表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シルヴァーナ王国浄化伝  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

第9章:実家の「淀み」を洗い流せ(後編)

ロザリンドの聖火で極上の焼き鳥を楽しんだタケシ。次に彼の裾を引いたのは、風属性の重盾を操るアナスタシアでした 。彼女の実家は、国境の切り立った山岳地帯で過酷な吹き降ろしから村を守り続けてきた「土着の守護騎士」の末裔です。


「タケシ様……。私の故郷は、一年中吹き荒れる『断絶の風』を盾で防ぐことだけを生き甲斐とする、閉鎖的な場所なのですわ。……貴方の自由な全属性で、あの冷え切った村に新しい風を吹かせていただけますか?」


そこは、巨大な石壁と重厚な盾を構えた戦士たちが、絶え間なく襲いかかる暴風に耐え忍ぶ、寒々しい村でした。アナスタシアの父である長老は、岩のように動かぬ風属性の重盾を構え、タケシを冷たく睨みつけました 。


「アナスタシア、外の世界で軟弱になったか。……連れてきたのは、この嵐の中で立っていることすら危うい男ではないか。風を防げぬ者に、この村の門を潜る資格はない!」


長老が合図を送ると、山頂から「全属性」を拒絶するかのような、刺すような冷気を含んだ暴風がタケシを襲いました。 「この風は、外から来る不純なものを全て弾き飛ばす。……耐えてみせよ、異邦人!」


タケシは、風で服がバタつくのを鬱陶しそうに眺め、空の酒瓶を掲げました。 「……防ぐだの耐えるだの、そんなんだから肩が凝るんだよ。風属性ってのは、壁を作るもんじゃねえ。……こうやって『歌わせる』もんだ」


全属性・風の調律ハーモニック・バレット タケシがアナスタシアの構える重盾に指を触れると、盾から放たれていた「拒絶の魔力」が、一瞬で「風を受け流し、音に変える」全属性の振動板へと書き換えられました。


断絶から旋律へ(ストーム・オーケストラ) 「嵐がうるさいなら、音楽にしちまえばいい」 タケシが魔力を流し込むと、村を襲っていた暴風は盾を抜ける瞬間に心地よい「ハープの音色」へと変わり、さらに火属性の熱を帯びて村全体を包み込む「温かな春風」へと変貌しました。


「……な、何だと!? 我らが数百年、命を懸けて防いできた死の嵐が、これほどまでに優しく、美しい音色になるというのか……!」


長老たちは、自分たちが「敵」だと思い込み防ぎ続けてきた風が、タケシの手で「恵み」へと変えられたことに、杖を落として聞き入りました。


アナスタシアは、呆然とする父の前で、タケシから教わった「風の多層構造」を披露しました。 「お父様、盾は世界を遮る壁ではありません。……タケシ様に教わったのは、過酷な運命を受け流し、それを喜びに変えて皆へ届けるための、大きな器なのですわ」


彼女が重盾を振るうと、村の広場に溜まっていた冷気が一掃され、凍土から色とりどりの高山植物が芽吹き始めました。


その夜、閉鎖的だった村は、王国一「風通しのいい」祝宴の場となりました。 タケシが風属性で熟成を早めた山の幸と、アナスタシアの盾(オーブン機能付き)で焼き上げた絶品料理が並びました。


「……うう、美味い。風を恐れ、閉じこもっていた日々が嘘のようだ。タケシ殿、貴方は我らに、この厳しい山で『楽しんで生きる』術を教えてくれた!」


タケシは、アナスタシアに寄り添われながら、穏やかな音楽となった風に耳を傾けました。 「……フン、風が美味けりゃ酒も進む。アナスタシア、この盾の音色、俺が寝る時の子守唄にちょうどいいから、いつでも弾けるようにしとけよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方の安らぎのために、最高の旋律を奏で続けますわ」





アナスタシアの「断絶の風」を安らぎの旋律へと変えたタケシ。次に彼の前に現れたのは、風属性の重盾を操るフェリシティでした 。彼女の実家は、王国の造船を支えてきた由緒ある技術者ギルドのリーダー家系です 。


