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第一話 目覚めればそこは海 〜天国の鍵を秘める夢の聖者 ・3

 急遽作られたらしい、粗末な塀にさえぎられた、元々は『入り口』たっだであろう道に、『敵』は堂々と現れた。




 こちらが堂々と正面から現れたのを賞してのことだろう。彼等は不意打ちに対しては容赦しないが、こうして正面きって行くと不思議と話を聞く体勢になってくれることをアイザックは知っていた。




 だが、同時に不安もあった。




 栄人兵か糟人兵か。


 ぱっと見ただけでは全く見分けがつかないが、気質が全く違う。




 栄人が一人でもいればすぐに話し合いに持ち込んでくれるはずだった。


 栄人がいればすなわち彼が隊の長になる。糟人が栄人を支配する事は決してない。糟人はいわば栄人の奴隷なのだ。奴隷が主の上に位置する事はどの世を見てもありえない。


 栄人はよそ者を嫌う反面、自分たちに利益が伴うと想定されるそれ相応に見合う条件を持ってこれば意外なほど好意的に受け止めてくれる。


 彼等の全ては勝ち負けではない。損得なのだ。




 だが、糟人兵のみで結成されている隊だった場合は、この出迎えは嵐の前の静さという事になる。

 奴等にとってR国兵は全て『祖国の敵』なのだ。祖先の仇とばかりに名を名乗り、正面から突撃してくる。彼等がかつてルツの覇者だった頃の伝統らしいが、それは一方的で、同時に全体の士気が上がる。例を見ない『戦法』故に逆に不意を付かれて壊滅的な打撃を受けるらしい。




 こちらとて話し合いで追い払えるなら話し合って事を終えたい。


 話し合いをして何とかしようと近づいて、蓋を開けたら糟人兵だったという話は良くある話である。話し合いをしようとした一隊にいきなり全面突撃をかます為、壊滅的な打撃を被ったという話をよく聞く。見た目も言葉も全く同じなので、もはやこれ自体栄人の仕掛けたトラップなのではないかと思わんばかりだった。






 武器を構えるY国兵に、諌めるように兵士の一人が栄人の言葉で言った。




「哀れな海の民ども。お前達は数少ない同胞まで殺すのか?」




「…同胞?」




 アイザックの連れていた駒田を前に出した。


 それを見たY国兵は、流石に動揺の色を見せた。


 だが、ただ仲間が捕虜にされていただけのことではなく、空に属する人間だったから、なおのこと驚いたようだった。




「この若い兵士の命は貴方方にかかっています。我々は貴方方がここから撤収する際危害は加えないし、彼をこのまま返しましょう。…ここに留まり続けるのであれば、それなりの対応をさせていただく。ここは我々の土地なのだから。」




 栄人の言葉で兵士がY国兵に言う。


 ふと、Y国兵の一人が、駒田に声をかけた。




「…おい、どういう事なんだ?お前は何故こんなところで生き恥を晒しているのだ!」




 駒田は、答える代わりに、味方に向ける視線ではないきつい視線を向けて、吐くように言った。




「…うるさい。」




「何?」






「俺にもわからんことをそんな傲慢な口の利き方で訊く奴なんか溝に頭つっこんで死んじまえ!」






 思わぬ暴言に驚いたのは、Y国兵だけではなかった。


 アイザックは慌てて駒田を引き戻した。




「何てこと言うんだ!…あいつ等はお前の仲間だぞ。」




「あいつ等が仲間なものか!」




「違う、あれはお前と同じルツの民だ。同じ仲間だろう。ルツの民が一体何だったのかなんて覚えて無くてもいい。今覚えればいい。…あれはお前の仲間だ。」




「…俺は何者なのかわからない。何でここにいたのかも分からない。自分でもわからないことをあんな訊き方されつづけるなら俺は帰らない。」




「馬鹿め、何を拗ねてるんだ!口の利き方なぞほうっておけ!…あれはお前が仲間かどうか疑っているだけだ。お前がもっとしっかり言わねばあれらだって困惑するだろう。分からないなら分からないなりに説明が出来るはずだ。とにかく話しなさい…仲間ならわかってくれるはずだ。これでは話し合いどころじゃないぞ。」






「…俺には仲間なんていない。今分かった。俺の仲間は、バカトンボだけだ。俺はこの世でただ一人の海から生まれた男。」




「…何言ってるんだ…?お前はY国の栄人だろうに。お前故郷を捨てる気なのか?」




「元々そんなものない。俺の故郷は天の国。俺の父は天の神。俺の母はルツの海。この世の何処にも故郷なんてない。…あんたらだって俺が必要ないからあれに引き渡すんだろう。俺だってあんたらなんてどうでもいい。あいつらだって俺を必要としていない。俺もあんなのいらない。…だから好きにするさ。あんたらも勝手にしなよ。」






