「68話」 じき!
俺の目の前で涙を流しているグレイプ。
ぐぅ~っ!! 俺の弟を泣かした奴め! 出てこい!
つむじから足の先まで毛をむしり取ってやる!
冷然なる“無”がたとえ目の前にあろうと、グレイプがいれば怖いものなんか俺にはない。
「兄ちゃん……」
俺を抱きしめるグレイプから弱々しい声が出された。
もっと自信をもってくれていいんだぜ! フッ……かっこ良い事いったな、俺!
「ここって、なんなんだ?」
グレイプからの質問は至極簡単な……しかし、重要なものだった。
「よっくぞ!しつもんしてくれた!この空間は……」
なんなんだろ?
☆
よし、答えはでた!
なに?早すぎるだと?
はっはっは! グレイプを前にした俺の前には不可能など無いと同義なのだよ!
「此処は、思念の世界……まさに、神の楽園だ」
しかし、俺の言葉がわからなかったのかこくん、と首をかしげるグレイプ。
あぁん!もう!一々可愛いな!
「……つまり、夢の様な場所、ってことさ……」
俺は内心悶えていることをグレイプに悟られない様に務めて冷静に答えた。
フッ……グレイプよ、いくらお兄ちゃんがかっこ良いからって……惚れちゃダメだぜ?
「ゆ、め……?」
それでもわからないのかやはり首をかしげるグレイプ。
しかし、“わからない”と言うには少し語弊が在るだろうか?
疑問ができた。という顔つきかな? これは。
「じゃあ、さ……今、此処にいる兄ちゃんも……夢、なのか?」
な、なんだってーー!
その発想はなかったな。
ふ、ふふふ……
「グレイプの兄貴は俺一人でじゅうぶん、だ!」
うむ、これぞ俺が夢では無く本物である証だな。
「よかった……」
そう言って胸を撫で下ろすグレイプ。
何か、良いことでもあったのか?
と、俺がバカな事を考えていた瞬間だった!
「兄ちゃん! 天使をやめてくれ!」
……は?
天使を……やめろ?
「な…んで?」
いや、そもそも何故グレイプが俺が天使ということを知っているんだ?
え? 俺ってグレイプの前で天使モードになったこと在ったけ?
俺の中でぐるぐると疑問が沸き起こる。
な、何がおこったんだ?
「兄ちゃん……今、どうなってるかわかるか?」
……ーーッ!
瞬間、思い出される恐ろしい獣の姿。
そして、そんな獣に取り込まれた俺。
あ、いや……別に忘れてたわけじゃないよ? ただ、グレイプとの再会が余りに嬉し……
って……んン⁈
「あれ? グレイプこそ、なんでココにインの?」
俺の疑問は最もだろう。
俺が此処いるのはすなわち、俺がリベリヲンに取り込まれたからなのだ。
なのに、此処グレイプがいるというのは……?
俺の質問にグレイプも困った様に笑みを浮かべた。
この表情は俺もよく知っている。
学院で一番よく見る表情だからな。
すなわち、答えがわからない時の生徒たちの表情だ!
かくいう俺もよく使っているからな。
いやぁ、流石にオリーブさんとカミーリャさん、本命はどっち⁈ と聞かれた時にはこの表情を浮かべる他なかった。
ま、要するに……
「答えはわからない、と……」
俺の打ち出した結論に申し訳なさそうに謝るグレイプ。
お前が悪い事なんかなに一つ無いんだよ!




