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シルヴァーナ王国浄化伝  作者: 慈架太子


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第1章:紅蓮と聖盾、壊滅の危機


紅蓮と聖盾騎士隊


夕陽に照らされた城砦の前、白銀の鎧を身に纏った騎士たちが整列しています。彼女たちの鎧は鏡のように磨き上げられ、沈みゆく太陽の光を反射して黄金色に輝いています。


隊列の先頭に立つ団長は、深紅のマントを風になびかせ、鋭くも気高い眼差しで地平線を見つめています。彼女たちが掲げる青地の盾には、勇気の象徴である獅子の紋章が刻まれており、その凛とした佇まいは、美しさと共に不可侵の強さを物語っています。


静寂の中、彼女たちが一斉に剣を捧げる金属音だけが、戦士たちの決意を告げるように響き渡りました。


20人いる


隊長アンジェリカ

副長 マーガレット

隊長補佐 エリザベス

副長補佐 ヴィクトリア


美女騎士団の主要メンバー4名に加え、残りの16名の名前を、騎士団の雰囲気に合わせた気品ある響きの名前で選定しました。


シルヴァーナ王国騎士団所属 第3騎士隊 隊名 紅蓮と聖盾騎士隊


美女騎士団:構成メンバー(20名)

【幹部】


隊長: アンジェリカ 火

副長: マーガレット 土

隊長補佐: エリザベス 風

副長補佐: ヴィクトリア 水


【精鋭隊員(16名)】


剣士

カタリナ     火 遊撃

フランチェスカ  火 遊撃

ジュヌヴィエーヴ 土 遊撃

イザベラ     土 遊撃

クリスティーナ  風 遊撃

ベアトリクス   風 遊撃


エレオノーラ   火 重盾

ロザリンド    火 重盾

アナスタシア   風 重盾

フェリシティ   風 重盾

マリアンヌ    水 重盾


ガブリエラ    水 土 斥候

セシリア     土 火 斥候

オルテンシア   水 風 斥候

シャルロッテ   水 火 斥候

アレクサンドラ  水 土 斥候




シルヴァーナ王国は現在、北方の国境付近で不穏な動きを見せる異民族の侵攻と、国内で囁かれる貴族たちの離反という二重の危機に直面しています。かつての平穏な空気は消え、王都の広場では出撃を待つ兵士たちの軍靴の音が絶えません。


アンジェリカ隊長率いる20名の精鋭に下された現在の任務は、以下の通りです。


国境砦の防衛と奪還 敵軍に包囲された北方の要所「アイアン・ゲート砦」への強行軍および、孤立した守備隊の救出。


王室秘宝の護衛 戦火を避けるため、王都から聖域へと移送されるシルヴァーナ王家伝来の秘宝を、襲撃から守り抜くこと。


反乱勢力の調査(斥候任務) ガブリエラやセシリアら斥候部隊による、貴族領内に潜む内通者の特定と、敵軍の補給路の断絶。


夕陽が沈み、城砦が影に包まれる中、アンジェリカが剣を鞘に収めました。 「紅蓮の情熱を胸に、聖なる盾としてこの国を護る。全員、直ちに出陣の準備を!」





アンジェリカ隊長は、城砦の石畳の上に一歩踏み出し、整列した19名の部下たちを力強い眼差しで見渡しました。深紅のマントが夜風をはらんで音を立てます。


「紅蓮と聖盾騎士隊、皆に告げる! 」


「我らがシルヴァーナ王国は今、北方の牙と内なる裏切りの狭間で揺れている。だが案ずるな。磨き上げられたその白銀の鎧は、絶望を跳ね返す希望の盾だ。 」


「副長マーガレット、副長補佐ヴィクトリア。お前たちは重盾を構える槍使い5名を率い、アイアン・ゲート砦へ直行せよ。敵の矢雨をすべてその盾で受け流し、砦の門を死守するのだ。 」


「隊長補佐エリザベス。剣士6名を率い、敵の包囲網を切り裂け。風の如き速さで敵の側面を叩き、混乱を巻き起こす。遊撃の真髄、見せつけてやれ! 」


「斥候の5名、ガブリエラ、アレクサンドラを筆頭に散れ。夜闇に紛れ、敵の補給路と内通者の尻尾を掴め。我らの目は決して欺けぬことを、闇に潜む鼠どもに教え込むのだ。 」