「タケシ様……私の実家は、風と盾を『船の動力と防御』としてしか見ていない、油臭い職人たちの集まりなのですわ。……父は、貴方の全属性魔力を新型エンジンの『燃料』として利用しようと、手ぐすね引いて待っておりますの」


巨大な帆船が立ち並び、鉄を叩く音と油の匂いが充満する港。フェリシティの父である親方は、スパナを片手に、巨大な設計図を広げてタケシを迎えました。


「来たか、歩く無尽蔵エネルギー! 貴様の全属性魔力をこの『新型盾式推進機』にぶち込めば、大陸を半日で一周する快速船が完成する! さあ、理屈はいい、さっさと動力を注ぎ込め!」


親方がレバーを引くと、実験用の巨大なタービンが回転し、タケシを吸い込もうとするほどの「風の渦」が発生しました。 「これが我がギルドの誇る、盾による風の圧縮技術だ! さあ、全属性で出力を最大にしろ!」


タケシは、騒音の中で耳を塞ぎつつ、設計図を一瞥して鼻を鳴らしました。 「……燃料だの出力だの、機械に頼りすぎて風の『自由』を忘れてんじゃねえか。風属性ってのは、船を無理やり押し進めるもんじゃねえ。……こうやって、水と『対話』させるもんだ」


全属性・流体調律ハイドロ・エア・バレット タケシがタービンの基部に指を触れると、乱暴に渦巻いていた風は、一瞬にして水の抵抗を「ゼロ」にする全属性の潤滑膜へと書き換えられました。


重盾の帆転換セイル・シールド 「盾をエンジンにするんじゃねえ。風を『捕まえて』、海そのものを味方につけるんだ」 タケシが魔力を流すと、フェリシティの重盾は、見えない風を何倍にも増幅し、波をエネルギーに変える「全属性・感応帆」へと変貌しました。


「……な、何だと!? 我がギルドが数十年かけても到達できなかった『理論上の最高速度』を、ただの盾一枚で超えたというのか!?」


親方は、自身の設計図がタケシの「全属性」という名の芸術によって過去の遺物と化したことに、呆然として立ち尽くしました。


フェリシティは、膝をつく父の前で、タケシから教わった「風と水の真理」を披露しました。 「お父様、力任せに海を裂くのが船ではありません。……タケシ様に教わったのは、風と踊り、水に愛されながら、まだ見ぬ世界へ誰よりも自由に駆け抜ける術ですわ」


彼女が重盾を振るうと、ドックに停泊していた老朽船が全属性の光に包まれ、風もないのに水面を滑るように優雅に動き出しました。


その夜、機械音が響いていたドックは、潮風が心地よい晩餐会場へと変わりました。 タケシが「全属性」で熟成させた極上のシーフードと、風属性で完璧な温度に保たれた酒を提供。


「……うう、美味い。風を動力としか見ていなかった。こんなに優しく、酒を美味くする風があったとは。タケシ殿、貴方は我らに『技術の先にある喜び』を教えてくれた!」


タケシは、フェリシティに膝枕をされながら、港の夜景を眺めて喉を鳴らしました。 「……フン、機械は便利だが、たまには帆を張って飲む酒も悪くねえ。フェリシティ、この船のキッチン、俺がいつでも最高の一皿を作れるように改造しとけよ」


「はい、タケシ様。……この船で、貴方とどこまでも『愛の航海』を続けますわ」





フェリシティの「快速船」で海風を楽しんだタケシ。次に彼の前に現れたのは、水属性の重盾を操るマリアンヌでした 。彼女の実家は、王国の食料貯蔵の要である「氷」を一手に引き受ける、冷蔵・貯蔵の専門家系です。

「タケシ様……私の実家、『アイシクル・リザーブ家』へ。我が家は代々、水属性を極低温で固定し、万物を『変化させない』ことこそが至高だと信じていますの。……ですが、彼らは冷たさに固執するあまり、心の温もりまで凍らせてしまいましたわ」


