第6章:美しき「盾」の防壁:ハニートラップを砕け
アンジェリカによる苛烈な選別を生き残った若手魔導師たちは、期待と不安を胸に王宮訓練場へと集められました。彼らは王都でも指折りの秀才たちでしたが、そこで目にしたのは、彼らの魔導常識を根底から破壊する光景でした。
合同訓練:次元の違い
「いい、新人の皆。魔法っていうのは、呪文を唱える『儀式』じゃないの。イメージを『弾丸』にして叩き込むことよ」
講師として前に出たのは、ガブリエラでした。彼女の合図で、20名の乙女騎士たちが訓練を開始します。
衝撃の「無詠唱・多重展開」 若手魔導師たちが数分かけて構築する「火炎球」を、カタリナやクリスティーナたちは瞬き一つせず、指先から数百発の「全属性バレット」として乱射します。 「詠唱がない……!? それに、火と水が同時に、しかも反発せずに飛んでいるなんて!」 魔導師たちは、物理法則を無視したその光景に腰を抜かしました。
「縮地」による回避不能の恐怖 模擬戦が始まると、若手魔導師たちの放つ防御魔法は一切役に立ちませんでした。アンジェリカたちは「縮地」で空間を跳び、魔導師たちが杖を振るよりも早く、その喉元に「寸止め」の指先を突き立てます。 「……距離という概念が、彼女たちには存在しないのか」
究極の防御:空間遮断 魔導師たちが一斉に放った最強の攻撃魔法は、マーガレットが展開した「1メートルの絶対領域」に触れた瞬間、霧のように霧散するか、あるいはアイテムボックスの応用で「どこか別の空間」へ転送されて消えてしまいました。
タケシの「特別指導」
呆然と立ち尽くす魔導師たちの前に、酒瓶を片手にしたタケシがふらりと現れました。
「おい、頭でっかちの秀才ども。お前らの魔法は『綺麗』だが、『重み』がねえ。魔力の密度を上げる練習からやり直せ」
タケシは地面に落ちていた小枝を拾うと、それに微弱な「全属性」を纏わせました。 「見てろ。こうやって六属性を互いに反転させて、一点に凝縮するんだ。……これが『全属性ドリル・バレット』だ」
タケシが軽く枝を振ると、訓練場の強化魔法障壁が、紙のように易々と貫かれました。
「「「枝一本で、最上位障壁を……!?」」」
魔導師たちの「開眼」
この日、若手魔導師たちは自分たちが学んできた「魔導学」がいかに浅いものであったかを痛感しました。と同時に、20名の乙女騎士たちへの畏怖は、いつしか「自分たちもあの領域へ行きたい」という強烈な憧れへと変わっていきました。
アンジェリカは、目を輝かせ始めた若手たちを見渡し、満足げに頷きました。 「絶望する必要はない。貴殿らには、タケシ殿という最高の『理外の師』がついている。……さあ、バレットの基礎訓練1万回だ。始め!」
訓練後の賑わい
訓練が終わる頃には、魔導師たちはフラフラになりながらも、アンジェリカたちの後を追ってスラムの炊き出しへと向かいました。
「ガブリエラさん! さっきの光の屈折、もう一度教えてください!」 「マーガレット様、アイテムボックスの容量を増やすコツは……!」
20名の乙女たちは、後輩たちに慕われながらも、視線は常に「今日のタケシの夕飯メニュー」を気にしてソワソワしていました。
王都が魔法革命と美食に沸く中、隣国の軍事大国「バルガ帝国」から、平和を装った「親善大使」の一団が派遣されてきました。
彼らの名目は「新王制の祝賀」ですが、その実態は帝国の誇る精鋭魔導スパイたち。目的は、王国の軍事バランスを一夜にして崩した「謎の全属性魔法」の術式奪取、そしてその中心人物である「タケシ」の排除または連行でした。