「我らは王国の紅き炎、そして何者にも穿たれぬ聖なる盾。 死を恐れるな、背後には守るべき民がいる。シルヴァーナ王国の栄光のために! 」


「「「シルヴァーナ王国に栄光あれ!!」」」


騎士たちの咆哮が城壁に響き渡ります。




北方からの異民族軍一万が、黒雲のように砦を包囲しています。城門は敵の破城槌によって悲鳴を上げ、崩落は時間の問題でした。その時、白銀の閃光が戦場を切り裂きます。


マーガレットとヴィクトリア率いる重盾隊が、崩れかけた城門の前に立ち塞がります。 「一歩も引くな!我らがシルヴァーナ王国の盾なり!」 マーガレットの土魔法が地面を隆起させて防壁を補強し、マリアンヌら5名の槍使いが盾の隙間から正確な刺突を繰り出し、侵入を試みる敵兵を次々と串刺しにします。


城壁の上からは、エリザベス率いる剣士隊が風の魔法で加速し、敵陣の真っ只中へ飛び降ります。 「紅蓮の炎に焼かれなさい!」 カタリナとフランチェスカの剣が火を吹き、敵の密集地帯を文字通り焼き払いながら、包囲網を内側から崩していきます。


砦の背後に位置する険しい断崖からは、ガブリエラたち斥候隊が矢の雨を降らせます。 「指揮官を逃がすな。一人一殺だ。」 セシリアとオルテンシアの放つ魔法矢が、敵の本陣で指揮を執る将軍たちの喉元を正確に貫き、敵軍に混乱の渦を巻き起こしました。




アイアン・ゲート砦の城門前は、敵将が討ち取られたことで統制を失い、かえって予測不能な混沌へと陥りました。敵兵たちは小規模なグループに分かれてゲリラ化し、物陰や瓦礫から散発的な夜襲や自爆覚悟の特攻を繰り返しています。


この膠着状態の中、戦場全体を俯瞰していた斥候のガブリエラは、弓を引き絞ったまま冷徹に状況を分析します。


ガブリエラは、水と土の属性を併せ持つ冷静な判断力で、二つの選択肢を天秤にかけました。


【選択肢 A:全員殲滅】


利点: ゲリラ化した敵による「紅蓮と聖盾」隊員の負傷リスクをゼロにする 。また、残党が将来的に再び刃を向ける芽を完全に摘み取ることができる。


欠点: 敵の背後関係や、国内の「内通者」に関する生きた情報を失うことになる。


【選択肢 B:捕縛・拘束】


利点: 敵兵を尋問することで、シルヴァーナ王国内で囁かれている貴族たちの離反や、敵軍の真の狙いを聞き出せる可能性がある。


欠点: ゲリラ化した敵を一人ずつ拘束するのは時間がかかり、予期せぬ反撃を受ける危険性が高まる。


ガブリエラは指先で泥を弾き、アンジェリカ隊長へ視線を送ります。


「隊長、鼠どもが穴に潜り込みました。一匹残らず焼き払うのは容易ですが……国内の『腐敗した残滓』を炙り出すには、喋る口がいくつか必要かもしれません。どう判断されますか?」


アンジェリカは、炎に包まれ崩れ落ちた敵将の遺骸から視線を外し、暗がりに潜む敵兵たちの気配を鋭く睨み据えました。彼女の大剣に纏った紅蓮の炎が、夜の闇を赤く染め上げます。


「ガブリエラ、貴女の懸念はもっともだ。だが、今の我々に甘えは許されない 。」


アンジェリカは静かに、しかし軍全体に響き渡る峻烈な声で命じました。


殲滅と選別の同時遂行 「武器を捨てぬ者は、一兵たりとも生かして帰すな。シルヴァーナ王国の威信を懸け、徹底的に狩り尽くせ 。」


「口」の確保 「ただし、指揮権を持っていたと思わしき者、あるいは貴族の紋章を持つ品を隠し持っている者は、四肢を折ってでも生け捕りにしろ。我らが王国内の『残滓』を吐き出させるための生贄が必要だ 。」




「マーガレット!土の牢獄を作り、捕らえた鼠どもを一箇所に固めろ。ヴィクトリア、水責めでも何でも構わん。夜が明けるまでに、内通者の名を一つでも多く引きずり出せ 。」


副長マーガレットは即座に応じ、地面を割り、逃げ場を失った敵兵を囲い込む巨大な土の檻を形成しました。 「承知いたしました、隊長。……死ぬより辛い夜になるでしょうが、自業自得というものです 。」


