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「37話」 the beast!

サブタイトルの ザ・ビーストは、獣である以前に悪魔(アンチ・キリスト)を意味するそうです。

 黙示録の獣っすかね?

 「明日こそ……渡すもん……」


 私は、大好きな(ヒト)の為に作ったお弁当を、胸に抱えて、泣いた。


 ☆


 「はい、じゃあ此処の魔力演算式わかる人~」


 俺は、なんかもはや投げやりだった。


 よう、現在 学院の担当クラスにて、教鞭を執るニアだ。


 うん、このクラスの子達優秀すぎ。

 多分、次のテストは平均点かなり上がるだろうなー。


 「…………」


 無言で1人の手が上がった。

ふふふ、流石にこの問題難しいか!


 「はい、ザクロくん!」


 俺は、どうやらこの難しい問題を解いた、優秀な生徒を指名した。


 この子……ザクロくんは、あの時俺を案内してくれた少年だ。

 俺と同じ、中流階級の出の様だが、さっきも言ったとおりかなり優秀だ。

 と、言ってもそれは理数教科に限るだ。


 「……はい」


 どうにもこの子、なんというか…… 文だとかでのイメージが出来ないらしい。


 うーん……だから、“教会学”の成績もかんばしくないのだろうかな?


 いっつも ムスー と、俺の話を聞いてるイメージなんだがな……


 この子は、15歳とは思えないほどの静けさを持っている。

 俺がこんくらいの時はもっとバカだったはずだ。


 世の中の不幸なんか関係なく、将来も過去もなにも無かった。


 でも、この子は……どうにも、やる気れない、過去への怨念の様を感じる。


 と、いっても 所詮 俺は一介の講師、

この子になにができるか、と言われても首を傾げるだけだ。


 ふぅ……無力な自分に嫌気がさす。


 ☆


 誰もいなくなった教室、

昼間の喧騒はなく、ガランとした、オレンジ色の虚無感が満たしていた。


 「……グレイプに残された時間は残り僅か……」


 俺は、そんな教室で1人、

10枚の翼を広げていた。


 銀の輝きは、茜色の光を受け、赤く、赤く……輝いている。


 「あと1年…… 後、1年で全てが終わる…… いや、始まるのか……」


 寂寥とした教室に、俺の声はあまりにむなし響いた。


 乾いた西陽は、俺の顔を照らす。


 「『黙示の時』……それを止めれる物など、誰もいない」


 そんな、太陽の光は、隠そうとしている、俺の涙を、どうしようもなく、暴いていた。


 「滑稽だ……何より大切な弟を、俺が兄故に殺す事になる……」


 教室の窓の外からは、学院の寮が見える、

 あの中の一部屋に、俺の弟はいるのだろう。


 「『“運命”』か…… どうしようもなく憎いはずの“申し子”を、こんな時ばかり求めたがる」


 時刻は既に最終時間を廻ったころだろう、

 今頃 校舎の中に居る生徒は、補習や、忘れ物をした者くらいだろう。


 「あぁ……“神”が疎ましい!