帝国大使として現れたのは、優雅な物腰の裏に鋭い眼光を隠した男、ゼノス。彼は王宮の広間で、国王と王妃、そしてその横に控えるアンジェリカたちを値踏みするように眺めました。
「素晴らしい。王都の空気がこれほど清浄とは……。我が帝国の魔導師たちも、ぜひ貴国の『新しい魔法』を拝見したいものですな」
ゼノスが合図を送ると、親善大使に同行していた「護衛」という名目の魔導師たちが、隠し持っていた魔力測定器を密かに作動させました。しかし、彼らが測定器を見た瞬間、その顔は驚愕で引きつりました。
異常な測定値 「(……馬鹿な、故障か!? 控えている20名の騎士全員が、帝国の宮廷魔導師長を超える魔力密度を……しかも、全属性の反応が同時に出ているだと!?)」
スパイ活動 vs 20名の乙女騎士
その夜、ゼノスたちは王宮内で隠密行動を開始しました。ターゲットは、タケシが居座る訓練場横の小屋。
しかし、彼らが一歩踏み出すたびに、それは「最強の乙女たち」によるお遊びの場となりました。
ガブリエラの「おもてなし」 影に潜んで移動していた帝国のスパイに対し、ガブリエラが背後から音もなく現れ、肩を叩きました。 「あら、夜のお散歩? 迷子にならないように、私の『光バレット』で足元を照らしてあげるわ」 ガブリエラの放つ光は、隠密魔法を強制解除する「ピュリフィケーション」の塊。スパイは一瞬で姿を晒され、その眩しさに目を焼かれました。
マーガレットの「物理的封鎖」 タケシの小屋へ続く廊下を進もうとしたゼノスたちの前で、突如として空間が「折れ曲がり」ました。 「ここから先はタケシ殿の安眠妨害禁止区域よ。アイテムボックスの中に入れてあげましょうか?」 マーガレットが微笑みながら空間の切れ目(ブラックホールのような揺らぎ)を見せると、帝国最強のスパイたちは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなりました。
騒ぎを聞きつけたのか、タケシが欠伸をしながら小屋から出てきました。手には、夜食の残りの串焼きを持っています。
「おい、アンジェリカ。……夜中に『不味い酒の匂い』を撒き散らしてる連中は何だ? 隣国の親善大使ってのは、泥棒の別名か?」
アンジェリカは、ゼノスを「縮地」で一瞬にして地面に組み伏せながら、タケシに応えました。 「申し訳ありません、タケシ殿。この者たちは、貴殿の技術を盗もうとした不届き者です。今すぐ『全属性』の味を叩き込んで追放します」
ゼノスは地面に這いつくばりながら、目の前のタケシを見上げました。 「……貴様が……貴様が理を壊した男か……! 帝国が黙ってはおらんぞ!」
タケシは串焼きの肉を一口齧ると、ゼノスの口にそれを無理やり突っ込みました。 「うるせえ。黙ってこれを食え。……帝国の皇帝だか何だか知らねえが、こんな美味いもん食ったことねえだろ? 盗むなら術式じゃなくて、この『味』を盗めるようになってから来い」
帝国のスパイ騒動が一段落し、魔導師たちがタケシの理論に心酔し始めたのを見て、他の騎士隊の若手たちも黙っていられなくなりました。
「魔導師の連中だけずるい! 我ら騎士こそ、タケシ殿の『物理的な強さ』を継承すべきだ!」
こうして、王都全土から選りすぐられた精鋭騎士たちが、タケシに弟子入りを志願。20名の乙女騎士たちという「直弟子」に加え、新たに**「騎士候補生(二次弟子)」**たちが加わることになりました。
タケシは、やる気だけは空回りしている屈強な男たちを前に、相変わらず不機嫌そうに酒瓶を置きました。
「いいか、お前ら。剣を振るだけならそこらの案山子でもできる。全属性ってのは、自分の『体』そのものを属性の器にすることだ」