「アイシクル・リザーブ」そこは、真夏でも吐く息が白くなるほど冷え切った、巨大な地下氷室を備えた屋敷でした。マリアンヌの父である当主は、全身から冷気を放ちながら、タケシを氷像のように冷淡な目で見つめました。「マリアンヌ、戻ったか。……だが、連れてきたのは見るからに体温の高そうな、締まりのない男だな。万物を凍結し、永遠に保存する我が家の『静寂の理』を乱す者は、この氷室に入る資格はない!」


当主が杖を振ると、氷室の中の水分が一瞬で結晶化し、タケシを閉じ込める「絶対零度の牢獄」が形成されました。

「この中では、腐敗も、成長も、そして命の活動さえも許されぬ! さあ、その全属性とやらもろとも、永遠の標本となるがいい!」タケシは、凍りつく空気の中で寒そうに身を震わせながら、空のグラスを取り出しました。

「……凍らせるだけが能かよ。そんなにカチコチにして、何が楽しいんだ? 水属性ってのは、止めるもんじゃねえ。……こうやって『熟成』させるもんだ」全属性・分子振動調律エイジング・バレットタケシが氷の壁に指を触れると、絶対零度の氷は一瞬にして「全属性」の魔力により、細胞を壊さず旨味だけを引き出す「究極のパーシャル室」へと書き換えられました。


究極のフローズン・カクテル(スノー・ダイキリ)

「保存するってのは、次に食う時の『美味さ』のためにあるんだよ」

タケシは全属性の精密な温度管理により、氷室の氷を削り出し、火属性の熱で溶かしたシロップと、水属性で清めた酒を混合。マイナス 5^{circ}C (※正確な温度制御)で安定させた、極上のフローズン・ダイキリを一瞬で作り上げました。「……な、何だと!? 我が家が数百年かけて維持してきた『絶対零度』が、ただの……ただの美味い酒の材料にされたというのか!?」


当主は、自分たちが「永遠」だと思い込み守り続けてきた冷気が、タケシの手で「最高の一杯」を作るための過程に過ぎなかったことに、驚愕して膝をつきました。マリアンヌは、呆然とする父の前で、タケシから教わった「水の真髄」を披露しました 。

「お父様、止まった時間は死も同然です。……タケシ様に教わったのは、冷たさの中に生命の輝きを閉じ込め、最高の瞬間に解き放つ、瑞々しい盾ですわ」彼女が重盾を振るうと 、凍りついていた屋敷の中に、雪解け水のような清涼感と、命の躍動を促す温かな魔力が広がり、貯蔵されていた食材たちがかつてないほどの色艶を取り戻しました。


その夜、静寂に包まれていた氷室は、王国一「冷えた酒と新鮮な食」を楽しめる祝宴の場となりました。タケシが「全属性」で熟成させた極上の肉と、マリアンヌの盾で完璧に温度管理されたデザートが並びました。「……うう、美味い。ただ凍らせるのが正義ではなかった。こんなに心を潤す『氷の形』があったとは。タケシ殿、貴方は我らに、貯蔵の先にある『美食の喜び』を教えてくれた!」タケシは、マリアンヌに冷たいカクテルを注がれながら、満足げに喉を鳴らしました。「……フン、氷が良ければ酒はいくらでも飲める。マリアンヌ、この氷室、俺の店の『セカンド・セラー』として契約しとけよ」「はい、タケシ様。……これからは、貴方のための特等席として、常に最高の温度で守り続けますわ」




マリアンヌの「絶対零度」を最高の一杯へと変えたタケシ。次に彼の行く手を阻むように、しかし期待を込めて立ちはだかったのは、水と土の属性を併せ持つ斥候、ガブリエラでした 。彼女の実家は、王国の「国境線」を守り続ける番人の一族です。


「タケシ様……。私の実家、『境界の監視者』へとご案内しますわ。我が一族は、外敵を一切通さないことを誇りとする、王国一の堅物集団。……貴方を『不法侵入者』として射抜こうとする父たちを、その圧倒的な理で黙らせてくださる?」


そこは、幾重にも張り巡らされた防衛線と、一切の死角を許さない監視塔が立ち並ぶ要塞のような領地でした。ガブリエラの父である一族の長は、巨大な弓を構え、タケシが境界線を一歩跨いだ瞬間に号令を下しました。