 アイザックにとまっていたバガボンドが、その言葉に反応するように、駒田にうつった。




 その全てを突き放したような言い分に、アイザックや兵士は胸が痛んだ。


 言っている意味はわからなかったが、それでも何か悲しかった。


 ただの捕虜だというのに。人懐っこいただの異人でしかなかったはずなのに。




 だがこの悲しみが何なのかが分かる前に、Y国兵が動いた。






「良いか若いの。お前一人の為に我々の名が汚されるのだ。お前のようなすぐ誘惑に負ける非国民が我々を追い詰めるのだ。祖国と名誉の為に潔く死ぬがいい!そいつらと共にな!」






 『敵』はまるでいらないものを切り捨てるように、駒田に向けて、銃弾を打ち込んだ。




 だが、敵の凶弾によって血を流したのは、駒田ではなかった。


 自分に牙を剥く爆音に目をつぶって硬直するが、一向に痛みも何も無かった。




 感じる前に、別の爆音がとどろいたからかもしれない。




 裏から回り込んだダニエルの部隊が奇襲をかけたのは、動きを見なくても分かった。


 奇襲に混乱したY国兵が、集落の中ほどで応戦する仲間を一瞬見やる。


 その隙を突いて正面のアイザック達も持っていた武器を構えて切り込んだ。




 ただ一人を除いて。




 耳がつんざけそうな音が響き渡る中、足元で半分寝転がるようにうずくまった兵士。


 通訳をしていた兵士だった。


 とばっちりを受ける程側にいたわけでもない彼が、自分の代わりに弾丸を受けたらしい。


 血が辺りに飛んでいた。




 こんなやかましい中、バガボンドの声が耳に大きく響く。






「そいつはお前を庇ったんじゃよ。同胞に射殺されそうになったお前を。…天上人のアリ人から見ればルツの閉鎖的な原住民である栄人の言葉を解すという事は、元々Y国や栄人に興味があったんじゃろうな。」






