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第18話 決着

——最後の瞬間が、迫る。



柊真は最後の直線を疾走し、

背後からは翼竜が迫っていた。

炎弾が次々と飛んでくる。


サノンが肩越しに魔力を流し、

砂の膜を展開していく。炎を

なんとか受け流していた。


「柊真、サノンよ……レース前に

 我が言った事を覚えておるか?」


ここまで黙っていたリスティが、

静かに語りかけてくる。

声は落ち着いているが、どこか

試すような響きがあった。


柊真は後ろから迫る炎をステアで

かわしながら叫ぶ。


「……ああ。圧倒的に勝つ、だろ?

 そうして、全ての走者を抜いて

 来たんだ。最後にこの翼竜を

 引き離して、勝ってみせる!」


サノンが必死に砂の盾を

展開しつつ、後ろ向きで続ける。


「……うん!このまま翼竜の攻撃を

 躱して、差をつけてゴールする…

 …狙うは完全勝利!、だよね!」


「ふむ。二人ともそれが分かって

 おるならよい。しかし——」


リスティが言い淀む。


「しかし……もしかしたら、少々

 骨が折れるかも知れんぞ」


「な、なんでだよ!?」


柊真が言った瞬間、前方で

王女アリアが翼竜の首元に、

手をかざした。


——眩い光。


翼竜の全身が輝き、外皮が締まり、

筋肉が盛り上がる。翼が倍ほどに

膨らみ、鱗は金属のように光る。


「な、なんだあれ……!?」


「すご……こんなの、

 聞いてないかも……!」


サノンの声も震えていた。

リスティが説明する。


「あの翼竜はその昔、リオストを

 支えた王翼竜の子孫。王家には

 翼竜の力を開放する魔術が代々

 受け継がれておる。」


「開放する魔術だって……⁉

 あの女の子は、王族なのか?」


「左様。あやつは王の娘。顔を隠し

 補助士とて参加してた様じゃが……

 我は欺けぬ。纏う魔力で王女と

 直ぐに分かった。」



アリアが風を切る声で叫ぶ。


「ルミナ!この形態は三分も

 持たない!だから……!

 ここで決めるわよ!!」


翼竜が爆発的に加速し、

ぐんぐんソウリスに迫る。

風圧だけで機体が揺さぶられ、

柊真達は必死に体を伏せる。


斬撃や魔法は来ない。加速中は

ルミナ、アリアの二人も

しがみつくのに必死のようだ。

しかし——。


「また!炎弾、くるよっ!」


サノンの警告と同時に、翼竜が

口を大きく開き、灼熱の柱を

吐いた。


柊真はハンドルを切り、砂煙を

巻き上げながら回避する。火柱が

地面を抉り、熱風が背中を焼いた。


「さっきまでの炎より太くて、

 熱い!避けるしか……ない!」


前方にモルナ村の屋根が見え始める。

観戦のため集まった村人たちは

翼竜を見ると騒ぎ、兵士たちが

村人を誘導する。


「コース内は危険だ!

 立ち止まるな!外へ散れ!」


ゴールはもう目前だった。


その瞬間、翼竜が横に並び、

ルミナが手綱を大きく回した。


「——覚悟しろ、異端の者!

 終わりだ!」


並走する翼竜の右手が、

柊真目掛けて振り下ろされる。

巨大な爪が空気を切り裂き、

柊真ごとソウリスを

叩き潰さんと迫る。


翼竜のスピードは既にソウリスを

上回っている。横に逃げても

捉えられるだろう。


「いくぞ、サノン!!俺と、

 ソウリスをしっかり掴むんだ!」


柊真はサノンに向けて叫び、

フロントを引き上げた。


ソウリスが——()()()()()

柊真は、ウィリー走行を試みた!


柊真を狙った爪は空を切る。

翼竜とてソウリスを凌ぐスピードで

突っ込んで来たのだ。


勢いが余って、バランスを崩す。

後退するかに見えたが……


「まだだ!!」


ルミナが体勢を崩しながらも、

光の斬撃を放った。鋭い光刃が

一直線にソウリスへ向かう。


「サノン!!」


「うん!!」


サノンが残った魔力をかき集め、

ソウリスの背から砂のゴーレムを

形作る。


斬撃とぶつかり崩れながら、

ゴーレムは後ろへ倒れていき、

翼竜の胸へ体当たりした。


「なっ——!?」


強化された翼竜でも、バランスを

崩した所に、巨大な砂の怪物が

倒れてきたのだ。

翼竜は——沈んでいった——。


アリアとルミナは翼竜が倒れる

と同時に投げ出された。


——決着が着いた。

レースへの復帰はもう不可能だろう。


アリアは翼竜を心配し、そばに

駆け寄って行った。

ルミナは……銀色の長髪を

砂まみれにし、悔しそうに地面に

拳を振り下ろした。


柊真は悠々と最後の直線を抜け、

村の入り口に飛び込むように

ゴールした。


その瞬間、歓声が爆発した。

柊真は大きく、右腕を突き上げた——。



歓声はまだ、鳴り止まない。

村でも、映像が流れていた

城下町でもそれは同じだった。


異世界から来た少年少女が今、

認められ、祝福されている——。


大変なのはこれから。

柊真もそれは分かっていた。


だが……今はこの歓声を嚙みしめる

事にしようと、サノンと共に

大きく手を降っていた——。

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