「61話」神格化!
無駄……だったのか……?
俺は、目の前の炎と破壊を見てそんな事を思った。
俺は、膝から崩れ落ちるが、その先には白い色の灰燼が詰まっている。
「ニア…………」
背中の方から誰かの声が聞こえる。
いや、誰かなんて明確だ。
本来、この滅びゆく国を継承するハスだった少年だ。
「終わりだよ……何もかもな……」
この言葉を絞り出すのは、きっと血を絞り出される事よりも辛い事だった。
喉が締め付けられ、悔しさで、悲しさで、不甲斐無さで涙が出てくる。
「もう……! 何もかもだ! 国は滅びる! このままリベリヲンは暴れる! そして……そして! 」
グレイプは……シぬ……
「あ…はは……無様だよな……バカだよな、俺って……」
俺は、顔をあげる事も出来ず、ぽつり、ぽつりと水跡をつける灰燼の上を眺めた。
ぼんやりとしか見えない視界の端には、物を言わないリーフのつま先が見える。
「やる事なす事、ぜんっぶ裏目に出て! 助けたいのにその原因が……」
と、俺が爆発した感情のまま露吐を続けていたら、突然、肩を掴まれ、横薙ぎに倒された。
俺が倒された拍子にブアリと舞い上がるハイぼこり。
「な…なにを…………」
しかし、俺はその先の言葉を紡ぐ事は出来なかった。
なんで…………
「あぁ……本当に、オマエって大バカ野郎だな……」
なんで、お前が……
「こんな風に、黙って見てるだけだなんてよ! 」
お前が、泣いてるんだ……?
「なんで助けにイカねぇんだよ! 今だって、グレイプは生きてるかもしれねぇんだろ!」
胸ぐらを掴まれ、呆然としたままリーフの顔が目の前に近づく。
ユックリと昇る朝日……朝焼けの時間の黄金の太陽がリーフの顔を照らした。
涙で、鼻水で、汗で、そして灰で……
ぐしょぐしょになったままに俺の事を掴み、鬼神のような顔をしたまま怒鳴った。
すぐ近くでは獣……リベリヲンとローレルが牙と剣を交わしている。
「たかだかカテン国が攻めてこようが! リリーさんの記憶に秘密があろうが! 運命だろうが! なんでそこで諦めんだよ!! 」
リベリヲン……
反逆者と破壊王の融合体。
真なる神……
the beast……偽りの救世主……
仮初めの祭壇……教義
「無駄なんだ……俺は、結局神ではなくて悪魔を造ったにすぎないんだ……」
魂の無い存在が魂を創造る……
生命の理に背いた罪深き天使……
ーー衝撃。
ーー明暗が弾ける視界。
ーーそして、軽い浮遊感覚。
俺は、殴られて、飛んでいた。
「な…なにを…………」
「何をじゃねぇ!! オレは……オレはテメェみたいには諦めれねぇよ……」
俺は、四つん這いの姿のまま鳴く様に叫ぶリーフを見上げた。
彼の背からは日の光が昇り、黄金の光は彼を、より堂々たる王を作り上げていた。
神は……何を、企んでいる。
瞬間、俺の脳裏には忌々しい老人の顔が浮かんだ。
あいつは……天使じゃ、なかった?
ローレルは肩を負傷した様だ。
あいつは、神だった……けれども、運命に逆らおうとしていたのか……?
俺の前には、完成された未熟な王が幼い貫禄と、朝日を背に見下ろしていた。
あいつは、翁神……神だった、運命の破壊者を気取るつもりか……?
そうか……そうかよ……
「まだ、可能性はあるのか?」
ローレルは吼える、理性的な獣……剣は、獣の皮膚をえぐる。
「当たり前だろ……」
ユックリと俺に手を差し出すのはリーフ。
顔は、逆光でよく見えないがきっと、笑っている。
怖い、な……
でも、それ以上に……!
俺は、リーフの手をとった、小さいはずの其の手は思いのほか大きくて、頼りになって……
「ありがとう……」
リーフは、太陽を背にしていた。
その光は、あたかもリーフの背から生える黄金の翼のようで……
ーーー
【天界の扉:Lv.7……『神格化』】