「へえ。」






「…それでもお前は、私以外のものは敵とみなすのか?」






 兵士から目を離すと、辺りは燦々たる状態になっていた。


 今まで生きていたものが、血にまみれて倒れていた。


 それ以外の連中はよく見えないが、まだ争っているのだろう、音が響いている。


 倒れこんでいる者の顔は、無念というよりも、ただ苦痛と悲しみを湛えているような気がした。




 自分を撃ち殺そうとしたY国兵も、そんな顔を見せて倒れていた。






「お前にとって自分の思い通りにならないものは全て敵なのか。」






「そうだとしたらどうするのさ。」






「このガキめ!お前の我侭の為に負傷し死んだ連中にどう詫びる気だ!お前が殺したも同然なのだぞ!」






 バガボンドは駒田を責めた。




 彼等の言うことを聞いて事情を話していれば、もしかすると話し合いで終わっていたかもしれない。


 だが、駒田は何となく話に応じていても結局はこうなったような気がした。




 栄人がいれば、たとえ挑発されても糟人が自ら行動を取る事はないことを知っていた。






 ここは恐れていた通り糟人のみの隊が陣取っていたのだ。






 だが、今となってはそんな事はどうでもいい。






 たとえ自分を助ける為といえど、自分を『見ず知らずの連中』に引き渡そうとする彼等が憎かった。


 何故一緒にいてはいけないのだろうか。




 いや、その理由はわかる。




 分かるからこそひねくれて我侭を言ってやった。






 彼等の悲しげな顔が思い起こされた。






 駒田は惨劇の中で笑った。


 自嘲するように笑った。




 自分は愛されていた。正体不明の敵兵でも、可愛がってくれていた。


 引き渡して『自由の身』にさせてやることが、彼等に出来る唯一の施しだった。


 利用すれば利益を得られるとか、ただの義務感で引き渡そうとしたわけではない。




 もう分かったじゃないか。




 元から知ってたのに。






 駒田は誰にも見えない、神がくくりつけた見えざる紐を引っ張る。




 ポケットに押さえられていた光が、神々しい一閃となって、集落全体を清めた。






─────






 明らかに兵器の物ではないその光に驚いた兵士たちは、光の瞬いたほうを見やった。


 全ての兵士がそうしたので、不意打ちなどという無粋なまねをする者はいなかった。




 兵士達は、さらに驚愕すべき出来事に遭遇する。




 めいめいの『敵』たちにやられたはずの兵士たちが、深い眠りから醒めた様に、さもしんどそうに起き上がった。


 負傷した者も、まるで今まで小休憩していたかと思うほどひょっこりと簡単に立った。


 眠そうにあくびをしながら、Y国兵は、側で同じ様に寝ぼけ顔になっていたR国兵に尋ねた。




「…今、川のほとりでやっと戦わずにおれるんだなぁとかいうておったような。」




 言葉が通じなかったらしく、R国兵は首を傾げたが、それでも『敵兵』に対する対応とは思えない、ごく自然なものだった。




「…死後の世界では言葉が通じたのにのう。」




「しかし何故生きているうちはいがみ合わねばならんのだ?死んだら初めて親しくなれるって、どういう事なんだ?」




「理不尽な話だ。まるでこの世が生き地獄のようじゃないか。」




「そんなの嫌だ!」




「そうだ、もう戦うのは御免だ!生きているうちが花であるはずなのに、何で死んだほうが楽しいんだ?そんなのおかしいぞ!」




「戦うのはもう嫌だ!」




 異国の言葉同士がめちゃめちゃに交差しながらも、じょじょに意志の疎通が開始された。


 生き返った者達は、持っていた銃を再度持ち直して、立ち上がる。


 彼等は『敵味方』関係なく、今まで戦い続けていた兵士たちに銃口を向けた。




 そして無慈悲にも、兵士たちが止める様に訴えようとする以前に、引き金を引く。




 生前の銃と変わらない、大きな音が集落に響いた。






─────






 ゆすられた。

 ごく軽く、躊躇うようにゆすられた。




 目をあけると、まぶしかった。




 そのまぶしいなかで、すぐ側に座り込んでいた異人の捕虜を見た。


 その異人の捕虜は、背格好こそただの一般兵と変わりなく、特に美しいというわけでもなかった。


 何だか色あせたような飛行服をきた、ただの青年だった。


 だが、その異人は、頭に虫をのせて、片手にこの世のものとは思えぬ、神々しいというべきか…太陽のごとき暖かみのある光を放つ剣を持っていた。




 その異人の捕虜は、アリ人の最も好む聖人ジョンを連想させた。




 異人達の侵略で危機に瀕した国を救った、神の加護を受けた勇者。


 粗末ながらも神々しい甲冑、何色にも染められていない無垢で質素な外套、その手にはその粗末な格好とは大よそ不釣りあわせな、太陽のごとき光を湛えた、まさに聖剣。


 彼自身様々な奇跡を生み出し、その聖剣によって『無血』で敵を降伏させたという。


 その傍らには、まるで付き従うように鳩がついていた。


 今日まで鳩が平和の象徴として好まれているのは、彼の宗教的な伝播のお陰ともいわれる。




 無意識のうちに、彼に、十字を切り、祈りを捧げた。




「…ああ、プレスター、我々を救いに来てくださったのですね。」




 光を放つ剣を携えた捕虜だった男は、邪気の一切感じられない笑みを浮かべた。




「プレスター?古くなるとよく固まる例のアレですか?横にしたり逆さまにすると再び動き出すとゆう。2はネットに接続可能。」




「…何の事を言っているのかよく分からぬが、違う事には変わりない。しらけるほど見事な腰の折り方をするでないわ。プレスターは聖人ジョンの肩書きじゃ。」




 今まで頭にとまっていただけだった虫が、喋った。


 だが、驚きはしたものの、奇妙には見えなかった。


 むしろ、神々しくさえ見えた。




「あんたは何で、ただの敵の捕虜を助けたの?…身をていしてまで。」




