「42話」 かけっこ!
作者「いろいろ進むよ!」
ニア「グレイプと父だな」
くそ……!
なんで、もっと速く気がつかなかったんだ!
俺は、後悔に襲われながら走った。
目指すところは、東区……リリーさんの道場のある場所だ。
今は、パンたちもそこにすんでいるが、この際関係ない。
俺の、今の目的は父だ。
この時間……お昼ならば、父は家にはおらず、みんなに剣を教えている事だろう。
今、頼れる人は父しかいない……!
俺は、息が切れる事も構わず走り続ける。
く……!
普段、運動しないツケがここまでまわってきたか!
でも……!
俺が死んでも、問題ない……
だけど! グレイプは……!
ーーー
見えてきた!
リリーさんの道場だ!
既に、この時の俺は汗だくだくで、脇腹がじんじんとした痛みに襲われていた。
それでも、足を緩めるわけには行かない。
「父……!」
俺は、道場で剣を振るう父の姿を見つけると、真っ直ぐに飛び込んだ……!
「父! グレイプを、助けて!」
もう、バラバラで壊れてしまいそうな心と、体。
そっと、俺のそんな薄っぺらい背中に、父の、大きな手がかぶさる。
疲れきった俺の身体は、たったそれだけの温もりで 睡魔にいざなわれる。
でも……ここで、眠ったら、グレイプが……
「グレイプを……助けて、あげて……」
ずんずんと重くなる瞼を必死で開けて、最後にみえたのは、父の慈しみに溢れた、悲しげな笑顔だった。
☆
落ち葉を踏む音、躍動する世界、そして、自身の揺れる視界。
心臓の鼓動が伝わってきて、始めてここが父の背中なんだと気づく。
父は、どうやら俺が起きた事に気がついた様だ。
「やあ、起きたかい、ニア」
顔をこちらに向けずに、ただ走り続ける父。
めぐるめくる勢いで変わっていく風景に、そんなものを感じさせない程父はいつも通りだった。
そんな、父の背中はあまりにあたたかい。
「ここは……?」
その温もりに全てを預け、
俺はただ、尋ねる。
「ニアの案内してくれた、学院の廊下だよ」
確かに、よくみればこの景色は俺が普段よくみたるものだった。
過ぎ去る景色は記憶に新しい。
そ…そうだ!
「中庭は……」
「わかってる……ニアは、少し休んだ方が良い」
そう言って、優しい声をかける父。
ダメだよ、俺には休む権利なんか無いんだ……
俺は、今にも堕ちてしまいそうな眼を必死に開けて、かすれた喉を引き絞る。
おかしい、なんでこんなに眠いんだ……?
確かに、たくさん走ったけど、これは……
まさか……空気中の魔力が、ギガントピテクスどもに奪われているから……?
俺の身体に異常が起きてるのか?
それなら父も辛い筈なのに……どう…して……?
☆☆☆
「寝ちゃった、みたいだね……」
ボクは、背中から聞こえる小さな寝息を聞いて、なんとなくつぶやいた。
まあ、休め、と言ったのはボクだからね……
……今の、この空間は幼いニアには負担が大きいだろう。
ボクのところへきた時はさらにら、こんな中を走ってきたんだ。
空気中の魔力が少ないところでの全力の運動は、低酸素運動に近いものがある。
さらに、ニアの話からすれば、グレイプはそんな中で闘っていると言う。
……速く、行かないと!
次回は撃退と救出と真実と謎!
by 来異夢♪