火と風の「内燃加速」 「肺の中に風を溜め、血流を火の属性で沸騰させろ。心臓の鼓動をバレットの反動のように扱え」 タケシが教えたのは、魔法を外に放つのではなく、体内で爆発させて身体能力を極限まで引き上げる技術です。
土と光の「金剛不壊」 「皮膚の密度を土の理で固定し、光の屈折で敵の刃を滑らせろ。盾を持つ前に、自分の腕を盾にしろ」
タケシ一人では手が回らないため、アンジェリカら20名の乙女騎士たちが、新人騎士たちの「教育係」に任命されました。しかし、これが新人たちにとっては、地獄以上の試練となりました。
「甘いわよ! 縮地を使う時は、空間の歪みに自分の意志を乗せなさい!」 ガブリエラが、新人の背後から一瞬で現れ、木刀でその尻を叩きます。
「盾の重さに頼るな。アイテムボックスの入り口を盾の表面に展開して、攻撃を異次元に逃がすのよ!」 マーガレットが、巨大な岩を新人の盾に向かって投げつけながら叫びます。
新人騎士たちは、憧れの「戦乙女」たちに扱かれる悦びと、死の恐怖の間で白目を剥きながら、急速に「全属性の戦士」へと成長していきました。
訓練場の右側では魔導師がバレットの精密射撃を、左側では騎士が身体強化バレットの格闘戦を訓練する。タケシを中心に、王都の軍事力はもはや「魔法」と「武術」の境界が消えた、未知の集団へと進化しました。
タケシは、それを見守りながら王妃エレーヌにボソリと漏らしました。
「……ま、これだけ揃えば、隣国の皇帝が龍に乗って攻めてきても、返り討ちにして晩飯の食材にできるだろ」
王妃は優雅に微笑み、タケシに新しい酒を注ぎました。 「ええ。タケシ殿、おかげでこの国の軍事予算が、すべて『食費と酒代』に回せるようになりそうですわ」
バルガ帝国は、スパイの報告を受け「正面衝突は国家の滅亡を招く」と確信しました。そこで彼らが放った次なる策は、古今東西、英雄を骨抜きにしてきた禁じ手――**「ハニートラップ」**でした。
帝国が誇る絶世の美女、公女イザベラ。その美貌は「一度微笑めば騎士団が降伏し、二度微笑めば国が傾く」と謳われるほど。彼女に、帝国の秘宝である幻の銘酒「龍の涙」を携えさせ、親善の使者としてタケシの元へ送り込んだのです。
王宮の謁見の間に現れたイザベラは、透き通るような白い肌と、魔惑的な香りを漂わせ、優雅に膝をつきました。
「タケシ様……。不躾ながら、貴方様のような真の英雄に、この銘酒を捧げたく参りました。よろしければ、私が注がせていただきたく……」
彼女が伏せ目がちに熱い視線を送ったその時、広間の空気がマイナス百度まで凍りつきました。
イザベラの背後に立つのは、タケシを囲む20名の全属性騎士たち。 帝国側は気づいていませんでした。タケシの「バレット」による肉体改造と、全属性の魔力が常に肌を活性化させている彼女たちが、今や**世界中のどんな美女をも凌駕する「美の極致」**に到達していることに。
アンジェリカの圧倒的威圧 「……ほう。我が国の特別教官に、酒を注ぎたいと?」 アンジェリカの肌は光属性の純化により、陶器よりも滑らかで神々しく輝いています。彼女がただ横に立つだけで、イザベラの美貌は「ただの化粧」に見えるほど色あせました。
ガブリエラの魔惑的な美 「お酒なら足りてるわ。私の『光の屈折』で、もっと美味しい色に見せてあげましょうか?」 ガブリエラの瞳は全属性の魔力が混ざり合い、見る者を吸い込む深淵のような美しさを放っています。
マーガレットの包容力 「帝国の銘酒? ……タケシ殿は、もっと『芯のある』ものを好みますのよ」 健康美に溢れた彼女たちの立ち姿は、帝国の公女が演出する「弱々しい美しさ」を、文字通り一蹴する力強さがありました。