「ガブリエラ、戻ったか。……だが、その男は我が一族の法を無視し、無礼にも土足でこの『境界』を越えた。不法侵入者には、無数の矢の洗礼こそがふさわしい!」


一族の精鋭たちが、水と土の魔力を込めた「追尾矢」を一斉に放ちました。矢は空中で分裂し、逃げ場のない弾幕となってタケシに殺到します。 「我らの一族が守る境界は、神であっても避けることはできん! 矢の錆となるがいい!」


タケシは、迫りくる矢の雨を欠伸をしながら見上げ、手にした酒瓶を軽く振りました。 「……境界だの監視だの、そんなに線を引くから疲れるんだよ。斥候の仕事ってのは、敵を見つけることじゃねえ。……敵が『来たくなくなるような場所』を作ることだ」


全属性・空間曲率の干渉リフレクト・バレット タケシが指先で円を描くと、殺到していた無数の矢はタケシに触れる直前、空間そのものが「反転」したかのように軌道を変えました。


矢の果実化トランス・アロー 「危ねえもんは、食えるもんに変えちまえ」 全属性の「純化ピュリファイ」を受けた矢は、地面に突き刺さる瞬間に水と土の魔力を栄養分として、一瞬で「最高級のブドウ」の実をたわわに実らせる苗木へと変貌しました。


「……な、何だと!? 我が一族が誇る『必中の追尾矢』が、ただの……ただの果樹園の苗木になったというのか!?」


長老たちは、自分たちが必死に守ってきた「境界」が、タケシの手で「豊かな実り」へと書き換えられたことに、弓を落として呆然としました。


ガブリエラは、驚愕する父の前で、タケシから教わった「斥候の真髄」を披露しました。 「お父様、線を引いて敵を待つのはもう終わりです。……タケシ様に教わったのは、世界を遮るのではなく、豊かさで繋ぎ、誰もが訪れたくなる平和な庭を築くための力ですわ」


彼女が弓を引くと、矢は放たれず、代わりに全属性の光が境界線に沿って走り、荒れ果てた荒野を瞬時に肥沃な大地へと変えていきました。


その夜、殺伐としていた監視砦は、王国一の「ブドウ収穫祭」の会場へと変わりました。 タケシが矢から変えたブドウを一瞬で醸造し、水属性で清めた極上のワインとして提供。


「……うう、美味い。境界を守るために殺気立っていた自分が恥ずかしい。タケシ殿、貴方は我らに、戦わずに守るという『真の番人』の姿を教えてくれた!」


タケシは、ガブリエラに甲斐甲斐しくブドウを口に運ばれながら、満足げに喉を鳴らしました。 「……フン、不法侵入がどうとか言うなら、この酒を全部没収してやってもいいんだぞ。ガブリエラ、このワイン、俺の店の『公式銘柄』にするから、しっかり生産しとけよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方の安らぎの地を守るために、この弓を捧げますわ」





ガブリエラの「境界の監視砦」を豊かな果樹園へと変えたタケシ。次に彼の行く手を(物理的に)塞いだのは、土と火の属性を併せ持つ斥候、セシリアでした。彼女の実家は、王国の地下資源を管理し、採掘を一手に引き受ける「地底の鑑定士」の一族です 。


「タケシ様……。私の実家、『マウンテン・コア家』へお越しください。我が一族は地下の鉱石こそが世界の宝だと信じて疑わない石の亡者たち。……父は、貴方の全属性魔力を『未知の新種鉱石』として採掘し、標本にしようと企んでいるのですわ」


そこは巨大な岩山の内部をくり抜いた、黄金と宝石が剥き出しになった豪奢な、しかし息苦しい都市でした。セシリアの父である当主は、鑑定用の魔導レンズを覗き込みながら、ギラついた目でタケシを舐めるように見ました。


「セシリア、よくやった! この男から溢れる魔力……これこそが伝説の『全属性原石』か! さあ、大人しく地下深くの特製ケージに入れ。貴様の魔力が結晶化するまで、何百年でも観察してやるぞ!」