 神々しい人は問うた。


 自分でもよく分からなかったので、暫く考えた。


 嘘だけはつきたくなかった。




「…分かりません。ただ」




「ただ?」




「…気の毒じゃないですか。あのまま敵も味方も分からないまま殺されるのは。」




 神々しい人は、立ち上がると、見下ろして言った。






「あんたはええ人だ。でも駒田の事ちっとも分かってない。」






 無邪気な笑みを浮かべながら、首をすくめたその神々しい人は、そのまま集落の中に足軽に入っていった。




 同じ様に、息を吹き返したY国兵が、聖剣を持つその人に言った。




「おお天の君博仁尊よ!我等の救い主よ!」




「…今度は海女の親分だってさ。でもやっぱり救世主みたい。皆ひかりものが好きだねぇ。」




「ジョンに似た勇者像は各地にあるからの。というか、お前、祖国の勇者くらいは…や、もう何も言うまい…」






─────






 聖光によって死の淵から生還を果たした兵士たちの発砲の後は、血生臭く、殺伐としたもの…ではなかった。




 撃たれた者達は、痛かった。


 だが、それだけだった。


 ただ、それだけ。




 不思議に思って見ると、自分には傷一つついていなかった。


 地面に、色とりどりのものが落ちていた。


 手にとって見ると、小さな、塊だった。


 やや白っぽい粉が、うっすらついていたそれは、長い事見なかったものだった。




 兵士の一人が、それを口に放り込む。




「…ドロップだ。」




「まじかよ?」




 恐る恐るそれぞれが口にその色とりどりの固体を入れる。


 実に懐かしい、甘い味が、口の中に広がった。


 その味と共に、めいめいに幼いころを思い出す。




 たとえ難民だったとしても、賃金の安さ故に何とか雇ってくれる口があった。


 今ほど酷い扱いを受けているわけではなかった。




 貧しいなりに何とか生活していた頃。


 おこづかいをためて、ドロップの詰まった缶を買った。


 母親が、お手伝いのたびにドロップをくれた。


 友達と共に近所の駄菓子屋で買った。






「甘いもの久々に食べたよ。」




「懐かしいなぁ…」




 Y国兵が、戦場だというのにうっとりしながら味を堪能していた。


 その様子を見て、R国兵は話し出した。




「お前達もドロップ知っているのか。」




 言葉は通じなかったが、言っている事は何となく理解できたらしく、首を縦に降った。


 Y国は輸入に頼っていたのだから、同じものを口にする機会はあった。


 だが、それでも、異人が同じ物を食べていたという事が、ひどく不思議に思えた。




「お袋がこう、缶をふって、いっこあげるから草むしりを手伝ってってさ。よく言われたよ。懐かしいなぁ。」




「皆どうしてるだろうな…大丈夫だろうか…」




「俺達はこんな辺境の地で死んじまうのかな…せめて、最後に家族に会いたかったな…」




「もう、R国にかぎつけられちまった以上、どんなにあがいたって、勝てっこないってのに…俺達は無駄死にするのか…ちきしょう。」




「帰りたいよ…」




 何を言っているのかは分からなかったが、みるみるうちにY国兵達の戦意が喪失していくのだけはアイザックにも分かった。


 命ぜずとも、戦意を失った敵兵に手を出す者はいなかった。




 だが、通訳がいない。


 嘆いているのは分かるが、言葉が全てを遮断し、彼等を誘導できない。




 ただ呆然と、帰りたいと嘆くY国兵を見つめるしかなかった。








 ふと、粗末な建物の影から、光とともに聞き覚えのある、独特の気の抜けた声が聞こえた。






「帰りたいのは分かるけど今は安直に帰ったって待っているのは不名誉というレッテルだけだよ。だってあんたたち糟人兵だもの。あんたたちに退却は許されていない。下手に引き返せば逆にいちゃもんつけられて処刑されかねないですよ。栄人がこの戦いに参加した理由は増加の一途を辿るあんたたち難民を手っ取り早く始末する為なんですから。…あんたたちだってそれを知っているから、先人達は命を捨ててまで戦い抜いてきた。でも、今なら命の選択が出来る。」






 物陰から、とんぼが飛んできた。


 それを追うように、趣の異なる服を着た男が、聖剣を片手に持って現れた。




 彼の後ろから、死んだと思われていた通訳や、打ち倒したはずのY国兵たちが連なって姿を見せた。




 ダニエルは、その姿を確認するや否や、感嘆を漏らしてひざまづく。


 十字を切ると、恭しく言った。




「…君は、…貴方様はプレスターだったのですね!奇跡を使って同胞達を救ってくださった!…そして、敵を会心させてくださった!」




「博仁尊よ…!」




 方式こそ違えど、Y国兵も手を合わせて祈った。


 その場にいた人間は、めいめいに『救世主』の再来を確信し、彼に祈りを捧げた。


 気が付けば、隙間だらけの家のドアをぴったりと閉じていた集落の住人達もドアから出て手を合わせていた。




 駒田は思わず照れた。




「ひかりものって凄い効力だね…これ見せたらきっと娘さんからもモテモテになれるね。最も、こんなモノに頼らなくても駒田の黄金バットでイチコロですがね。ほほほ!」




「モテモテは知らんがこうまで効力があるという事は、つまりは戦いに疲れておるのじゃよ。皆な。ゆとりがあるときの救世主など、ただの厄介者じゃよ。」




「ぐぅ、哲学臭いなぁ。」




 駒田は聖剣をまるでバットのよう自分のに肩にかけて、肩を軽く叩いていたが、ふと、一人だけいまだ呆然とこちらを見ている男に再度声をかけた。




「大人しく投降すればいつか必ず国に返してくれるはず。アリ人は栄人糟人区別あんまりついてないみたいだし、栄人の収容所は酷い扱いを受けないって言ってた。今は投降したほうがいいと思うよ。きっと大手を振って帰れる日が来るさ。…それにこの人達なら信用できる。だろう、アイザックさん?」




