「56話」 親子対談!
俺は、物静かな夜に感謝していた。
目の前にでおれの可愛いことを強く睨む少年はどうやら全くそわなことは思っていない様だが……
と、その少年が口開く。
彼の猛禽類を思わす様な鋭い目つきには、それ相応の確かな覚悟が秘められていた。
俺は、そんな彼の強い意思に広角をあげることで応える。
「……オレを、どうするつもりなんだよ……?」
それは、あまりに素朴な質問だった。
だれだって、己がことを利用しようという人間が洗われたならば思うことだろう。
素朴すぎて、俺は笑ってしまった。
「何がおかしい!」
瞬間、俺の鼓膜をネブカドネザルのはげしい怒りの声が貫く。
月の登る銀の夜には似つかわしくない程感情的な声だ。
そう……“感情”……ね。
「お前を……“ラストピース”なんだ……」
それだけをいえば十分だろうと、俺はただそれだけを告げた。
ネブカドネザルは面白いくらいに顔をしかめる。
どうやら俺の言葉の意味がわからなかったのだろう。
月に照らされた白色のしかめっ面はあまりにも滑稽に浮いている。
「……オレがラストピース……?」
口の中でモゴモゴとなにを悩んでいるのか言っているネブカドネザル。
ふぅん……
どうやらまずは、俺の計画のことから話さなくてはいけないみたいだな。
「……ネブカドネザル……」
俺が、ネブカドネザルの名前を読んなさだ瞬間、鞭に弾かれる様にして顔を上げる彼。
やはり、そんなら一挙一挙が俺の心を愉快な気分にさせる。
……こんなふうに、まるで俺の計画の全てはを知っている様にも見えて、その実こいつは何も知りはしていない。
そう、こいつは、俺の計画について何一つとして知りはしないのだ。
「お前、俺の計画について、知りたくはないか?」
ごくり、とつばをのんだ音が聞こえた。
へぇ、そんなに聞きたいのか?
俺は、依然としてこちらをにらめつける……
それでいて期待する様な目で俺のことを見つめてくるそな目がなんだかおかしい。
……そう、まるで、村にいた時のグレイプの目……
鍛錬の時に俺に挑戦的な……「勝つ!」という希望をもった目とおなじだった。
そんな、俺の大好きな、絶対失いたくない瞳が此処にあった。
「……俺の計画……それは、運命付けられたグレイプの死の排除だ」
月の光……雅やかで詩的なそれに包まれた、夜がゆっくり流れる空間に俺の大仰な言葉がながれた。
ゆっくりと、愛おしさを感じる程の瞬間だ。
ネブカドネザルの顔が驚きにゆがむ。
つり上がった形の良い眉や目も、今は驚愕の一色だ。
なにをそんなに驚く様なことがある物か。
「そして、運命を捻じ曲げる事は俺自身には不可能だ」
所詮、俺は運命の修正力。
結局、運命をの流れに逆らう事など不可能に過ぎない。
いや、そもそも運命の流れを捻じ曲げる事ができる存在など早々はいない。
そして、そんなら風に運命をを捻じ曲げることの許される存在を、こう呼ぶ。
「“申し子”……とな」
『“運命”』が何かわかっていないのだろうネブカドネザルは目を白黒とさせている。
いや、この流れで自分の事がラストピースと呼ばれる意味を図り兼ねているのかもしれない。
俺は、やはりそんな瞬間、瞬間を愛おしく感じていた。
どうしてもこの、ネブカドネザルはグレイプと被るところがあるのだ。
「おまえは、自分が生まれた場所を覚えているか?」
俺は今度はそんな風に困惑するネブカドネザルに対して質問だったを浴びせかけた。
まだその時はただ一介のギガントピテクスに過ぎなかったこいつは覚えているだろうか?
かの詩人の征きついた地獄の構造になぞらえたあの空間の事を。
「……教義の事か?」
どうやら覚えていたらしかった。
確かに、カミーリャによって作られた事を自覚するならば
当然の事だろう。
ならば説明が速い。
しかし、けして短くはならないだろう。
俺は、今だ立ち上がったままのネブカドネザルに座る様施し会話を続ける。
「俺は、“申し子”を人工的に作ろうと考えている」
俺は、しずかにそう、ありのままに告げた。
窓から入って来る夜風がおれの髪の毛を撫でる。
目の前には硬直した様に固まるネブカドネザル。
まあ、無理もないだろう。運命を捻じ曲げる事存在を、俺は水から作ろうというのだからな。
「しかし、たましいがなければ運命は変えられ無い」
俺は、第9教義:コキュートスにて未だに目覚めぬホムンクルスのことをおもった。
「だから、その為におまえが必要なんだよ……魂も感情もあるおまえがな……」
俺は、ゆっくりとネブカドネザルを指差した。
しかし、頭に浮かんだのはまた、別の少年……
勝利の花言葉をもつ葉をその名にかんする少年だった。
彼もまた“申し子”だからな……
そして、再びネブカドネザルが口をひらいた。
俺は、その時までは余裕だった。
しかし……
「じゃあ、母さんやオリーブさんの事はどうすんだ……」
……は?




