第20話 一幕
――玉座の前。
王城の大広間は、かつてないほどの
熱気に満ちていた。
リオストの要人たちはもちろん、
城下町から押し寄せた民衆までもが
城内外を埋め尽くし、固唾を呑んで
その時を待っている。
扉の奥からゆっくりと柊真、サノンが
姿を現す。場内は一気にどよめいた。
中央へと進み出た二人の前で
エルネス王が立ち上がる。
「此度のレース。見事な勝利であった、
柊真、そしてサノン。」
低く、よく通る声が広間に響く。
「その走りは、我が国のみならず、
この地に生きる者すべてに
確かな希望を示した。
よってここに、柊真を――」
一拍。
「リオスト代表走者と認め、
さらに女神リスティアに習い
《ソウル・ライダー》
の称号を此処に授ける」
歓声が爆発した。
王妃レイアは穏やかな微笑みで
柊真を見つめ、言葉を添える。
「勇気と誠実さを忘れぬ限り、
その道はきっと、あなたを
導くことでしょう」
そして、優勝トロフィーを手に
進み出たのは王女アリアだった。
「……おめでとうございます、柊真」
レースの時とはまた違った雰囲気で
瞳に確かな誇りを宿していた。
彼の手にトロフィーを渡す。
その瞬間、再び大きな拍手と
歓声が湧き起こった。
白亜の城の外。
遠くから聞こえるその声に、
リスティは思わず小さく笑った。
「……やれやれ。圧倒的な勝利を
望んでおったが……本当に、
派手な事になったものじゃ。」
やがて式典は終わり、城内では
盛大な宴が始まった。
長いテーブルに並ぶ料理、酒、
笑い声がそこら中に響く。
サノンはそばに来たルミナと
軽口を叩き合い、いつになく賑やかだ。
柊真もひとしきり楽しんだ。
その後、ふと一人になりたくなり
外へと続く階段を上った。夜風が
火照った身体を冷やしてくれる。
「来ると思っておった」
そこには、月明かりに照らされた
リスティの姿があった。
柊真は驚く事はなく、ただ
リスティを見つめる。
「これでお主の目的の第一歩は、
確かに果たされたの。
だが……これから先は、さらに
厳しい道となる」
静かな声で問いかける。
「その覚悟は、あるか?」
柊真は迷わなかった。
「ああ。ある」
そして、今回のレースを思い返す。
驚くことばかりだった。
恐怖もあった。
だが、それ以上に――楽しかった。
「俺は、走る事が好きだ。」
「レースが俺の生きる道だって、
死んで尚、改めて分かった」
そして笑う。
「グラン・レースでもっと強い奴らと
走れると思うと……正直、俺は
ワクワクしてるんだ。」
その言葉を聞いたリスティは
満足そうに頷いた。
「うむ。ならばよい」
夜空を見上げながら、静かに告げる。
「この世界はお主を退屈させぬよ。
……思いっ切り楽しめ。」
新たな道の始まりを告げるように、
城下ではまだ、しばらく歓声が
鳴り止まなかった。
これにて第一部は終わりです。一度AIで今回の小説の漫画でも描いてみようと思うので、良ければXの方もフォローお願いします。凪咲カケルでやってます。