「え?あ、ああ…」




「そういう訳だから、あとは頼むよアイザックさん。通訳いれば彼等を誘導できるよね。」




「…ああ、まあ、出来る限りの事はするけどさ…」




「ほいじゃあよろしくね。俺は用事があるから行くよ。」




 駒田は、ふと飛んだ。


 そのまま、そこらの建物より、木々よりも高く昇っていった。




 アイザックは彼に持っていた違和感がここで理解できた。






「ちょっと待ってくれ!」






「おお、何か?」




 上空で、駒田が止まってアイザックを見た。


 光り輝く剣を持って宙に浮く飛行服の男は、本当に神掛かり的なものを感じさせた。




 アイザックは、最後になるであろう問いをかけた。






「用事って、何なんだ?」




「俺は神の娘…駒田ず姉を探すためにこの世界に蘇ったんです。あんたたちとずっといたかったけど、ダメっぽいから行かなきゃ。」




「…お前、一体何者なんだ?」






「栄人です。たとえ人から否定されても駒田は人間です。…あんたがそうしろと言いました。」






 そうじゃない、とアイザックの視線は訴えた。


 どうせ彼に会うのはこれっきりだろう。


 いつもの何も考えていなさそうな笑みを浮かべて、言った。






「俺は椎築で生まれた駒田栄助。栄人の栄に、助けると書く。」






「…そうか。ありがとう栄助。折角懐いてくれたのにずっと一緒に居れなくて御免な。…姉さん探しがんばれよ。」




「おお。」




 駒田は光の筋となって、遥か上空に消えた。






 それを見ていたダニエルは、立ち上がって、アイザックを見た。




「…栄人の栄に、助けると書くのか。栄人の文字はよく分からないけど、…今度のプレスターは、アリ人ではなく栄人を助けるために降臨なされたという事だろうか…?」




「そういうわけじゃないだろ。深読みしすぎだ。たまたまそういう名前だっただけさ。」




 不思議そうな顔をするダニエルを見て、アイザックは軽くため息をついた。




 そして、現実の問題を片付けるべく、兵士たちに命令を下す。


 後始末は、いつだって世俗的な者達の仕事だった。


 聖なる人は、その様子すら見ない。






 生まれ変わった栄人のプレスターは、誰も助けない。


 ただ目の前の気に入らない事を、奇跡によって捻じ曲げる。




 実に感情に流されやすい、実に人間臭くて欠陥だらけの救世主。




 そんな頼りない奴を救世主にする事自体おかしな話だ、とアイザックは思った。






─────






 上空から原始林と山脈を見る駒田は、ため息を付いた。




「確かにこんな広いとことあんな山を越えるのは数人がかりでも無理があるね。これじゃ嘘ってばれるわな。というか、こんなすごいとこに来たあの方は相当ガッツのあふれる人なんですね。」




「まあな。…で、これからどうするんじゃ?王の娘を探すといっても闇雲に探すわけにも行くまい。」




 剣をポケットにしまいながら駒田は難しい顔をしていたが、ふと思い立った。




「椎築に帰りたいな。」




「故郷か?故郷は天国じゃなかったのかね?」




「バカトンボのバカ。駒田をいぢめると子供の昆虫採集の餌食になりますよ。」




「そうなったらそういう運命だったってことじゃよ。それより…Y国にはまだ行くな。お前は死んだ人間。お前がどんなに人間だといったとしても、半分妖精。力がコントロールできない限り化け物として殺されかねん。しかも、恐らくもう戦死したという通達が行っているはず。…お前は戸籍から抹消された存在なのだぞ。出来る限り、Y国には行かないほうがいい。」




「そんな!…でも、久々に故郷に帰ったら2度目の自分の葬式が終わったばかりだったって人もいるくらいだし結構いい加減な戦死通達らしいから、驚かれるだけで化け物扱いは…されないはず…」