例え、俺には“申し子”の様な力

は無くとも、“修正力”でさえ、無

ければ……!」


 廊下で足音がする。

見回りの教師だろうか、 もしかしたら、最近、この廊下から見る夕焼けが綺麗だからと。

 そういう女子生徒かもしれな。


 「『教義(ドグマ)』も、既に第9階層まで完成した。 何もかも、“神々”のシナリオの通りか」


 足音が近寄って来た。

もしかしたら、この教室の生徒かもしれなかった。


 頭上に煌めく2重の光の輪が、危機をしらせる様にまたたく。


 「いや……良いか……

 全ては、神の御心のままに……」


 俺は、ユックリと、翼と、頭上の輪を消した。


 教室の扉と、俺がヒトの(カタチ)になったのは、ほぼ、同時だった。


 「ーーニア……話がある」


 そこに現れたのは、

リーフだった。


 ~~~


 「……久しぶりだな、リーフ……」


 俺は、抑揚の無い声で答えた、

とてもじゃ無いが、感情的にはなれない。


 俺の、静かな声は、森閑とした教室にジワリと沈んだ。


 埃が、俺とリーフの間に舞う、

それは、僅かはずなのに、酷く遠い距離だった。


 「お前に……聞きたい事がある……!」


 俺の背後から照らす、その夕陽と同じ、橙色の瞳が、強い意思を持って、俺を、睨んだ。


 「なんだ……?」


 俺は、その強い眼光に、恐怖した。

 たじろいだ、急に、足元が崩れる様な、そんな寂寥感に支配された。


 何処からか、キンモクセイの香りがした気がした。


 「オレと、お前が初めて会ったのって……何時だったか、覚えているか?」


 部屋の温度が下がった気がした、

 どうし様も無く、寒かった。

怖い。


 質問の意味がわからない……


 「どう言う、事だ……?」


 今度の俺の声は、最初の抑揚の無い、死んだ様な声では無く、

 よく張った、朱の部屋に隅々まで響く、生きた声だった。


 「ーーオレと、お前が 初めて会ったのは……3歳の時じゃないか……?」


 心臓が跳ね上がった。

恐ろしさに、唇が乾く。


 リーフの、硬質な金の髪の毛が、あまりに寒々しく映る。

 俺の心と反比例する様に、リーフの瞳は、静かに、しかし激しく耀いていた。


 リーフの、握り締められた手が余りにリアルだった。

 

 「ーー大聖堂では……」


 俺は、無駄と悟りつつも、答えた。

 怖い……次に来る言葉が、余りに恐ろしい。


 「お前は……お前は、本当に、ヒトなのか?」


 ーーー!!!!!

怖い……怖い……怖い……!!!

バレる事が、俺が、ヒトではない、異端の存在だと、知れる事が、余りに怖い。


 「お前は、もしかして……」


 人間(リーフ)が、一歩天使(おれ)に近づいた。


 ーーッ……!


 「ク……ッくるな!!」


 俺は叫んだ、

全身の、抜け切った力を総動員して、力の限り、叫んだ。


 リーフは、驚いた様な顔に成り、 一歩踏み出した状態で固まった。


 【《天界(ヘヴンズ)(ドア):Lv.2》『“ベウラの宴”』】か……


 「な……! か、身体が!」


 俺の目の前、俺の背から伸びる影の集まる場所、教室の中心にて、

 リーフの身体は、引きつった様にしか動かない。


 「お前が……やったのか?」


 リーフが、半ば確信した様に聞いて来る、

 陽は、既に沈みかけている。


 「あぁ……」


 今度は、俺が一歩、リーフに近寄った。

 リーフは何も言わず、ただ、俺の事を、呆然と見つめていた。


 と、思ったら。


 「そうか……」


 なぜか、柔らかげに微笑んだ。


 なぜ……! ?


 「なんで、笑っていられる……?」


 俺は、翼を広げた。

次に、行う事のためだ。


 「別に……? 特に理由はねーな」


 リーフは、尚も変わらず 微笑みを浮かべていた。

 なんで笑っていられるんだ……


 俺は、既にリーフの正面にまで来ていた。

 手を伸ばせば、リーフのその固めの髪に触れる事もできる。


 「これから、俺が、何をするか……わかるか?」


 リーフは、何真言わず、首を横に降った。

 首は……動けるのか。


 「こう……する……」


 俺は、そのリーフの顔に、手を添えた。

 柔らかい頬に、その指が僅かに沈む。


 今だ、幼さを残した11歳の、少年の顎の筋が印象的だった。


 思った以上に逞しい首に、この王子の成長を感る。


 俺とリーフの、その顔の距離がユックリと縮む。

 既に、リーフの息遣いを手に取る様に感じる。


 首筋に添えた指から、そのリーフの脈が伝わる。

 彼の頬は紅潮している様だった。


 「ん…はぁ……」


 俺は、どうしようもない、その『“運命”』に抗う事は許されなかった。


 俺は、背に生やした翼で、俺たち2人を覆う様にした。


 「()めて 会った時も、こんな風に、お互い 密着していたな」


 ユックリと、全身にリーフの体温が行き渡る。

 春も終わりの頃であるが、幼い身体に張り付く汗は、既にどちらの物かわからない。


 俺は、片手を、リーフの腰に回した、

 もう片方は依然として顔に添えられたままだ。


 俺は、自分よりも背の高い王子の為に背伸びをした、

 グッ…と、自分とリーフの唇の距離が近くなる、

 鼻の頭は既に触れ合っている。


 舌さえ伸ばせば、そのリーフの乾いた唇を湿らせるのも、容易に出来るだろう。


 リーフの眼には、不安と、そして期待が同じ色を持って、耀いている。


 俺も、頬を濡らす 涙を拭わない。

 これが、リーフとの、永遠の別れになるから。


     『“運命”』は、余りに残酷だ。


 「ーー……サヨウナラ……リーフ……」


 翼が、音も無く、完全に俺たちを覆った。


 静かな、純銀色の翼は、まるで2人を覆う繭の様だった。


 瞼を閉じた俺には確かな事はわから無いが、陽も、完全に沈んだのだろうか、

 閉じた眼を刺激する光は無い。


 「ぁ……あが……!」


 ふと、暗闇の、ほんの数センチ向こうで、苦悶の声が上がった。


 これは断末魔の為の喘ぎ声……そして、新しい記憶の産声。

 

 俺は、薄目を開ける、

 苦しみの表情を浮かべながら、それでもソレを離そうとしないリーフは、やはり貪欲だ。

 

 「っは……くぁ……ぁ……」


 ついに、声がやんだ。


 俺は、リーフにかけた、全ての拘束を解除した。


 俺は、唇を拳で拭う。


 翼を広げ、眼を開ければやはり陽は完全沈んでいる。


 眼を下に向ければ、 陸に上げられた魚の様に、白目を向き、身体を痙攣させているリーフがいた。


 「“まだ……抗うのか……”」


 ーー【《天界(ヘヴンズ)(ドア):Lv.3》『“天国の鍵”』】


 これで……リーフの記憶は……死んだ。


 

 

 


 

 

 

どうでしたか? 今回は前半と後半でかなり温度差があったと思いますが……

 因みに、冒頭の女の子はカミーリャちゃんです(笑)  最近、すっかりヒロインたちの事を忘れていましたからね……

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