「10話」 夜の戸締りには用心!
作者「やっとニアくん六歳!これから物語が動く!?」
ニア「まぁ、メッチャ導入部分だけどな」
夜……人工的な光などはほとんどない“街”は夜になれば月明かりが唯一の光源だ。
そんな、銀に満たされた“街”に同じ色の六枚の翼を持った天使が居た……うん、俺だね。
俺は、翼の力で宙に浮きつつ、眼下に広がる“街”を見下ろした。
ニア・アウグスティヌス=アントニウス、六歳。
特徴、二重の光輪と、三対の翼……あと、あっさりした茶髪に控えめな翠眼。
しかし、そんな翠眼は突然濃い紫色へと変貌し、今や妖しく輝いて居る。
『“降臨”』……さらに『“天使の眼”』を発動したのだ。
瞬間。俺の見下ろして居た闇ばかりの“街”に、複数の光が灯る。
俺は予想以上の数に顔を顰める。ッチ、ここまで多いとはな……
灯る光の色は赤、敵性の証。
即ち、ヒトを超えた上位種たる俺、天使が有害と定めた存在たちだ。
大仰に言って居るが実際の所は注意人物にマークしているだけ。それが『“天使の眼”』の力。
そして、俺が敵性と判断し、今俺の眼に映して居るのは、身分などは皆バラバラだが、全て共通点をあげるならグレイプを狙っている。
グレイプに魔法名が当てられてから2年、俺は毎夜こうして宙に立ち、連中を監視して居た。
グレイプ・トゥインクル それが今の俺の弟の名前……第二等魔術師。
魔術師、其れだけで利用価値が在る。魔力持ち、その名だけで魅力だ。
だから、俺の嫁も何度狙われた事だろうか。
昼間、薄汚い貴族が尋ねたかと思えば、夜はその配下が土足に家に上がりこむ。
全く……あんな奴らが まいすいーとえんじぇる を狙っていると考えただけでも鳥肌が立つ。
グレイプは父と同じ、魔力による身体強化の魔術師。だが今だ5歳故か魔力のコントロールは苦手らしい。
そのため、魔術を使うと唐突な魔力切れや爆発を起こす。
と、俺が考えていた時だった。
また一つの光点が我が家に忍び寄るのを見た。
愚かな……。
☆
「ここか……?例の魔力持ちのガキが居るって家は」
「あぁ……あの『鮮血百合』の弟子らしい……高く売れるな」
俺の家の玄関ホールで下卑た男共の囁き声が耳に響いた。
当然、奴らは靴の泥を払う何て配慮は持ち合わせて居無い。
母が俺の6歳の誕生日に織ってくれた絨毯が泥まみれだ。
瞬間、俺は自分自身を“天使”と謂う『運命』のシステムへと置き換えた。
「“汝ら……”」
玄関中に自分で無い様な声が響く。男達の息を飲む声が聞こえる。
そんなに怯えるなら来なきゃ良いのに。
「“今、此処で引き返し平穏を見るか、それともシぬか。選べ”」
自分が何を言われて居るか分からないのだろう。男達はその薄汚い顔に疑問を浮かべて居る。
しかし、漸く意味を悟ったのか顔に青筋をたて、怒鳴る。
「何だガキが! なめんなよ! 」
そう言い、やけにくすんだ色の大型ナイフを取り出す男。
こいつらは俺の事がただのガキに見えるのだろうか?この背に在る翼にも気づけ無いで……
哀れな。
男達がナイフを振り下ろす。
しかし、俺は除ける必要など無い。
「なっ……!? ナイフが!」
「砕けた……‼」
男達の持つナイフは俺の翼に触れた時点で砕けた。唯一の慈悲も、跡形もなく。
「ひぃ……!」
「こいつ……ヒトじゃ無い!」
今更気づいたか。
バカ共め。
「 《天界の扉:Lv.3》『“天国の鍵”』を発動」
俺は男達に新たに得たチカラを行使する……『“天国の鍵”』。
神の第一の使徒ペテロが師にして神、イエス・キリストより授けられた権威の証。
そのチカラは対象の前後2週間の記憶の改変。つまり、今のこいつらには死んで貰う。
「“誇る者は主を誇るべきである。 自分で自分を推薦する人ではなく、主に推薦される人こそ、確かな人なのである”」
☆
意識が闇の中から浮上する。
……そういや、昨日もまたバカ共が来たんだったな。
毎晩、毎晩こうだ。
グレイプを狙うバカ共は現れては記憶を失い 消えて行く。
グレイプが魔法名を得てから既に一年、成功した者など誰一人居無いと謂うのに、後から後から湧いてくる。
と、俺は今同じ布団で眠るグレイプを覗く、金の髪が俺の方に触る。メッチャさらさら。
……グレイプ・トゥインクル。護るべき弟。
例え金髪碧眼美少年で将来リア充に成ろうが、運動抜群で俺よりも背が高かろうが、更には俺が女の子に話しかけられる理由の大半が「グレイプの兄」だかろうが……!
