あの子の視線の先に、何が見える?
テストとかGWとか、その前に学生時代で最初の重大イベントがある。
――部活決めだ。
毎年恒例、部活見学ウィークの初日。
放課後、教室の空気がどこかソワソワしてるのはそのせいだ。
「なあ優希、吹奏楽部行かねぇ? めっちゃ可愛い先輩いるらしいんだよ!」
「部活紹介でマイク持ってたあの人?」
「そうそれ! あの笑顔、反則だろ」
「行くしかねぇじゃん。……とりあえず俺は後で合流するわ」
「ん? どこ行くの?」
「ちょっとだけテニス部見てくる。先に見とけば、あとで吹部に集中できるからさ」
「お前、計画的かよ! じゃ、またあとでなー!」
友人の背中を見送ってから、俺は校舎を出てテニスコートへ向かう。
中学時代はソフトテニス部だったけど、高校は硬式。
ボールもラケットも違うし、少しだけ抵抗がある。
コートに着くと、見学者でけっこう賑わってた。
男女それぞれ、人数も多い。
フェンス越しにその様子を見ていたら、なんとなく中学時代の感覚がよみがえる。
――あのときも、緊張してたな。
初めてのラケット。初めての大会。
何もかもが不安で、だけどちょっと楽しかった。
……でも、なんか違う。
今ここに混ざるイメージは湧かない。
どこか、心の奥が「違う」って言ってる気がした。
ま、かわいい女子が見れたからヨシ。
俺の部活見学第一弾、終了!
今度は吹奏楽部でも見に行こうと、俺は校舎へ戻る。
下駄箱を通ると、クラスの靴が半分くらい残っていた。
その中に、詩葉のローファーと――湊のもあった。
(……アイツ、まだ残ってんのかよ)
サッカー部に真っ先に行くと思ってたけど、意外だ。
まさか詩葉のストーカーにでもなってないだろうな。やめろよな、そういうの。
心配するふりをしながらも、少しだけ気になる。
いつもは「主人公ポジション」だと思ってたのに、
今日のアイツ、ちょっとだけ“何か”が違った。
そんな風に、俺が気づくくらいには。
2025/09/09 後半部分に違和感あったので修正しました。