イザベラは、自分より遥かに美しく、かつ強大な魔力を放つ20人の美女たちに囲まれ、蛇に睨まれた蛙のように震え上がりました。もはや誘惑どころか、視線を合わせることすらできません。
タケシは差し出された「幻の銘酒」を、無造作にひったくってラッパ飲みしました。
「……ふむ。酒の味は悪くねえが、不味い企みの匂いが混ざってんな。おい、アンジェリカ。この女、アイテムボックスに入れて帝国に送り返せ。ついでに、うちのガブリエラの方が百倍綺麗だって、皇帝に伝えとけ」
「ハッ! 喜んで、タケシ殿!」
ガブリエラは顔を真っ赤にして喜び、「縮地」でイザベラの背後に回ると、一瞬で彼女を「空間」の中にパッキングしてしまいました。
数日後、帝国の玉座の間に、空間から「吐き出された」イザベラと、タケシからの伝言が届きました。
『美人も酒も、うちの騎士団で間に合ってる。次はもっと美味い「つまみ」でも持ってこい』
皇帝は膝をつき、絶望しました。 「……美貌でも、酒でも、魔法でも勝てぬというのか。あの国は一体、何を目指しているのだ……」
一方、王都では「ガブリエラの方が百倍綺麗」と言われた本人が、あまりの嬉しさに魔力を暴走させ、王宮の庭園を一面の「クリスタル・フラワー(氷バレット製)」に変えてしまうのでした。
王都の内政が整い、全属性の理を学び始めた「新・魔導師団」と「騎士候補生」たち。彼らにとっての最終試験として、タケシは王都周辺の街道を荒らす大規模な盗賊団、通称「黒い牙」の掃討作戦を命じました。
もちろん、監視役としてアンジェリカたち20名の「姉弟子」も同行しますが、今回の主役はあくまで新人たちです。
犯罪者狩り:全属性の実戦
「いいか、新人ども。犯罪者ってのは、社会の『不純物』だ。タケシ殿に教わった通り、根こそぎ『純化』してこい」
アンジェリカの冷徹な号令と共に、新人たちの初陣が始まりました。
魔導師弟子の「広域制圧バレット」 かつての魔導師なら数分かかる広域魔法を、若手たちは「無詠唱」で展開。 「『全属性・重力バレット』、射出!」 盗賊のアジトに放たれた一撃は、土の重圧と風の吸引を組み合わせたもの。盗賊たちは戦うどころか、地面に顔を押し付けられ、指一本動かせなくなりました。
騎士弟子の「身体強化・突撃」 「身体強化バレット、加速!」 タケシ直伝の内燃魔法で身体能力を数倍に引き上げた新人騎士たちは、盗賊の放つ矢を「光の屈折」で受け流しながら、縮地に近い速度で肉薄。盾の一撃で、アジトの頑丈な門を粉砕しました。
姉弟子たちの「異次元」のデモンストレーション
新人たちが苦戦しそうになると、監視していたガブリエラたちが「少しだけ」手本を見せます。
「ちょっと、そこ。火力が足りないわよ。……見てなさい」 ガブリエラが指先から放った極小の「光バレット」は、盗賊が隠し持っていた強力な魔導兵器を一瞬で原子レベルに分解(純化)し、無力化しました。
「アイテムボックスはこう使うのよ」 マーガレットは、逃げようとする盗賊たちの足元の空間を「収納」の入り口に繋げました。盗賊たちが次々と異空間へと落下し、そのまま王都の地下牢へ「直送」されていく光景に、新人たちは戦慄しました。
タケシの「事後評価」
犯罪者狩りは、一人の犠牲者も出さず、わずか数時間で終了。盗賊団「黒い牙」は、歴史からその名を消しました。
王都に戻った一行を、タケシは不機嫌そうに迎えました。 「……おう、終わったか。新人の動き、まだ無駄が多いな。特に魔導師、バレットの回転が遅い。あと騎士、縮地の時の踏み込みが甘いから酒がこぼれるんだ」
