「32話」 “奥の手”!
作者「今回は、ついに……奥の手の正体が!」
ニア「なんで、父の正体よりも先にでてくんだよ?」
グレイプ達の入学式から3日、
俺は、質問攻めにあっていた。
「兄ちゃん! 学院の講師ってどう言うことだよ! 」
「そ…そうですよ! キッチリ説明してください!」
目の前で騒ぐのは、グレイプとカミーリャちゃんの2人。
オリーブも来ていそうなものだが、どうやら用事があるようで
はぁ……
こう、説明を求められることは覚悟していたが、いざやられると面倒だ。
外では、雨がざあざか降っている。
それが余計、俺の気持ちを沈めているのかもしれない。
「説明も何もな……」
さて、何と言おうものか、
バカ正直に「グレイプを追って来ました♪」とも、流石に言えない。
俺は、返事を待っている2人の目を見て、再度、ため息をついた。
うーん、グレイプは嘘をつくのは下手だが、見破るのが得意な子だからな。
「別に……」
自分でも、「別に」はないわー、
とかなるわ。
案の定、グレイプは目を怒らせ言った。
「別にじゃねーだろ!」
グイッと、胸ぐらを掴まれる。
不意に、正面に近づく、グレイプの碧い瞳。
その眼には、何故だか、悔しさだとか、不甲斐無さだとかが、同居していた。
「オレだって……兄ちゃんの事、知っていたい……」
途端、胸ぐらにかけられていた力が緩む。
そっか…… 俺、グレイプに心配……かけてたんだな……
だけれど、
俺には、話せる訳が無かった。
だって……
グレイプのライバルが誰かを調べる為だけに講師になったとはとても言えんだろう!
☆
「で……エンジェル、その宿敵とやらの素性はわかったのか?」
俺に、紅茶をついで、質問をかけてくるのは院長だ。
そして、ここはもちろん院長室、
講師室でも良かったんだが、院長が念には念を、との事でここにいる。
え? 何故、ここに居るかって?
もちろん、紅茶を飲みに来ただけではない、それは理由の三割くらいだ。
後の七割は……
「まぁな、所で……コレが、今月の分だ」
俺は、院長に少し怪しげな巾着袋を渡した。
中身は何か?
俺が、『地下聖堂』の錬金課で創り出した、人工的な奇跡。
“奥の手”であり魔力を含んだ物質。
いや、固体化した魔力そのものだろう。
俺は、これまでソレを“奥の手”として、扱って来た。
魔力理論は殆どこいつがなければ生み出し得なかった物だ。
「あぁ、ありがたくいただいて行くよ。 “ホムンクルス”の方はどうなっている?」
“ホムンクルス”
勿論、コレも錬金術で創り出そうと考えている物だ。
だが、勿論“奇跡”など、そう簡単には生み出せない。
まぁ、難航しているとしか言えないだろう。
だが、解決の糸口が無い訳ではない。
かつて、旧約聖書において最初に人間、アダムは土塊から造られたという。
この事から、アダムとは、世界最初の『胎児』と言える。
神の創り出したソレと、ヒトの作りだしたソレと……
違いはただ一つ。
“魂”の有無だ。
神が、アダムを創り出した時、
その鼻の穴より、命の息吹を吹き入れたという。
その為、ただ、ヒトが作ただけの物ではダメだ。
所詮、神によって造られたヒトに、ゴーレムに魂を込める事はできない。
しかし、俺は“ヒト”ではない。
ーー“ANGEL”だ。
流石に、魂を込める事はできないが、
ヒトが作るよりも、より神に近い存在に成る事は違いない。
「今は、試作種として、XY細胞を培養している。 勿論、有魔力でな……」
今、その試作種は『地下聖堂』に安置してある。
と、言っても最終的には量産するつもりだ。
流石に、あの狭い空間で、パンを欺くのも不可能だろう。
一体に集中して行うならば、
《天界の扉:Lv.3》『“天国の鍵”』や、
《天界の扉:Lv.2》『“ベウラの宴”』を使う事で、自在な人格成形が行える。
そう……!
グレイプに、忠誠を誓う、絶対の魔術師が完成する!
☆
しかし、そんな魔力研究が、俺の『“運命”』を、大きなうねりの禍中へと、促して行った。
それが、世界の在るべき姿なのならば、それも、全て。
作者「ニアくんが講師として働くのは、次回から!」
ニア「副担任だったか?」
作者「そ、担任クラスは5年ーフェアリー組だから」