遊撃隊のエリザベスたちは、ゲリラ化した敵の潜伏ポイントへ次々と突入し、抵抗する者を容赦なく斬り捨てていきます。


「これは『掃除』よ。シルヴァーナの未来に、腐った芽は残さない 。」


アイアン・ゲート砦の夜は、勝利の歓喜ではなく、裏切り者を炙り出すための冷徹な処刑場へと変貌していきました。





アイアン・ゲート砦の掃討作戦が続く中、周囲の地形を熟知する斥候部隊が、さらなる戦慄すべき動向を察知しました。


ガブリエラ、セシリア、オルテンシア、シャルロッテ、アレクサンドラの5名が、闇夜に紛れて砦のさらに北方、および王都へと続く街道の裏道を調査しました。


ガブリエラとアレクサンドラは、水と土の魔力を地面に這わせ、数キロ先から響く不自然な地鳴りを確認しました。それは敗走した異民族の残党ではなく、より統制された重装騎兵団の軍靴の音です。


セシリアが回収した敵ゲリラの持ち物の中に、シルヴァーナ王国騎士団の「第2騎士隊」に酷似した、しかし微妙に意匠が異なる偽装紋章の刻印が見つかりました。


オルテンシアは、砦から数キロ離れた「静寂の森」の深部から、王都の方向へ向けて三度、青い魔導火の狼煙が上がるのを目撃しました。これは内通者への「第一段階完了」を知らせる合図である可能性が高いです。


ガブリエラは息を切らすことなく、アンジェリカの前で膝をつきました。


「隊長、報告します。アイアン・ゲートの敵は単なる囮に過ぎません。真の主力……それもシルヴァーナの戦法を知り尽くした何者かが、現在この砦を迂回し、手薄になった王都へと進軍を開始しています。合図は既に送られました。このままでは王都が内と外から挟み撃ちに合います。」


アンジェリカの瞳に、激しい怒りと冷静な闘志が混ざり合います。


「……なるほど。私をこの砦に釘付けにし、その隙に王都を落とす腹か。腐敗した残滓どもめ、よほど死に急いでいるようだな。」




アンジェリカは、ガブリエラの報告を聞き終えると同時に、迷いのない声で最終決断を下しました。


「時間は一刻を争う。もはや鼠どもに慈悲をかける時間は無い。口を割る捕虜の確保が済んだのなら、残る抵抗勢力はすべてこの地で灰に帰せ!」


アンジェリカの合図とともに、エリザベス率いる遊撃隊とアンジェリカ自身の紅蓮の炎が、砦の隅々に潜む敵残党を徹底的に殲滅しました。


殲滅を終えたアンジェリカは、即座に「紅蓮と聖盾騎士隊」を二手に分け、王都を救うための逆転劇を開始します。


重盾と槍の練達者たちをこの要所に残し、敵の別働隊や増援に備えます。


守備隊メンバー:

エレオノーラ

ロザリンド

アナスタシア

フェリシティ

マリアンヌ


任務: 砦の完全保持、および捕らえた「内通者の証拠」を持つ捕虜の監視。


アンジェリカ、マーガレット、エリザベス、ヴィクトリアの幹部4名に加え、残りの精鋭10名(剣士、弓兵)による高速追撃部隊を編成。


任務: 砦を迂回して王都へ向かっている敵主力部隊を追跡し、その背後から壊滅的な打撃を与える。


「エレオノーラ、この砦はシルヴァーナ王国の背骨だ。死守せよ。残りの者は私に続け!王都を汚す不届き者に、背後から地獄を見せてやる!」

アンジェリカたちは夜闇を切り裂き、王都へと続く街道を強行軍で突き進みます。





ガブリエラ率いる斥候部隊は、夜闇に紛れて王都へと続く街道を先行し、敵主力の正確な位置と陣形を特定しました。


ガブリエラは、水魔法で周囲の湿気を操り、遠方の音を増幅させる「水響の術」を用いて、アンジェリカに報告を伝えます。


現在位置: 王都から南西に約15キロ、「黄昏の谷」を抜けた先の平原地帯。

敵の陣容: 偽装されたシルヴァーナ王国の紋章を掲げる重装騎兵団約2,000。

部隊の状況: 王都の城門が開かれる「合図」を待ち、現在は行軍速度を落として陣形を整えている。

脆弱な背後: 谷を抜けた直後のため、敵の最後尾は依然として狭い街道に引き延ばされており、背後からの急襲に極めて脆弱な状態。


「隊長、敵は王都内の内通者と連動するため、決まった時間に突入する構えです。現在は『黄昏の谷』の出口付近に頭を出し、尾を引いている状態。今、この背後から紅蓮の炎を叩き込めば、敵は逃げ場を失い、自らの重装甲の重みで自滅するでしょう。」