「機械にも頼らずに空を飛び死者を蘇らせ無から有を生ずる力を持つ人間がいるというのか?」




「…うぐぅ……でもY国にお姫様がいたらどうするのさ。」




「その時はその時。」




「そんなん無茶苦茶じゃないか!俺は故郷に帰る!帰るったら帰る!」




 山岳の方に進む駒田を止めるべく、バガボンドは駒田の耳に顔を突っ込んだ。


 ばかものーと叫ぶと、虫のか弱い声でもさすがにひびいたのか、体をびくっとさせた。




 そこまではよかった。




 誰も落ちろとまでは言っていない。


 だが、いきなり駒田は力尽きて落ちた。






─────






 目の奥が痛い。




 きっと、目が裏側を向いているのだろう。








 光の代わりにあるのは、漠然とした恐怖。














「神を恐れぬ愚かな罪びとどもよ、己の成したことを後悔するがいい!!」






 威勢のいい、だが聞き覚えの無い声を耳にする。




 我に帰ると、自分は地面に転がっていた。


 と同時に、辺りにも同じように人が転がっていた。


 R国兵だ。




 どういうことだと体を起こす。




 あたりを見回すと、半分樹海の一部になりかけている、うっそうとした集落跡。


 死んだ村。そう形容するのが正しいくらい凄惨な跡だったが、戦争で焼け落ちたものではなさそうだ。村人から見捨てられ、消えていったのだろう。




 だが、この異様な殺伐さは何だ。






 と、先ほどの声がやや遠くから聞こえた。




「何故起き上がる?!」




 声のほうを向くと、あまり立派ではないが、白いワンピースを纏う女性がいた。


 黒く長い髪と黒い肌がその白さを一層引き立てる。

 こんな殺伐としたところに長い髪と白い服をなびかせるその姿は、神秘的というより、恐怖すら漂わせる異質さだった。




「…起き上がって何が悪いのさ?それよりどうなってるんだこれ?」




 たずねると、遠目ながらその女はたじろいでいることが分かった。


 そのまま無言でじりじりとあとずさると、きびすを返すように背を向けて走った。




 それを見て首をかしげていると、足元から呼ぶ声が聞こえた。


 足元を見ると、倒れたR国兵がかろうじて、顔を上げていた。


 だが、こちらの顔を見れるほどは上げられなかったらしい。




 しゃがんで目線を合わせようとしたものの、彼は目を潰されたように視線を堅く閉ざしていた。


 苦痛にゆがむその顔を眺めていると、彼はあえぐように言葉を放った。




「お前は無事なのか…」




「うん。」




「俺は駄目だ…からだが動かない。何も見えん。息をするのもやっとだ。」




「どうして?」




「…………あの女を、レジスタンスの残党を、殺せ!」




 レジスタンス。


 やっと覚えのある言葉を聞いた。


 だが、あの清楚な女が?