タケシの基準は常に「酒をこぼさないほど精密か」でした。新人たちは、犯罪者を圧倒した自信をすぐに打ち砕かれ、再びタケシの足元に膝をつきました。
「「「ご指導、ありがとうございます!!」」」
アンジェリカは、タケシから渡された「不純物リスト」を手に、王都の現状を厳しく再点検しました。20名の乙女騎士、そして新たに加わった魔導師と騎士の弟子たちを総動員した結果、驚くべき報告が上がってきました。
以下の項目は、タケシの「全属性魔法」と「合理的暴力」によって、この国からほぼ根絶されました。
魔物・盗賊・略奪者: 新人たちの「バレット」実戦訓練により、国内の脅威は絶滅危惧種となりました。
病・干ばつ: 全員が使える「ピュリフィケーション」と、水・土属性による灌漑、アイテムボックスによる水の運搬で、飢えと病の時代は終わりました。
悪徳貴族・悪徳騎士・不正役人: 王妃エレーヌの指揮下、ガブリエラたちが「情報の非対称性」を魔法(透過・盗聴)で破壊し、汚職の証拠をすべて白日の下に晒しました。現在、彼らは全員スラムの復興現場で土木作業に従事しています。
徴発・重税: 資源がアイテムボックスで効率化され、国庫が潤ったため、王妃の鶴の一言で減税が断行されました。
しかし、アンジェリカはタケシの前で、苦い顔をして報告を続けました。 「タケシ殿……物理的な破壊だけでは、どうしても消しきれない澱みがまだ残っています」
負債の連鎖(奴隷制度の残滓) 法で禁じても、闇で行われる人身売買や、借金による縛り付けが地方の商人間で続いています。「所有権」という概念に隠れたこの闇は、物理的なバレットだけでは撃ち抜けません。
宗教的狂信 「全属性」を神への冒涜と見なす、旧教会の狂信者たちが地下へ潜りました。彼らは「奇跡」を独占できなくなったことに逆上し、タケシを「魔王」と呼んで民衆を扇動しようとしています。
差別の構造と「見捨てられた土地」 王都は潤いましたが、遠方の辺境や、かつて迫害されていた種族(亜人など)への偏見は、人々の心の中に深くこびりついています。
情報の非対称性(上位互換) 今度は「魔法を使える者」と「使えない者」の間に、新たな格差が生まれようとしています。
「……これらは、肉を焼いて配るだけでは解決しない問題です。ですが、貴殿に教わった『純化』の理は、心にも適用できるはず。タケシ殿、次は……この国の『構造そのもの』を書き換える許可をいただけますか?」
タケシは、余った肉の脂で汚れた指を舐めながら、面倒そうに鼻を鳴らしました。
「……ふん。奴隷だの差別だの、そんなもんがある場所で飲む酒は、後味が悪くていけねえ。アンジェリカ、お前たちがやりたいようにやれ。邪魔する奴がいたら、俺がその『神様』ごと、空間ごと畳んでやるよ」
アンジェリカは、タケシの「全肯定」に、聖女のような、あるいは恋する乙女のような、形容しがたい美しい微笑みを浮かべました。
「了解しました。では……全属性騎士団、出動します。この国に真の『淀み』がない場所など、一箇所も残しません」
アンジェリカの号令と共に、20名の乙女騎士、そして再編された魔導師と騎士の弟子たちが動きました。ターゲットは、地下に潜み「魔王排除」を謳って民衆を惑わす旧教会の狂信者たち。
彼らは「全属性」という真理を拒絶し、既得権益を守るために「神の怒り」を捏造する、この国の最深部の「淀み」です。
狂信者たちは王都の地下深く、古代の遮蔽魔法が施された秘密神殿に逃げ込みました。しかし、タケシ直伝の索敵術の前では、石壁も遮蔽も存在しないに等しいものでした。
多角的空間定義 ガブリエラとオルテンシアが空中で手を合わせ、王都全域に**「風と光の共鳴波」**を放射しました。