アンジェリカは、ガブリエラの報告を聞きながら大剣の柄を握り締めました。


「よくやった。敵は自分たちが獲物を追い詰めているつもりだろうが、真の死神が背後に迫っていることには気づいていないようだな。」


アンジェリカ、マーガレット、エリザベス、ヴィクトリアら幹部を含む15名の高速移動部隊は、谷の斜面を利用して敵の最後尾へと静かに肉薄します。




「黄昏の谷」の出口、敵主力の背後が伸び切った絶好のタイミングで、アンジェリカによる苛烈な奇襲が開始されました。


月明かりすら届かない谷の出口で、アンジェリカは大剣を高く掲げ、魔力を一気に解放します。


【初撃:紅蓮の業火】 アンジェリカの火魔法が爆発し、谷の出口を塞ぐように巨大な炎の壁が敵最後尾に叩きつけられました。重装装甲に身を包んだ敵兵たちは、熱せられた鎧の中で逃げ惑う肉塊と化します。


【追撃:風刃の乱舞】 エリザベス率いる剣士隊が、火の壁を突き抜けて敵陣へと飛び込みました。風の加護を受けた彼女たちの剣は、混乱に陥った敵兵の喉元を正確に、かつ高速で切り裂いていきます。


【制圧:土と水の牢獄】 マーガレットとヴィクトリアが協力し、谷の地面を泥濘化させ、同時に巨大な土壁を形成して退路を完全に遮断しました。「一兵たりとも逃がしはしない」というマーガレットの宣言通り、敵は自重によって泥に沈み、身動きを封じられます。


谷の斜面上方からは、ガブリエラたち斥候隊が「魔導通信」を試みようとする敵の魔導師や、部隊を立て直そうとする将校を優先的に狙撃します。

「無駄よ。あなたたちの声は、もう誰にも届かない。」

ガブリエラの放った氷の矢が、伝令兵の放とうとした狼煙の筒ごと、その胸を凍てつかせました。


敵主力は前方の王都ばかりに気を取られていたため、背後からのわずか15名による強襲に対し、有効な防御陣形を組むことができません。谷の狭い出口は、阿鼻叫喚の炎上地獄へと変わりました。





燃え上がる「黄昏の谷」の出口で、アンジェリカは炎に巻かれ崩れ落ちる重装騎兵たちの間を、大剣を振るいながら突き進んでいました。その時、彼女の鋭い眼光が、燃える荷馬車の影で数人の護衛に守られながら必死に逃走を図る、一人の人物を捉えました。


その人物は、戦場にはおよそ不釣り合いな豪華な刺繍が施された絹の外套を羽織っていました。炎に照らし出されたその顔を見て、アンジェリカの動きが一瞬止まります。


意外な人物の正体 そこにいたのは、シルヴァーナ王国の内政を司り、アンジェリカ自身も「忠義の臣」と信じていた王宮書記官長・ルフェーヴル卿でした。


裏切りの証拠 彼の傍らには、王室の封印が施された機密文書の箱が転がっており、敵主力に王都の防衛網の弱点を売り渡していた動かぬ証拠となっていました。


アンジェリカの全身から、これまでにないほど激しい紅蓮の魔力が噴き上がります。


「ルフェーヴル卿……! 貴殿ほどの男が、この国を、民を、異民族に売り渡したというのか!」


ルフェーヴルは、かつての温和な表情をかなぐり捨て、醜く顔を歪めて叫びました。 「アンジェリカ、貴様のような戦いしか知らぬ女に何がわかる! この国はすでに腐っているのだ、一度焼き払い、新しい秩序で作り直さねばならんのだよ!」