 しかも、いきなり殺せと。




「いきなり殺すの?酷いね。」




「覚えてないのか、こうなったのはあの女のせいだぞ!あの女を殺せばおそらくこの呪縛が解ける。このままじゃ俺は窒息死しそうだ…」




「殺せば呪縛が解けるって?変な話じゃないか。そんな事より解毒の方法ききださないと。」




「ばかやろう!!」




 怒鳴られてしまった。


 体の底から出したであろうその声は、今まできいたどんな怒鳴り声よりも恐ろしかった。




「あれは人間じゃねぇ…だろう?あの武器を一つも持たない女が異様な祈りで光を放ったとたん、こうなった。人間か?そんな芸当が出来るのは…なあ、人間か…?」




 祈りで兵士を自分以外の全員を倒したというのか。


 それは確かに、人間じゃない。




 だが、人間じゃないとするなら、何だというのだろう…




 兵士は蚊の鳴くような小さな声で、誰に言うでもなく言った。




「この森には聖人が現れたそうだ。その聖人は、不思議な力を使って人々を助けたというが……あの女がもしかすると、そうなのかもな…」




「うそっ?!俺がその聖人だ、あれは違う!」




「栄人を助ける聖人だとか…我々には、怒りと死を与えるだけなのか…」




「ち、ちょっとまってよ!誤解ですよ!駒田はそんな事はしませんよ!」






そのまま突っ伏したその兵士をしばらくゆすっていたが、応答はなかった。






 聖人に間違えられるほどの力を使って、このR国兵の山を作ったというのか。


 真偽を確かめるためにも、逃げた女の行方を追わねば。






─────






 死んだように静寂に包まれた集落跡。


 その死んだ建物の間を縫って足早に歩く。




 何故だろう。

 あの女は、まだこの集落跡にいる気がした。




 その直感の赴くままに、歩く。






 足は、寂れた、だがまだ人がすめそうな比較的大きな小屋に向いた。


 この村が生きていたときには、きっと村の中でもそれなりの財産をもった人間が住んでいたのだろう。


 腐食にも耐えるそのたたずまいは、死んだ村の中で死を唯一拒む存在だった。




 きしんだ、しかし何度か使われていたのかそれなりにちゃんと開くその扉を開けて、中に入る。




 中は意外と明るく、奇麗だった。


 それでも、何故だろうか。どこか寒かった。


 あまり長居はしたくない。そう思わせる、不吉ささえ感じる建物だった。




 別に足音を隠すでもなく、扉以上にきしんだ音を出す床を踏みしめる。




 階段を上るとき、きしんだ音のなかで格別すごい音が段の下から聞こえた。


 ばきっという、何かが壊れる音。


 一瞬背筋が凍ったが、特に通行に支障はきたさなかったので、そのまま無視することにした。




 二階に上がると、直感があっていたのか、先ほどの女がいた。




 だが、あれだけの壮大な音を立ててやってきた自分に気づいていないようだった。




 何か、壁を深刻そうに見つめている。


 よくよく見れば、壁には穴があいていた。


 どうも、中に何かがあるらしい…




 それを、複雑そうな面持ちで見つめていた。






「その壁の穴に特別な何かがあるみたいだけど…何でとっとと逃げないのかな。」




 単純な興味から言った言葉ではあったが、自分でも恐ろしいくらい皮肉がこもっていた。


 それにさっきから気にはなっていたが、自分が自分ではない気がする…




 だが、今はそれどころではなかった。




 『突然』の客に女は驚いたらしかった。


 壁から目を離してこちらに体を向けるが、その動きはまるで穴を身を呈してかばっているようだった。




 女は、震えながら言う。


 追い詰められた恐怖というより、信じられないことが起こったための愕然とした恐怖。


 それが一番近いだろう。






「何故、お前は動けるのだ…?」




「知らない。ただ、どうもあんたを倒せば皆元に戻るみたい。倒す前に、元に戻すのであれば、…俺だってそこまで無慈悲じゃないから見逃してもいいけど。ところで…」




 言いかけると、うなじを指で掻く。さっきから痒かった。


 指に、堅いものが当たった。


 一通り掻き終えてから、再度女を見据えた。




「あんたは何者?」




「お前達は、レジスタンスの一味だという理由で私達を殺そうとしたではないか。それでいい。」




「ほんとにレジスタンスの仲間なの?お前、聖人じゃないかって言われたよ。まあ、違うって事はわかってる。ただ、聖人に間違えられるほどの人間業じゃない『奇跡』を起こした。と、いうことだよね。」




 女は顔を、微妙にうつむかせた。


 言葉以上のことをいっているようだった。




「あんたは人間なの?…人間になった妖精は俺以外いないって聞いた。外にいる奴を魔法でなぎ倒したというなら、あんたは一体何者?」




 妖精、という言葉を聞いて、レジスタンスの女は酷く動揺した。




「…………お前こそ何者なんだ?」




「その妖精ですよ。聖人って言われてる。あんた何者?何で、人に害を与えるのさ。」






「…………………私は、」






 しばしの沈黙の後、女は口を開いた。


 と同時に、今まで無かった異様な空気が流れる。




 だが、何が起こるかは自分が一番良く知っていた。




 自分も不意にこんな気を発する。


 しかし、こんなまがまがしいものは自分は出したことが無い。








 こいつは、人を殺す気だ。魔法で。








「まだ、ここで死ぬわけには行かん!」






 神罰のごとき光。


 青白いとか暖かいとか、形容することすらできない、破壊的な閃光。




 それが、部屋を…いや、自分に襲い掛かった。




 全身を何かで殴られたような痛みが走った。








 …………………が、それだけだった。






 さすがに痛くてしばらく倒れていたが、じきに起き上がると、女はの顔が苦痛にゆがむ。


 何故だ。


 そういいたげだった。




 何だか女が哀れなので、弁解するように、さっきの魔法の事を語ってやった。




「痛いですよ。でも、死ぬほどでもないです。こんなんなら、車に引かれたときのほうが痛かったです。昔道路横切ったら引かれました。軽症ですみましたが、でも痛かったですよ。車運転してた人は驚いてましたが、ついでに家まで送ってくれました。車欲しいと思ったのはその頃です。」




 そんなことを言っているうちに、2陣が来た。


 女もさっきより精神を集中しているのだろう、先ほどより体に響いた。




 御託を述べる前に、第3陣がきそうだった。


 さすがにこれが何発も来たら身が持たない。








 瞬間に、それは決まった。








 やばい。




 そう思ったとき、無意識的に、携帯していた拳銃で女を打ち抜いていた。






 女は、白い服を真っ赤に染めて、その場に崩れた。


 恐ろしいほどに、あっけなかった。




 そのとき心に去来したものは、しまったとか、なんてことを、とかいう後悔の念より、妖精も死ぬときは死ぬのか、という他愛も無い感情だけだった。






 赤と白に染まる女を見下ろしながら、女を見る。




 黒と白、そして冴える赤。


 有終の美とはこういうものをいうのかもしれない。


 不謹慎ではあるが、燦々たる状態であるこの娘に美しさを感じた。




 この手のものに興奮するある種の特殊な方々の気心は理解できないと思ってはいたが、もしかすると生者には決して表現できない儚さをそういう方々は究極の美と感じているのかもしれない。