当主が合図を送ると、周囲の岩壁から土と火の魔力が噴出し、タケシを押し潰しながら熱で焼き固める「地層圧縮結界」が展開されました。 「逃げられんぞ! 貴様の存在そのものを、我が一族の最高傑作として『宝石』に変えてくれる!」


タケシは、迫りくる岩の壁に背中を預け、手近な「ただの石ころ」を拾い上げました。 「……標本だの結晶化だの、石に縛られすぎて目が曇ってんぞ。土と火の属性ってのは、掘り出すためにあるんじゃねえ。……こうやって、価値を『煮詰める』ためにあるんだ」


全属性・分子再構成ダイヤモンド・メーカー タケシが手元の石ころに指を触れると、全属性の圧倒的な圧力と熱量が一点に集中。ただの石は一瞬で、当主が一生かけても拝めないほどの純度を誇る「全属性ダイヤモンド」へと変貌しました。


価値の逆転ピュリファイ・マイニング 「こんなもん、酒一杯の価値もありゃしねえ」 タケシがそのダイヤモンドを無造作に放り投げると、結界の基点となっていた高価な魔石が全属性の光に当てられ、逆に「ただの柔らかい粘土」へと退化しました。


「……な、何だと!? 我が一族の至宝が……ただの泥に!? そして、その辺の石ころが、神の涙のような輝きを放つだと……!?」


当主は、自分たちが一生を捧げてきた「採掘」という行為が、タケシの指先一つで無意味化したことに絶望し、地面に這いつくばりました。


セシリアは、呆然とする父の前で、タケシから教わった「土の真髄」を披露しました。 「お父様、価値は地中にあるのではなく、それをどう磨き、誰のために使うかにあります。……タケシ様に教わったのは、石を宝にするのではなく、人々の心を宝物のように輝かせる理ですわ」


彼女が弓を引くと、矢は放たれず、代わりに地下都市の薄暗い岩壁が次々と宝石のように輝き出し、地底に太陽のような温かな光をもたらしました。


その夜、欲望が渦巻いていた採掘都市は、王国一「輝かしい」晩餐会場へと変わりました。 タケシが地熱を利用して全属性でじっくり蒸し上げた、黄金のように輝く根菜料理と、水晶のような透明度の酒を提供。


「……うう、美味い。石を溜め込むことしか考えていなかった。この酒の透明度こそが、真の宝石だったのか。タケシ殿、貴方は我らに『目に見えぬ価値』を教えてくれた!」


タケシは、セシリアに高価な宝石を(つまみの皿代わりに)差し出されながら、満足げに喉を鳴らしました。 「……フン、石より肉の方が美味い。セシリア、この地下の熱源、俺の店の『床暖房』として繋いどけよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方の歩む道を、どの宝石よりも美しく照らし続けますわ」




セシリアの「地下都市」に真の輝きをもたらしたタケシ。次に彼を誘ったのは、水と風の属性を併せ持つ斥候、オルテンシアでした 。彼女の実家は、情報を「風と水」に乗せて操り、常に深い霧の中に身を隠す「幻影の隠れ里」の一族です。


「タケシ様……。私の実家、『ミスト・ヴェール家』へ。我が一族は情報の非対称性こそが権力だと信じ、真実を霧の中に隠すことを生業としています。……父たちは、貴方の『全属性』という真実さえも、都合のいい幻影で塗りつぶそうとしているのですわ」


そこは、常に濃い霧が立ち込め、上下左右の感覚さえも狂わせる幻想的な、しかし人を拒絶する里でした。オルテンシアの父である長老は、姿を見せることなく、霧の奥から何十人もの声が重なったような不気味な声で語りかけました。


「オルテンシア、禁忌を犯して異邦人を招き入れたか。……だが、この里の霧は迷える者の心を写す鏡。真実を持たぬ者が歩けば、永遠に自分の幻影と戦い続けることになるぞ」


霧が濃くなり、タケシの周囲には「全属性を操るタケシ自身の幻影」が無数に現れました。それらはタケシと全く同じ動きで酒を飲み、全く同じ威圧感を放ちます。 「どれが本物か、あるいは全てが偽りか。……自らの虚像に呑まれ、霧の一部となるがいい!」