逃走経路を塞ぐように、ガブリエラとセシリアの放った氷の矢がルフェーヴルの足元の地面を凍てつかせ、逃げ場を奪います。


「隊長、この男が王都の城門を開けるための『鍵』を握っているはずです。生け捕りにして、すべての黒幕を吐かせましょう。」


アンジェリカは、怒りに震える拳を握り締め、ルフェーヴルの喉元に大剣の先を突きつけました。


「四肢を折れと言ったが、貴殿だけは特別だ。その汚れた舌だけは残してやる。王の御前で、己の罪をすべて数え上げろ。」





アンジェリカの冷徹な決断により、戦場は速やかに「処断」の場へと変わりました。


アンジェリカは、言い訳を叫ぶルフェーヴルの眼前に大剣を突き立て、その凄まじい熱量で彼の戦意を完全に喪失させました。


副長マーガレットが土魔法を操り、ルフェーヴルの手足を岩の枷で固定しました。逃走の術を奪われた彼は、泥の上に膝をつき屈辱に顔を歪めます。


隊長補佐エリザベスが、彼が持ち出そうとしていた王室の機密文書を回収しました。そこには王都の隠し通路や食料貯蔵庫の位置が詳細に記されていました。


「貴殿の言葉に耳を貸す時間は無い。死よりも重い審判が、王都で待っていると思え」とアンジェリカは吐き捨て、彼をヴィクトリアの監視下に置きました。


ルフェーヴルの拘束と同時に、指揮系統を完全に失った敵の重装騎兵団に対し、容赦のない最後の一撃が加えられました。


アンジェリカの紅蓮とエリザベスの疾風が合わさり、谷の出口に逃げ延びようとした残党を火炎の渦が飲み込みました。


ガブリエラら斥候隊が、闇に紛れて戦場を脱しようとする敵兵を一人残らず射貫きました。彼女たちの放つ矢は、暗闇の中でも正確に標的を仕留めていきました。


立ち込める黒煙と鉄の焼ける臭いの中、敵主力部隊の生存者は一人もいなくなりました。「紅蓮と聖盾騎士隊」は、圧倒的な戦力差を覆し、敵軍2,000をこの「黄昏の谷」に沈めたのです。





「黄昏の谷」を血と炎で染め上げたアンジェリカは、返り血を拭い、わずかに剣を収めて呼吸を整えました。しかし、その刹那、ガブリエルの鋭い警告が夜気を引き裂きます。


「隊長! 前方500に未確認の地鳴り! ……アーマーリザードの群れです! その数、およそ50!」


報告を聞いたアンジェリカの眉が跳ね上がりました。アーマーリザードは、その名の通り全身が天然の鉱石に近い硬度の鱗に覆われた巨大なトカゲです。


極めて高い魔力拡散能力を持ち、並の火球や風刃では鱗の表面を焼くことすらできません。

鋼鉄の如き硬度を誇る鱗は、白兵戦での剣撃を容易く弾き返します。

50体もの群れが時速60kmを超える速度で突撃してくれば、いかに精鋭といえど15名の歩兵では踏み潰される運命にあります。


「魔法も剣も効きづらいあの怪物が、なぜこのタイミングで……!」エリザベスが剣を握り直しますが、その表情には焦燥が滲みます。


ガブリエラは弓を構えつつ、冷静に敵との距離を測り続けます。「距離400! 奴ら、ルフェーヴル卿の血の匂い、あるいは彼が持ち出した機密文書の魔力に引き寄せられている可能性があります!」


アンジェリカは、拘束されたルフェーヴルを一瞥し、不敵な笑みを浮かべました。 「面白い。2000の軍勢を焼き払った後の余興としては、少々骨が折れそうだが……『聖盾』の名を冠する我らが、トカゲごときに道を譲るわけにはいかんな」




アンジェリカは即座に指を鳴らし、副長マーガレットへ鋭い視線を送りました。

「マーガレット、土の守りの真髄を見せろ! 谷を絞り、奴らの数を無効化するぞ!」

アンジェリカの号令を受け、15名の精鋭が迅速に動きます。


【地形変貌:マーガレット(属性:土)】 マーガレットが両手を地面に突き立てると、轟音と共に谷の出口の両脇から巨大な岩壁がせり出し、道幅をわずかアーマーリザード1体分にまで狭めました 。これにより、50体の群れは一列にならざるを得ず、数の暴力を奪われます。


【冷却と破砕:ヴィクトリア(属性:水)&アンジェリカ(属性:火)】 先頭の1体が狭い通路に突っ込んだ瞬間、ヴィクトリアが極低温の激流を浴びせて鱗を急冷します 。その直後、アンジェリカが紅蓮の炎を一点に集中させて加熱 。急激な温度変化により、鋼鉄の如き鱗に無数の亀裂が入ります。


