とも思えない事だ。


 だが……!




 俺は、意を決して話す事にした。


 俺の発する空気が変わった事が伝わったのか、微妙な緊張が3人の中に伝わる。


 暫くの沈黙が俺の家の応接間に流れる。


 昼時の為に窓から指す南光が素朴なテーブルクロスを伝う。


 緊張の為か喉が乾いてくるが、それでもなお、俺の胸の中の悩みを伝えようと言葉を絞り出した。


 「実は、俺……オリーブに好かれているみたいなんだ……」


 俺は頭を下げながら言葉を口にした。


 うつむいている状態の為、自分の膝小僧が寒々しく映る。


 恥ずかしさからなのか顔に熱が集まっている感じがしてからだが熱い!


 「……え?」


 「……う、ん?」


 「…………」


 みんなの答えはこの通り、上からリリーさん、パン、スコティカちゃんだ。


 うん、やはり意外だったのだろうか?  スコティカちゃんに至っては絶句だった。


 リリーさんとスコティカちゃんは目に涙が溜まって見えるが埃でも入ったのかな?


 暫く誰もなにも言わない、沈黙の時間が再び訪れた。


 「……え~と…それで?」


 最初に立ち直ったのは流石、というべきなのか、リリーさんであった。


 その桃色の目の中には非常な当惑がありありと浮かんでいて、俺になんでだか罪悪感を感じさせる。


 いや、なんで?  って、コッチの方が聞きたいんだが……


 俺がリリーさんの言葉のあみを図り兼ねて首をひねっていると、思わぬところからたすけぶねがでた。


 「その事は、ニアさんがオリーブさんの事をどう思っているか、が大事だと思います……」


 しかし、それはより俺を混乱させる様な意味深な言葉だった。


 んん?


 俺が……どう思っているか、が大事……だって?


 なにを……とは、聞くまでもない事だろう。


 俺の脳裏に1人の少女の姿が浮かぶ……


 「そうか……」


 だが、結局おれはそうやってつぶやくことしかできなかった。


 わかってる、わかってたんだよそんなことは、最初からな。


 だけれど……俺自身、オリーブの事をどう思っているか、ということが、あの時の告白依頼わからなくなってきていた。


 確かに、彼女は俺にとって大事な幼馴染だし、失いたくないほど……かけがえのない存在だ。


 だけれど……


 「ねぇ……ニアくん」


 と、その時にまたリリーさんの声があがった。


 今度の声色はさっきのと名時で情けなくはあるが、しかし、真摯な心がこもっているようにおもえた。


 「は…はい」


 それで答えた俺の口からはそれ以上に弱気な声がでてきた。


 そんな自分に少しの恥じらいを覚えながら、顔をあげる。


 「ニアくんはさ……きっと、勘違い……していると、思うんだ……」


 俺は、リリーさんの真剣な眼差しに射抜かれて身動きが取れなかった。


 それでもなお、リリースさんの桃色の瞳はまっすぐにおれのことを見つめてくる。


 「ニアくんは……きっと、全ての人を平等に……分け隔てなく“愛”そうとしているんだと思うんだ……」


 そんなことはない!  と、言いたかったが、喉に綿が詰まったように何もいうことができなかった。


 なおもリリーさんの話は続く。


 「でもね、いつか、きっとそうじゃいられない世界がくると、ワタシは思うんだ……」


 リリーさんは悲しげにまぶたをふせた。その状態からはリリーさんの表情はうかがい知れない。


 「きっと、いつか……ニアくんにも特別に好きな人が出来ると思う……だから……」


 しかし、それ以上のことはリリーさんは何も言いはしなかった。


 自分で考えろ……って、ことか?


 ヨハネ……


 ☆


 


 噴水……


 吹き出る水が公園の空気を潤していた。


 木々は風に揺られ、生命感あふれるさせる緑の色をその躍動のままに踊らせていた。


 ここは、この学術都市ウリムの中央区に建設されている中央公園だ。


 ふだん、今日の様な休日ならば人に溢れていることだろうが、周りには人影は見られない。


 はるか西方に犬の散歩をしている老人が見えるくらいだ。


 まぁ、この街の顔とも言える学院が酷い損傷を受けたからな、大抵の人はそっちへ向かっているみたいだ。


 じゃなければ仮にも講師の俺はこんなところにはいれないだろうな。


 と、俺がそんなことを考えていたら……




 「………………オ…おま、たせ……」




 よく、見知った顔の幼馴染が漸くあらわれた。


 待つことかれこれ40分くらいだろうか?