因果の追跡 「光の純化」の理を乗せた魔力波は、狂信者たちが放つ「負の感情」や「隠蔽魔力」と反発し、その位置を闇の中に浮かび上がる火のように鮮明に描き出します。
透視と特定 「捕捉完了。地下150メートル、北西の廃教会地下……ネズミが342匹、一匹残らず視えています」
アンジェリカは「縮地」すら超えた**「多層空間転移」**を展開。20名の騎士たちは、狂信者たちの目の前、背後、頭上へと一瞬で、無音に出現しました。
「神の名を騙り、民を飢えさせ、知を独占した罪……その身で購いなさい」
絶対領域での無力化 教祖が「神罰を下せ!」と叫び、禁忌の暗黒魔法を起動しようとした瞬間、マーガレットがその空間ごと**「真空圧縮」**しました。魔力そのものが空間から吸い出され、魔法は発動することなく霧散しました。
全属性の一掃 「光と闇の二重螺旋バレット」が神殿内を吹き抜けました。それは肉体を壊すためではなく、狂信者たちの「魔力回路」と「狂気」を根こそぎ純化するための光。
物理的制裁 抵抗を続ける狂信者の幹部たちには、身体強化バレットを纏った騎士弟子たちの拳が、神速で叩き込まれました。
わずか数分。かつて王国の影を支配していた旧教会の残党は、その根城もろとも、物理的・霊的に「消去」されました。
神殿の跡地には、不吉な祭壇の代わりに、タケシが「面倒くせえからそこに植えとけ」と渡した、四季を問わず果実を実らせる**「全属性の聖樹」**が根を下ろしました。
アンジェリカは、拘束された狂信者たちが「あり得ない……神の光が、なぜ騎士如きに……」と絶望するのを冷ややかに見つめました。
「神が光なのではない。光を正しく、誰かのために使う者が、神の如き業を成すのだ。タケシ殿に教わった、たった一つの真理よ」
報告を聞いたタケシは、新人たちが持ち帰ってきた「教会の隠し酒(100年物)」の栓を抜き、満足げに喉を鳴らしました。
「……おう。ネズミ退治は終わったか。これで少しは、この国の酒の味がスッキリするだろ」
「はい。次は、彼らが独占していた富と情報を、すべて民に返還します」
王都の「淀み」を物理的・政治的に一掃したアンジェリカたちは、ついにこの国の最大の傷跡である「見捨てられた土地」へと目を向けました。
そこはかつての大戦や度重なる魔物の襲撃、そして過酷な気候によって、王国からも、そして神からも見捨てられたと囁かれる極北の荒野。不毛の土壌と、絶望が蔓延する場所です。
「タケシ殿が仰った『あるべき姿』。それをあの不毛の地で体現するわよ」
アンジェリカは、20名の乙女騎士と、志願した新・魔導師、騎士の弟子たちを引き連れ、アイテムボックスに「王都の富と技術」を詰め込んで出発しました。
到着した「見捨てられた土地」は、ひび割れた大地と、死の灰のような砂嵐が吹き荒れる地獄絵図でした。しかし、アンジェリカたちは臆することなく、全属性魔法の真髄を解放しました。
大地の蘇生(土+水+光) マーガレットと土属性の弟子たちが、大地の深層まで「重力バレット」を打ち込み、固まった岩盤を粉砕。そこへヴィクトリアたちが、アイテムボックスに貯蔵していた王宮の聖水を「空間散布」で一気に流し込みます。
気候の定義(風+火+闇) オルテンシアが風の結界で砂嵐を遮断。カタリナが闇の魔力で過剰な太陽光を吸収・調整し、冷え切った大地を火の魔力で内側から温めました。
「純化」による即時緑化 アンジェリカがタケシ直伝の「広域ピュリフィケーション」を放つと、大地に残っていた魔物の瘴気や塩害が瞬時に消滅。数分前まで不毛だった荒野に、鮮やかな緑の芽が吹き出しました。