【各個撃破:エリザベス(属性:風)&剣士隊】 鱗が脆くなった瞬間、エリザベス率いる剣士たちが風の加速を乗せた一撃を、亀裂に向かって正確に叩き込みます 。魔法も剣も効きづらいはずの怪物が、物理的な「熱疲労」によって次々と粉砕されていきました。


後方のアーマーリザードが痺れを切らして壁を登ろうとすれば、ガブリエラ、セシリア、オルテンシア、シャルロッテ、アレクサンドラの5名が、その眼球や関節の隙間を寸分違わず射貫き、谷底へと叩き落とします 。


「たとえ鉄の体を持っていても、動きが止まればただの的よ 。」


狭い通路はアーマーリザードの死骸で埋まり、後続の群れは自らの仲間の死体が障害物となって、突進の速度を完全に失いました。アンジェリカたちは、1体ずつ確実に、かつ冷徹に「処理」を続けていきます。




アーマーリザードの野生の突進力は、アンジェリカたちの予想を遥かに上回っていました。仲間の死骸すら泥のように踏みつぶし、凄まじい質量攻撃がマーガレットの土壁を襲います。


壁の崩落危機: 「なんて馬力なの……!」マーガレットが歯を食いしばり、地面に両手を深く沈めて魔力を注ぎ込みますが、岩壁には網目状の亀裂が走り、今にも粉砕されそうです。


残り43体のアーマーリザードは、先頭の個体が壁を穿つための「生きた破城槌」と化しており、その圧力で谷全体が震えています。


わずか数体を仕留めたものの、依然として圧倒的な数がひしめき合い、狭い通路は逃げ場のない死の袋小路へと変わりつつあります。


この絶体絶命の瞬間、斥候のガブリエラが背負っていた特殊な魔導矢を手に取り、アンジェリカへ叫びました。


「隊長!壁が持ちません!……いっそ壁を自ら壊し、敵を谷の深部へ『流し込み』ませんか?ヴィクトリア様の激流で敵の足場を奪い、滑り落ちたところを上から叩くのです!」




絶体絶命の危機です。アンジェリカの放った「溶岩の釜」は、アーマーリザードの天然鉱石に近い鱗を焼くには至らず、かえって土壁を融解させたことで、彼らの突進を阻む障害物を消失させてしまいました。


溶岩の熱すら防ぐ表皮を持つ43体のアーマーリザードは、赤く焼けた粘液マグマを跳ね散らしながら、抵抗を失った谷の出口を凄まじい速度で突破してきます。


魔法も剣も通じず、唯一の地形の利も失われた今、15名の精鋭たちの目前には死の津波が迫っています。


この絶望的な状況下、斥候のガブリエラがアンジェリカの肩を掴み、叫びました。


「隊長、逆です! 焼くのではなく、奴らが纏っている**『溶岩』そのものを一気に固める**のです!」


ガブリエラは、水と土の属性を持つ自らとヴィクトリア、そして水属性の隊員たちに指示を飛ばします。


ヴィクトリアとマリアンヌ、オルテンシアら水属性の全隊員が、突進してくるリザードたちの足元、および全身に纏わりついた溶岩へ向けて、持てるすべての冷気を一斉に放射します。





灼熱のマグマすら剥ぎ取り、止まることを知らないアーマーリザードの突進。物理・魔法の両面で無敵に近いその猛威に対し、もはや通常の戦術は通用しません。アンジェリカは、隊員たちの全滅を回避するため、究極の賭けに出ます。


突破される封印 ヴィクトリアたちが必死に冷やし固めた溶岩は、アーマーリザードの異常な筋力と高熱を放つ体組織によって、陶器のように粉々に砕け散りました。


物理的限界 残数43。先頭の個体がアンジェリカの目の前数メートルに迫り、その巨大な爪が白銀の鎧を捉えようとしています。


「全員、私の背後に隠れろ! 聖盾の意味を、今ここで教えてやる!」


アンジェリカは大剣を鞘に収め、代わりに左腕に装備された青地の盾に全魔力を注ぎ込みました。


【真・聖盾発動ホーリー・バリア】 アンジェリカの「火」の魔力と、盾に刻まれた「獅子」の意志が共鳴します。炎は熱ではなく、絶対的な「拒絶」の力へと昇華され、谷の出口いっぱいに広がる巨大な半透明の紅い盾が現れました。





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