タケシは、目の前で自分の真似をして酒を飲む幻影を冷めた目で見つめ、手にした酒瓶を逆さまにしました。 「……幻影だの鏡だの、暇人の遊びだな。水と風の属性ってのは、人を惑わすためにあるんじゃねえ。……こうやって、濁った世界を『洗い流す』ためにあるんだ」


全属性・絶対透明化クリア・バレット タケシが足元の霧に指を触れると、全属性の「純化ピュリファイ」が里全体に波及。人を惑わせていた霧は一瞬にして「ただの清らかな水蒸気」へと変わり、視界を遮る不純物が完全に消失しました。


虚像の霧散デリート・イリュージョン 「自分と酒を飲むのは、鏡だけで十分だ」 タケシが軽く息を吹きかけると、無数にいた幻影は実体を維持できなくなり、ただの「美味しい空気」となって霧散しました。


「……な、何だと!? 我が一族が数百年かけて築き上げた『絶対不可侵の霧』が、ただの……ただの透き通った空気にされたというのか!?」


姿を現さざるを得なくなった長老は、自分たちの「秘匿」という盾が、タケシの圧倒的な「清廉さ」の前に霧散したことに愕然としました。


オルテンシアは、困惑する父の前で、タケシから教わった「水と風の真髄」を披露しました。 「お父様、情報を隠すことは、自らも暗闇に閉じ込めることと同じです。……タケシ様に教わったのは、嘘偽りのない真実を風に乗せ、世界を清らかに潤すための力ですわ」


彼女が弓を引くと、放たれた光の矢が里の空を突き抜け、何世紀も日光が届かなかった里に、澄み渡る青空と暖かな陽光をもたらしました。


その夜、陰湿な空気に包まれていた里は、王国一「視界と心の晴れやかな」晩餐会場へと変わりました。 タケシが里の清流を全属性でさらに磨き上げ、幻術に使われていた香草を絶品のスモーク料理へと変えて提供。


「……うう、美味い。霧の中で疑心暗鬼に陥っていた。こんなに澄んだ酒と、隠し事のない語らいが、これほど心地よいとは。タケシ殿、貴方は我らに『誠実という名の安らぎ』を教えてくれた!」


タケシは、オルテンシアに霧のように柔らかな布で顔を拭われながら、満足げに喉を鳴らしました。 「……フン、隠し味は料理だけで十分だ。オルテンシア、この里の湧き水、俺の店の『水割り専用』として定期便を出させろよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方の瞳が曇らぬよう、常に澄み渡る風となって寄り添いますわ」





オルテンシアの「幻影の里」を晴れやかな青空の下に引きずり出したタケシ。次に彼を待っていたのは、水と火という相反する属性を器用に使い分ける斥候、シャルロッテでした。彼女の実家は、あらゆる物質を煮込み、掛け合わせることで真理を追究する、風変わりな「錬金術師」の家系です 。


「タケシ様……。私の実家、『ミキシング・ポット家』へご案内します。我が家は相反するエネルギーの衝突こそが進化の鍵だと信じる研究者ばかり。……父は、全属性を持つ貴方を『究極の触媒』として、巨大な錬金釜の中に放り込もうと虎視眈々と狙っておりますの」


そこは、常に色とりどりの煙が上がり、得体の知れない液体が試験管の中で脈動する、狂気と好奇心が混ざり合った工房でした。シャルロッテの父である工房長は、ゴーグルを光らせながら、タケシを素材エナジー・ソースとして品定めするように見つめました。


「シャルロッテ、素晴らしい素材を連れてきたな! 水と火、光と闇……全属性が安定して同居しているなど、最高の実験材料だ! さあ、大人しくこの『賢者の大釜』に入れ。お前の魔力を抽出して、世界を変える究極のポーションを作ってやるぞ!」