 だが、まあ良いだろう。


 


 「あ……いや、俺も今きたところだし……」




 俺だって自然に会話をしたいんだけれど……


 どうしてもあの時のことを意識してしまってギクシャクしてしまう。


 もちろん、あの時のことから会うのはこれが始めてだ。


 オリーブは今はこの暑い金色の光を眩しく受け止める真っ白なワンピースと、去年母がプレゼントした つばひろぼうし。


 そして、僅かに膨らむ胸の中央には月光の様な銀色に輝くクロスが落ち着いていた。


 と、そのクロスが去年、母と共に俺が贈った物なのだと今更に成って気がつく。


 「ん……じゃあ、行くか?」


 と、俺が心中の思いを隠して公園だを歩こうとオリーブに背を向けた時。


 「え……?」


 なぜだか、シャツを引っ張られた。


 それは、あまりに弱い力で、ふんわりと何が触れている、程度の感じで……


 また一歩あるいてやれば簡単に離れてしまう様な脆さだったが……


 どうしても、俺にそれはできなかった。

 

 俺はそんな事を訝しく思って、少しドキドキしながらもオリーブの方を振り向いた。


 ほんの少しだけ俺よりも背の低いオリーブ……


 さらに、やっぱり、ほんの少しだけ俯けられた顔は、帽子の

つばに隠れて見えなかった……


 が、白い帽子からはみ出された耳にほんのりと朱がさしているのはどうしようもなく目立っていた。


 「……手……」


 たった一言、オリーブはつぶやいた。


 その一言だけが俺への感情表現なんだって事に気がつくのにたっぷり1分を要した。


 気付けば、先ほどの老人が微笑ましげにコチラを覗いている。


 「ッ―― !」


 俺は、その瞬間オリーブの言いたいことが全て理解できて、そして、何故オリーブが顔を伏せているかもわかった。


 「く!」


 俺は、火照った手でオリーブの……ほっそりとした白い腕をつかんで、すぐさま走った。


 ルカ……



 

 「へぇ……嬢ちゃん、なかなか可愛い顔してんじゃん?」


 ヤメろ……


 「ホントじゃん、ガキとはおもえねぇなぁ……」


 男の汚れた腕がオリーブのその細い首を撫で回す。



 触るな……そいつに、触るなよ……


 「売る前に味見でもしとくかぁ?」


 男の下劣な唇がオリーブにふれかける……そんな瞬間だった!


 「ッ――  そいつに……!触れるなぁー!」


 俺は、倒れていた身体を無理やり起こして男たちに突進する!


 どうしても、こいつらの事を俺は許せそうになかった。


 なぜならこの2人の男たち、以前に俺の屋敷に侵入してグレイプを誘拐しようとした連中なんだ!


 「ちくしょう、ガキが!」


 1人の男が蹴りを俺の身体に叩き込もうとした……その瞬間!


 「ニア!  直ぐに逃げろ!」


 父があらわれて俺たちを救ってくれた!


 く……!


 なにを迷うことなんか有るもんか!

 父の強さは運命すらも捻じ曲げるほどだ。


 そこらのゴロツキ程度に心配する様じゃ父に対して失礼だろう。


 「ありがとう!父さん(・・・)!」


 マルコ……





 「ねぇ……ニア……」


 さっきの裏通りから暫く行ったところ、日も少し傾いてオレンジ色に光る頃、不意にオリーブが言った。


 「さっきみたいなこと……もう、やめなさいよ」


 どこか、そっぽを向いた様な、すねた様な顔で言い放つオリーブに俺はほんの少しの反感を覚えた。


 「どうしてだよ?」


 しかし、おれの言葉に対してもオリーブの返答はない。


 だから、もう一度俺が聞こうと口を開こうとしたその瞬間。


 「だって……」


 やはり、そっぽを向いたまま、その少しつり上がった目に涙を浮かべて……



 「け…怪我でもされたら、アタシが困るじゃない!」


 オレンジ色の世界にオリーブの大音響が響く。


 俺も思わず耳をふさいでしまった。


 と、そこに……



 「まったく……デカイ声だな、バカ女が……」


 この国の、トップに君臨する物の1人……


 オレンジ色の光があまりにもよく似合う……


 確かに、今思えば彼との出会いも朝焼けとは言え、こんな蜂蜜色の光の中だった。


 「り…リーフ⁈  なんで此処に?」


 そう、そこにはこの国の第一王子、リーフがたっていた。


 周りの民衆もどよめいている。


 「オレが此処に居る理由か?


 ……秘密だ……」


 ほんの少しの苦笑いの後につけたされた様に理由が述べられる。


 って、そんなの理由に成ってねーよ!


