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水着

作者: らすく

 「ねえ。海に行かない?」

 「ん?」

 どうやら夏休みの間の予定の相談だそうだ。

 「まあ別に大丈夫だけど。」

 実際この私は休日の予定などない。特に趣味もなく、こうやって友達に誘われて、どこかに連れて行ってもらっている主体性のない女子高校生なのだ。こうして頬杖をついている私は、本当にボーッとした女に見えている事であろう。


 「もう。やる気なさそうにして、本当は気合入ってるんでしょ!?」

 その瞬間、男子の視線を感じた。

 「はあ?別にー。」

 それを察知した私は、やる気の無さを崩さなかった。

 

 その翌日は休みだった。私は数人のクラスメートとスポーツ店に来ていた。

 「どお?これ?」

 クラスメートの一人が試着室で水着を試していた。

 「ちょっと際どすぎるよー。」

 「まあ男子は喜ぶかもね!」

 皆好き放題な事を言ってる。でもそれで良いのだ。

 クラスメート達が盛り上がっているのを尻目に、この私は1人で試着室で水着を選定したのであった。要するに、人の意見に惑わされるのが嫌だったのである。

 キャッキャッと騒ぎながら、各々気に入った水着を購入したのだった。

 ===== そして帰り道 =====

 「何ニヤニヤしてしてるのー?」

 「ん?別に。」

 確かに私はニヤけていたのかも知れない。そうゆう自覚はあったのだ。何故なら・・・・。

 うん。そう思う・・・。今回私が自分で選んで買った水着は・・・・、多分ちょっとエッチかも・・・。誰にも勧められずに選定したのに、どうしてこうなったのであろうか。・・・実は私はイヤらしい女なのだろうか・・・。

 分かってくれていると思うが、別に私の性格が悪いという意味じゃない・・・。ただ性的に秘めた想いがあるのだろう・・・。

 もう取り返しは着かない。この夏の海で、私はこの水着を以てして派手な女と見られるのだ。

 こうして私は1人で盛り上がって、帰宅したのだった。

 ~~~~~ 夏休みが待ち遠しい ~~~~~


 ===== キーンコーンカーンコーン =====

 (退屈だなあ・・・。)

 断っておくが別に私は暇な訳ではない。今は授業中なのだ。つまり退屈なのは、その授業の内容なのである。

 しかし何事もなくは終わらなかったのであった。

 (え・・・・?)

 私は異変に気が付いた。それは自分の身体に関してである。

 (なんで・・・・。)

 確かに今日は暑い。汗もかくであろう。しかしそれは、そんなレベルでは無かった。

 (なんで濡れているの・・・・。)

 そう。この私の身体はビッショリと濡れていた。その度合いはシャツが上半身に張り付くくらいなのであった。どうしてこんなことが起こったのか、自分にはまるで理解ができない。

 (うう・・・。)

 勿論、今は夏服だ。完全に下着が透けてしまっている。

 ・・・私は後悔していた。よりによってこんな目立つ色を着てくるなんて・・・。

 もっともどんなものでも恥ずかしい事には変わりは無いのだが。

 (え・・・。)

 そして私は気が付いたのだ。とある違和感に。


 ===== 授業は終わった =====

 そそくさと私は学校を出た。もう誰とも言葉を交わさなかった。

 今日は良く晴れており、まだ日差しは強い。

 歩いているうちに少しづつ服は乾いていった。

 (でも・・・。)

 帰路の途中、私は違和感について考察した。

 ~~~~~ どうして誰も私を見なかったのだろう ~~~~~

 そうなのだ。先ほどの私の事態に対して、誰も注目しようとしなかったのである。

 それは本当に不思議な事だ。自分で言うのもなんだが、女の子の下着が透けて見えるハプニングに、男性諸君は誰も反応を示さなかったのである。私は恥ずかしいが、男子は喜ぶ者もいたのではなかろうか。なんなら同性でも、何らかの声を掛けてきただろう。

 (どうして・・・。)

 でも答えは分からない。


 ===== 私はシャワーを浴びていた =====

 とても心身ともに疲れる一日だった。それを洗い流すべく、私は浴室にいるのだ。

 (え・・・。?)

 再び何か違和感があった。

 シャワーがぬるい・・・。そう、それはまるで・・・。

 「え?なんなの・・・?」

 良くわかなかった私は、シャワーを止めて湯船につかった。

 (・・・・!)

 違う・・・。こんなぬるいなんて。これじゃまるで・・・。

 頭がパニックになりそうな私は、風呂をあがった。

 

 ===== 私は自分の部屋で考えた =====

 風呂に入った気がしない。何故なら全くスッキリしないからだ。

 間髪入れずに違和感が現れた。

 (え・・・。何?)

 着用したパジャマが湿っている。

 「は、はああ?!」

 なんでこんなことになるのだ、しかもこれはただの水ではない・・・。

 たまらなくなった私はパジャマを脱いで下着姿になった。

 

 ===== そして最後の違和感が =====

 「な、なああ・・・。なにこれ・・・。」

 私は恐怖した。気が付くと自分の肌は、ブクブクとふやけていた。

 「うわああ!!」

 脳みそがショートした私は、そのまま家を出た。


 ===== 私は下着姿のまま走った =====

 とにかく私は走った。

 バスタオルで拭いたはずの髪は、何故か水がしたっていた。それがただの水では無いことは、もうわかっている。

 気がつけば私は、あの水着姿になっていた。

 ちょっと背伸びした、いや自分に取っては限界ギリギリのエッチな水着・・・・。

 注目を浴びたい・・・、ただそれだけだったのに・・・。

 こんなことにならなければ今頃は・・・・。


 ===== 私は夜中の砂浜を走っていた =====

 今は日が落ちている。

 大丈夫。誰からも私の肌は見えない。ブクブクと膨れた、その醜い姿を・・・。

 「う・・・。」

 力尽きた私は、倒れた。

 そのショックで口から水がこぼれた。

 私には分かっている。最初から知っていて、知らないふりをしていたのだ・・・。

 ~~~~~ これは海水だ ~~~~~


 この夏に私は海で溺れ死んだのだ。


                                 ~ 水 ~ <完>

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