工房長がスイッチを入れると、大釜から水と火の魔力が激しく衝突し、エネルギーの暴走を引き起こす「相克結界」が展開されました。 「逃げられんぞ! 衝突するエネルギーの渦の中で、お前の全属性は分解され、純粋な魔力液へと還元されるのだ!」


タケシは、ぐらぐらと煮え立つ釜の前に立ち、漂ってくる薬品臭に顔をしかめました。 「……合成だの抽出だの、実験ばっかりやってるから鼻が馬鹿になるんだよ。水と火の属性ってのは、殺し合わせるためにあるんじゃねえ。……こうやって、最高の『出汁スープ』を作るためにあるんだ」


全属性・熱対流の調律アルケミー・クッキング タケシが煮え立つ大釜に指を一突きすると、暴走していたエネルギーは一瞬で「全属性」の調和の下に服従。破壊的な衝撃は、素材の旨味を極限まで引き出す完璧な「対流」へと書き換えられました。


究極のポーション(ソムリエ・スープ) 「世界を変えるポーションだぁ? 腹が膨れねえもんに価値はねえよ」 タケシは全属性の魔力で釜の中の薬品を全て「純化ピュリファイ」し、代わりにシャルロッテが隠し持っていた食材を投入。火属性で煮込み、水属性で灰汁を抜き、土属性でコクを出し……一瞬にして、飲んだ者の五感を覚醒させる「究極の黄金スープ」を作り上げました。


「……な、何だと!? 我が一族の悲願であった『賢者の石』への道が、ただの……ただの、たまらなく美味そうなスープにされたというのか!?」


工房長は、自分の人生を懸けた研究成果が、タケシの指先一つで「極上の料理」へと転換されたことに驚愕し、スープの香りに誘われて正気に戻りました。


シャルロッテは、呆然とする父の前で、タケシから教わった「錬金の真髄」を披露しました。 「お父様、実験室の中で属性を戦わせるのはもう終わりです。……タケシ様に教わったのは、相反する力を調和させ、人々に生きる力と喜びを与える、幸せの処方箋ですわ」


彼女が弓を引くと、放たれた矢は工房の淀んだ空気を浄化し、毒々しかった薬品たちを「身体に良くて美味しい調味料」へと変えていきました。


その夜、怪しい煙が立ち込めていた工房は、王国一「香ばしい」レストランへと変わりました。 タケシが大釜で作り上げたスープをベースに、水と火を完璧に制御したフルコースを提供。


「……うう、美味い。真理を追い求めるあまり、舌があることを忘れていた。このスープの一滴こそが、私が探し求めていた『真の賢者の石』だったのか。タケシ殿、貴方は我らに『完成された味』という真理を教えてくれた!」


タケシは、シャルロッテに(実験器具ではない)綺麗なグラスで酒を注がれながら、満足げに喉を鳴らしました。 「……フン、混ぜるなら毒じゃなくて美味いもんを混ぜろ。シャルロッテ、この工房のフラスコ、全部『酒の熟成容器』として再利用させろよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方との愛を永遠に抽出し続けますわ」






シャルロッテの「究極のスープ」で錬金術師たちの鼻を明かしたタケシ。次に彼の行く末を、湿った風と共に導いたのは、水と土の属性を併せ持つ斥候、アレクサンドラでした。彼女の実家は、王国の最果てにある広大な湿地帯を守護し、泥を自在に操る「泥濘の守護者」の一族です。


「タケシ様……私の実家、『ミレニアム・マッド家』へ。我が一族は泥こそが全ての生命の源であり、形あるものはいつか泥に還るべきだと信じています。……父は、貴方の完璧な『全属性』を、泥の中に沈めて永遠に保存される『最高の彫像』にしようと待ち構えておりますの」


そこは、足を踏み入れるたびに底なしの泥が這い上がってくるような、不気味で生命力に溢れた湿地帯でした。アレクサンドラの父である長老は、全身に泥の鎧を纏い、泥の中から静かに浮き上がってきました。


「アレクサンドラ、最高の供物を連れてきたな。……全属性の輝き、泥の中に沈めれば永遠に色褪せることはない。さあ、その身を大地の抱擁(泥)に預け、至高の芸術品となるがいい!」