「…まだ手当てすれば死ぬ事はないと思う。仲間の呪縛を解いて下さい。」






「…………………もし」





 不意に娘から声が聞こえた。




「もし兄弟に遭ったら言って頂戴。…我々を罰するために神が使いを差し向けなされたと。私は森之宮菖蒲よ……」




「…森之宮…兄弟…?罰って一体…」




「…………貴方はいずれ…私たちを滅ぼす…決して抗えない定め。貴方もいつかそれを悟るはず。貴方は神から使わされた執行人なのだから。」




「俺はそんな物騒なものじゃない…何であんたらを滅ぼさなきゃならないのさ。」






「私は…私はただ一族の定めに従うのみ。……どうか罪無き迷い人に御慈悲を…………………」






 それきり女はしゃべらなくなった。




 うつぶせたその体をゆすったが、反応は無かった。


 体が嫌にこわばっていることだけ分かった。




 物を転がすように上半身だけ表に向けた。


 案の定、口から大量の血があふれ出ていた。


 この娘は助かる見込みがありながら、訳のわからない『許し』を自分に請いながら自らの命を絶ったのだ。




 生きていれば美女に数えられるだろう整った顔立ちだったが、今となってはどこにでもある死人の顔だ。


 だが血で真っ赤になったその鬼気迫る顔にもまた、特有の気品が漂っていた。






─────






 外に戻ると、倒れていた兵達が…まだ倒れていた。




 ただ、さっきの呪縛からは解けているようだった。


 単に、呪縛から解けてぐったりしているだけだったらしい。




 さっきの兵士を見つけて、声をかけてみる。




「大丈夫?」




「まー何とかね…」




「しかしよくあの女の人を倒せば解けるって分かったね。」




「…何となくそうかもなって思っただけだったけど、何とかなるもんだな。まあ、結果がオーライなら全て良しかなー。」




 なんともいい加減な…


 確かに結果は良かったものの、これが解けなかったらどうするつもりだったのだろう。




 奥のほうに先ほどの建物があり、何とか休めそうだということを教えて立ち去ろうとすると、その兵士は起き上がって叫んだ。




「おいどこいくんだヒラリー。」




 ヒラリーとは何者?


 不思議に思いつつなおも歩み続けると、肩をつかまれた。




「無視するな。俺じゃなくてリーダーに言え、そういうことはっ!」




「リーダー?だれそれ。」




「…どうしたんだよお前?さっきから何か変だぞ。」




 変と言われても。


 眉をしかめると、兵士はため息まじりに言った。




「…俺が言うからもういい。きっとさっきのショックで頭がおかしくなっちまったんだな…可愛そうなヒラリー、早く頭が元に戻るように祈っておくよ。」




 肩から手を離すと、兵士は引き返しある兵士の所に走っていった。




 アイザックといい今といい、R国兵は何でこう自分を『頭がおかしくなった』というのか。


 R国兵たちのあまりにあんまりなその対応に、むくれた。






─────






 先ほどの小屋に小隊が入った。


 一人、階段を突き破って階段にはさまった。


 ばきという何かが割れる音が聞こえた段だった。




 屈強なR国兵が階段から上半身だけ晒し腕を振りながら泣き言をいう様が、場に不釣合で笑えた。




 終始けたけたけと笑い続けていたら、他の兵士の視線が集中した。


 仲間の不幸を笑うその行為を責めるものではない。




「おい、あのヒラリーが大笑いしてるぞ…」




「あいつ、いつだって笑ったことなかったよな…」




「なんでもさっきのショックで頭がおかしくなったとか。」




「なるほどね…どうりで…」




「かわいそうになぁ…」




 哀れみのその視線を一身に受けて、さすがに笑いが苦笑いになったのは言うまでも無かった。






─────






 お大事に、と皆から言われるその理由を悟ったのは、小屋の外に出たときだった。




 外に落ちていた光るものを見て、初めて自分の姿を確認した。


 光るものは、割れた鏡だった。


 割れていても、姿を確認する事は出来た。




 自分は駒田栄助ではない。


 ここにいる兵士と同じR国の兵隊の姿をした見知らぬ誰かだった。




 一体どういうことかと思ったが、自分が人間ならざる一面をもっているならこういうこともあるのだろうとえらく簡単に納得できてしまった。




 ということは、彼の名前は『ヒラリー』か。


 あまり笑わない兵士らしいので、頭がおかしくなったと言われないように大人しくしておこう。




 と決心していた矢先、いきなり背後からわき腹を触られた。




 飛び上がって驚くと、笑われた。


 見ると、助言をくれた兵士だった。


 いまだに息を上げているヒラリーを見て、兵士はにやにや笑った。




「おもろっ。」




「ひ…酷いことしないでください。」




 出来るだけ感情をこめないように、トーンを低くしてしゃべってみるが、逆に笑いが激しくなった。


 ハイテンションでも駄目、ローテンションでも駄目、ヒラリーとは一体どういう人間だったのか。




 どう対応していいか困っていると、兵士は言った。




「何か人間臭くなったね。」




「人間臭いって、俺は元々人間ですよ…」




「以前のお前は何事にもつまらなさそうな顔してたよ。背丈はちっこいくせにひでぇ短気な奴でな。」




「怖い人ですね。」




「ああ、怖いお人だよ。気難しい奴だったよ。でも芯が強くてしっかりしてていい奴でもあった。意志の強い奴は俺は好きだけど。でも今は何か面白い奴になったな。」




 そういうと兵士はまたヒラリーのわき腹をつついた。


 きゃー変態ーとヒラリーは叫びながら兵士を押した。




 兵士はふっとんだ。




 ヒラリーはしばらく遠くに飛んでいった兵士を無言で見つめていたが、兵士が動いたのを見て初めて近くに行って助け起こした。




 そんな力強く押したつもりは無かったのに。


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