 「ッハ!  ―― !  い、行こう!  ニア!」


 「っえ?  おいおい、ちょっと⁈  」


 突然、オリーブに手を取られて走り出す俺たち。


 最後に見えたリーフの顔は、まるで翼のように伸びる西日のせいで表情こそわからなかったが……


 なぜだか、寂しげだった。


 マタイ……




 日はすっかり落ちて今や、銀色の皿の様な月が天上を飾っていた。


 「おい……なんなんだよ、いきなり中央区まで戻って決て…」


 そう、ここは最初に俺とオリーブが待ち合わせしていた公園だった。


 あの時の老人ももう姿はない。


 お互い、息もあがって幼く、代謝の良い身体はかなり汗ばんでいた。


 すでに夜だというのにこれでは風を引いてしまうだろう。


 「…………」


 俺の言葉にオリーブは沈黙で返す。


 うーん……  これには俺もすっかり弱ってしまった。


 暫く返答を待って見たがやはり、オリーブはうつむいたまま顔を上げない。


 彼女の首筋から鎖骨にかけて、一筋の汗が流れる、銀の光を浴びたそれは、彼女を酷く官能的に見せつけていた。


 そんな彼女から目を背けつつ、俺は。


 「ッ―― ……か、帰ろうか?  送ってくし、またさっき見たいな奴らがでたら危なっ……⁈」


 俺が、帰ろうか?  と言う提案をしていると……不意に……


 オリーブに抱きしめられた。


 !?


 オリーブの帽子は俺の胸につばをぶつけ、地面に着地する。


 銀色の光が、噴水から吹き出る水に反射して、キラキラと舞う。


 「え……?な……?」


 抱きしめてきたオリーブから柔らかいな肉感が伝わってくる。


 「ン……」


 目を白黒とさせている俺に構うことなくオリーブは腕に力を込める。


 俺のグレイプよりも細い腰は完全にホールドされてしまった。


 緊張したまま俺はオリーブの方をみる。


 ドクリ、ドクリ……と、心臓の鼓動が煩い。いや、もしかしたらこれはオリーブの鼓動なのかもしれない。


 「もう、帰る……なんて、言わせない……」


 その瞬間、くぐもった声が俺の胸の下から聞こえてきた。


 そして、突然、オリーブはその顔を上げた。


 唐突な形でぶつかる俺とオリーブの瞳。


 まっすぐと俺の翡翠の目を射抜いてくるオリーブの蜂蜜色よ瞳……


 暗い夜の影、それと対照的に月の光がオリーブの横顔を照らす。


 ストン、とその胸に落ち着く銀色のクロスが輝きを増している様に思える。


 正直な感想を言おう。


 彼女は、あまりにも美しかった。


 透き通る様な象牙色の肌、潤んだまま、しかし確かな決意をもって俺を睨む瞳……


 そんな彼女を前に、俺は何にも言えないでいた。


 「あの時の返事……聞かせて?」


 完全に形成は逆転していた。こんどは俺が言葉に窮する番だった。


 「あ……な……」


 なんの意味も持たない言葉が口の橋から漏れるばかりで言い訳すら出てこない。


 なおもオリーブは言葉を続ける。


 「……もしかして……嫌い、なの?」


 今にも泣きそうな顔をして俺の事を見上げる瞳。すっと通って鼻が愛らしい。


 ッ―― !


 クッ……  なにか、何か言わないと。


 そんなことを思った俺の行動はあまりにも単純だった。


 至極明快な真実。ただそれだけを表すためだけの行動だった。


 「え…  ン……⁈」


 俺は、その時に目を閉じていたからオリーブがどんな顔をしていたかはわからない……


 もしかしたら目を見開いていたかもしれないし、逆に、おれと同じで閉じていたかもしれない。


 

 だけれど、確かに、唇の下に、暖かい熱を感じた。


 ただ、くちびるを重ねるだけの単純のキス(Kiss)……それだけなのに、あまりにも気持ちがよかった。


 身体の奥の方、芯から心まで温められて行く様で……


 あぁ……時よ、止まれ!




 福音(evangelium)は訪れた。



 

 

 このラストは元々はもっと別な形(そもそもオリーブが告らない)を予定していました。


 が、構想が膨らむ内に(リベリヲンからは完全にレールがはずれました)この様な形へと成って行きました。


 かなりパッとしない様なラストだとは思いますがご了承ください。


 あと、割とどうでも良い事ですが作中登場する国は全部教室に有る物から名前をとっています。


 イスリア→椅子

 フツクエ→机

 ケトケイ→時計

 カテン →カーテン


 です、あとまたまたどうでも良い話ですがリーフくんはニアくんと対となる存在として描きました。


 そのため、ニアくんが月の光だとかと描写する事の反面、リーフくんは夕焼けだったり、朝焼けだったりですね。


 それと、ローレルくんは元々ゲームの世界にやってきた的な設定でした。


 


 では、これまでお読みいただき、ありがとうございました!



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