洞窟や廃屋で怯えていた住人たちは、突如として訪れた「奇跡」に呆然と立ち尽くしました。アンジェリカは彼らの前に立ち、剣ではなく、湯気の立つ料理が乗った皿を差し出しました。
「もう怯える必要はない。私たちは貴方たちを『見捨てられた民』とは呼ばない。今日からここは、王都で最も豊かな『始まりの地』となるわ」
住居の構築: 騎士弟子たちが、土魔法で一晩にして堅牢かつ清潔な石造りの街を建設。
情報の提供: 魔導師たちが、文字の読めない住人たちへ「全属性の基礎(概念)」を直接精神に投影し、情報の格差を解消。
遅れて縮地で現れたタケシは、かつての荒野が見る影もなく緑に包まれているのを見て、鼻を鳴らしました。
「……やりすぎだ。これじゃ王都より住みやすそうじゃねえか。おい、アンジェリカ。この土地の土はミネラルが豊富だ。最高のブドウが育つぞ。……ここに、俺の専用の醸造所を作れ」
アンジェリカは、タケシの「わがまま」の中に、この土地に産業を根付かせ、自立させるための深い知恵があることを見抜いていました。
「了解しました、タケシ殿。……では、この地を『タケシ・エデン』と名付け、世界一の果樹園に育て上げましょう」
「楽園」の噂は、風に乗って瞬く間に国境を越え、暗い檻の中に閉じ込められていた人々の心に火を灯しました。
「あそこに行けば、腹一杯食べられる。あそこに行けば、人間として扱ってもらえる」
その希望を胸に、各地の不法な奴隷キャンプから数千人の人々が、命懸けの大脱走を開始しました。それを追うのは、私兵を雇った悪徳奴隷商人や、彼らと癒着した腐敗貴族の追っ手たちです。
アンジェリカは、ガブリエラ率いる斥候隊を先行させました。
「縮地」による救出 逃げ遅れ、追っ手の馬に追いつかれそうになった親子。その背後に、突然空間が裂けてガブリエラが出現しました。 「怖くないわ。タケシ様が待っている場所へ、案内してあげる」 ガブリエラは指先で空間をなぞり、親子を丸ごと**アイテムボックスの「居住可能層(疑似空間)」**へ一時的に収納。追っ手が剣を振り下ろした時には、そこには虚空しか残っていませんでした。
光の導標 夜の荒野を彷徨う脱走者たちのために、カタリナたちが空高く「ピュリフィケーション・バレット」を打ち上げ、眩い道標を作りました。その光に触れた人々の足の傷は癒え、疲労が消え去っていきました。
数千の脱走者を追い詰め、武器を振るう奴隷商人の私兵団の前に、アンジェリカとマーガレットが立ち塞がりました。
「……人の命を商品と見なすその汚れた思想。この場で『純化』してあげるわ」
空間剥離と武装解除 マーガレットが手を広げると、数千の私兵が持っていた剣や槍が、一瞬で「空間の裂け目」に吸い込まれ、没収されました。
因果の断罪 アンジェリカが放った「光と土の複合バレット」が大地を駆け、追っ手たちの足元だけを泥濘に変え、彼らを身動き取れなくしました。さらに、彼らの記憶にある「奴隷を支配する快感」という淀みに直接魔法を打ち込み、戦意を根こそぎ消去しました。
「貴殿らが奪ってきた財産はすべて没収し、この人々の新しい生活資金とする。……命があるだけ感謝し、スラムの復興現場へ向かいなさい」
エデンの地に辿り着いた元奴隷たちは、目の前に広がる豊かな緑と、待っていた温かい食事に涙しました。
タケシは、巨大な鍋で特製の大麦スープを作っていました。 「おい、並べ並べ。不味い飯の記憶は、このスープで全部洗い流せ。……アンジェリカ、あっちの子供たちの分は少し温めにしとけよ」
タケシのスープを一口飲んだ人々の瞳から、長年の絶望の影が消えていきました。それはまさに、魂の「ピュリフィケーション」でした。