長老が手をかざすと、タケシの足元が巨大な渦を巻く底なし沼へと変わり、同時に四方から意志を持った泥の腕がタケシを絡め取ろうとしました。 「抗うな。泥に還ることこそが、不純なこの世からの唯一の救済なのだ!」


タケシは、泥が靴を汚すのを不快そうに眺め、手にした酒瓶を高く掲げました。 「……泥に還るだぁ? 死んだ後のことは死んでから考えろ。水と土の属性ってのは、人を飲み込むためにあるんじゃねえ。……こうやって、最高の『泥酔リラックス』を届けるためにあるんだ」


全属性・土壌成分の純化スパ・ピュリファイ タケシが泥の中に指を一突きすると、全属性の「純化」が波及。人を飲み込もうとしていたドロドロの泥は、一瞬にして老廃物を除去し、肌を活性化させる「最高級の美容クレイパック」と、心地よい温度の「泥温泉」へと書き換えられました。


彫像化の拒絶デトックス・バレット 「固まって動けねえのは、肩こりだけで十分だ」 タケシが魔力を流すと、長老を覆っていた重苦しい泥の鎧は、全属性の力で極上のマッサージオイルへと変質。長老の凝り固まった身体と精神を、強制的に「脱力」させました。


「……な、何だと!? 我が一族が数百年守り続けてきた『死の泥濘』が、ただの……ただの、とてつもなく気持ちいい温泉にされたというのか!?」


長老は、自分の人生を懸けた「泥の芸術」が、タケシの手で「癒やしの源」へと転換されたことに驚愕し、あまりの気持ちよさに泥温泉の中で完全に骨抜きにされました。


アレクサンドラは、温泉に浸かってとろけている父の前で、タケシから教わった「水と土の真髄」を披露しました。 「お父様、泥は人を閉じ込める墓場ではありません。……タケシ様に教わったのは、汚れを落とし、新しい命を育むための、潤いに満ちた大地ですわ」


彼女が弓を引くと、放たれた矢は湿地帯の淀んだ空気を浄化し、毒々しかった泥沼を、清らかな水が流れる美しい水郷地帯へと変えていきました。


その夜、重苦しい静寂に包まれていた湿地帯は、王国一の「美容スパ&リゾート」へと変貌しました。 タケシが泥温泉で蒸し上げた絶品のハスの実料理と、水属性で極限まで清めた銘酒を提供。


「……うう、美味い。そして、身体が軽い。泥に沈めることばかり考えて、泥に癒やされることを忘れていた。タケシ殿、貴方は我らに『真の再生』を教えてくれた!」


タケシは、アレクサンドラに泥パックを塗られながら(肌がツヤツヤになる)、満足げに喉を鳴らしました。 「……フン、泥臭い酒は御免だが、この温泉上がりの一杯は悪くねえ。アレクサンドラ、この温泉、俺の店の『専属保養施設』として整備しとけよ」


「はい、タケシ様。……これからは、貴方の心と身体を、誰よりも深く潤し続けますわ」


「……ふう。20人分、ようやく終わったか」 タケシが最後の湿地帯を後にすると、そこにはアンジェリカを筆頭に、実家を浄化された20人の美女騎士たちが勢揃いしていました。


彼女たちの瞳には、もはや家門の重圧や属性の偏見はなく、ただ一人の男への深い信頼と愛が宿っていました。


「タケシ、貴殿のおかげで、我ら『紅蓮と聖盾騎士隊』は真の意味で一つになれた。……さあ、王都へ戻ろう。貴殿の店で、最高の祝杯をあげるために!」


「……やれやれ、店が壊れるほどの騒ぎになりそうだな。だが、たまには賑やかなのも悪くねえ。……行くか」


タケシが指を鳴らすと、21人の影は「縮地」の閃光と共に、夕焼けの王都へと消えていきました。


物語の幕間 タケシの店では、20人の美女たちがそれぞれの実家から持ち帰った「最高級の酒と食材」が並び、全属性の魔力が織りなす、この世で最も贅沢で騒がしい宴が始まろうとしています。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