誰よりもこの子を護りたいと想う。
「ん……?兄?」
俺がずっとグレイプを見て居たからか、それとも無意識の内に髪を撫でて居たからか。
グレイプが目を覚ました。
前髪に隠れた碧眼が眠たそうに俺を見つめてくる。
ふっ……その程度では俺は鼻血なぞ出さんぞ! だだ萌え悶えるだけだ!
「グレイプ……まだ、時間速い。眠たい。寝る」
カタコトは健在だ。と言ってもこれでもだいぶ良く成った方だ。家族にしか通用し無いがな……!
「ん……お休み」
そう言って瞼を閉じて数秒、直ぐに寝息が聞こえて来た。
やはり眠って居た所俺が起こしてしまったんだろう。悪い事をした。
「…………」
俺は、なるべく物音を立てない様に布団から抜け出す。
最近、グレイプは妙に鋭い所が在る。
今グレイプが俺の布団で寝て居るのも昨夜、俺が部屋に戻るとグレイプが俺の事を探して居たからだった。
正直可愛すぎて死ぬかと思ったよ。
と、俺は下への階段を降りながら昨夜の事を思い出す。
しかし……やはり、グレイプは着実に強く、成長して居る。
昨夜の場合もおそらく俺のチカラの気配を感じとったからだろう。
……あれ?やゔぁくない?
俺が自分のチカラの未来について危惧して居ると、父に声をかけられた。
心臓が止まるかと思ったよ。
「おはよう、ニア。何か考え事してた様だけど大丈夫?」
なんか心配されてしまった。
此処まで来るとなんか罪悪感を感じる。
「心配、ナイ」
まぁ親からしたら6歳にも成ってカタコトな俺はよっぽど心配でしょうよ!
「そう……あ、そうだニア。ボクはこれから大聖堂の方へ行くけど来るかい?」
……?
大聖堂 “街”の中心に位置する中央区に存在する名の通りデカい聖堂だ。
ん~?今まで行った事が無かったら行って見たいが何故だ?
カテドラルでできる事なんか洗礼名を貰う位だ。しかも其れも特1第四等以上の紹介状が居る。
あまり行こうと思う所では無い。
その事が顔に出ていたらしく、
父は軽く苦笑しながらも教えてくれた。
「まぁ、柄じゃないけど御祈りにね。それにニアも洗礼名は無理だけど、また守護聖人名を貰う事は出来るよ?」
……父が、御祈り?
確かにあまり考えがつかないな。
守護聖人名の方に至っては……3つもいらん。
だが……
「ん……行く!」
俺は、父と大聖堂へ向かう事にした。
☆
今思えば6年間でこんな風に父と一緒に歩いたのは初めてかもしれない。
だって俺基本外に出歩かないし、
“街”に来てからは鍛錬もやってない。
とか思っていたら目的の大聖堂らしきものが見えてきた。
「父、あれ?」
「うん、あれが司教様のおられる大聖堂だよ」
司教様ねぇ……
俺はなんだかげんなりとしながら開け放たれて居る聖堂の戸をくぐった。
そこで見たものに俺は腰を抜かしたね。
「ぁ……プラムくん、ニアくん」
「リリーさん?」
「はぁ……やっぱりですか ……」
ほぼ燃えかすの服きた美人さんがおりゃあ誰だって腰抜かすよね。
この赤裸々な姿が『鮮血百合(クリムゾン,リリー)』の由来とは……
作者「なんとリリーさんが素っ裸!なんの脈絡もない流れでごめんなさい!」
ニア「で、計画性ゼロの作者は次の話は決まってるのか?」
作者「勿論大聖堂まで来たんだから!あ~でもそろそろ別の人物目線も書きたいんだよね」




