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ログアウト不能?元VR廃人なので問題ありません。  作者: 一月三日 五郎


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8/8

第八話 壊れ始める日常

 サポート機能の不調、ログアウト不能など、システムに異常が発生してから、すでに一か月が経っていた。

 その影響は、システム的には問題のない部分にまで広がっていた。


「おい、やめろよ。危ないだろ」


 盾で暴漢の剣をはじきながら、非難する男。


「うるせえ。どうせ通報できないんだ。ケガしたくなきゃ、どっか行けよ」


 運営からの連絡も途絶えており、自分勝手にふるまうプレイヤーが増えてきていた。


「ここは、今日から俺の狩場にするんだ!

 文句があるなら、かかってこい!」


 剣を振り回し、周囲をけん制する暴漢。


「ふざけんな。みんなの場所だろ」


「そうだ、そうだ」


「こいつ、やっちまおうぜ」


 運営による統制が崩壊した結果。

 もたらされたのは、好き勝手にふるまう者と、秩序を守ろうとする者の争いだった。


「にいに、ケンカしてるよ?」


「そうだな」


 一人を三人で囲み、袋だたきにしている。

 抵抗できているところを見ると、一人のほうは相当の高レベルプレイヤーなのだろう。

 とはいえ、人数差を覆せるほどではなさそうだ。


 最近は街中でも小競り合いを見かける機会が増えてきたが、

 こんなところでもやっているとは。


 まったく迷惑な連中だ。

 PVPがしたいなら屋外フィールドでやれ。

 デイリーダンジョンでやるんじゃない。


「とめる?」


「うーん……」


 正直、かかわりたくない。

 どっちに肩入れしても、ろくなことにならない気がする。

 かといって両方を叩きのめせば、両方の恨みを買うことになる。

 別に恨みを買ってもいいんだが。


 ちらりとルナの方を見る。

 少し不安そうに、争うプレイヤーたちを眺めていた。


「よし、帰ろう」


 君子危うきに近寄らずだ。

 デイリー報酬は惜しいが、

 また別の日に周回すれば済む話だ。


「わかった。でも、お肉食べたかったな」


 ホッとしつつも、好物への未練が残るようだ。


「ストックがあるから、今日はそれを食べよう」


「やった、霜降り!」


「……霜降りはないな。こないだ、食べちまった」


「がーん」


 両手でほっぺをはさみ、ショックなポーズをとる。


 いや、なんか俺が食べたみたいな感じ出してるけど、

 食べたのお前だからな。


「じゃあ、シチューがいい」


 すぐに立ち直り、リクエストしてくる。

 シチューなら霜降りじゃなくていいから、好都合だ。


「よし、じゃあ、シチューな」


「やった」


 くるくると回りだす。


 数秒前までショックを受けていたとは思えない喜びようだ。

 この切り替えの早さが、ルナのいいところだが。

 さて、帰るとするか。


「おい、そこのお前」


 出口に向かおうとしたところ、背後から声をかけられる。

 声の感じからして、さっき袋だたきにされていたやつか。

 見ると、さっき囲んでいた連中は、キルされたのか姿が見えなかった。


 意外と強いのか、こいつ?


「さっき、こっち見て笑ってたろ!」


 いや、俺はルナを見てただけなんだが。

 お前に興味はない。


「気のせいだろ?俺はこの子としゃべってただけだ」


 ルナを背中に隠しながら答える。


「なめんなよ。俺はレベル50だぞ」


 なんか自慢してきた。

 レベル50?中堅じゃねえか。

 自慢するなら、100の大台を超えてからにしてくれ。


「ああ、すごいね。もう行っていい?」


 男の顔色が、みるみる真っ赤になる。


「馬鹿にするな!」


 無茶苦茶に剣を振り回し、切りかかってくる。

 軌道を見切り、最小限の動きでかわす。

 ルナに当たると大変だ。


「くそ、当たれ、当たれ!」


 子供が癇癪を起こしたみたいな、技術のかけらもない攻撃を繰り返す。

 さっきの三人を倒したのなら、レベルの申告は本当で、攻撃力もそこそこ高いのだろう。

 でも、それだけだ。

 当たらなければ、意味はない。


「はあ、はあ、はあ……なんで当たらない」


 動きが単調で、攻撃のあとに必ず隙ができる。

 ……ああ、たぶんサポート寄りだな。

 冷静に見ていれば、まるわかりだ。

 よけてくれと言っているようなものだ。


「気は済んだか?じゃあ、次はこっちの番な」


 がん。


 スタミナ切れで動きの止まった男に、拳骨を食らわせる。


「げべ」


 地面にたたきつけられ、光の粒子に変わる。


 つまらぬものを殴ってしまった。


「にいに、帰ろう?」


 遠慮がちに、袖を引くルナ。


「そうだな」


 ルナの手を引き、出口に向かう。


 怖がらせてしまったか。

 失敗したな。

 唇を少し噛む。


「もう、ああいうの見たくないね」


「ああ」


 気遣うようなルナに、短く答える。

 握った手から伝わる体温に、胸の奥が少し暖かくなる。


 今日はもう、帰ろう。


 ルナの手を握る指に、少しだけ力が入った。


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