脇役にも、朝が来る
脇役の日常――といっても、なんの変哲もないただの日常だ。
登校中、一人で学校まで歩いていると、後ろから声をかけられる。
「おはよう、優希。今日さ、満員電車でOLっぽい綺麗なお姉さんと超近くになったんだよ。めっちゃいい匂いしたわ。朝から幸せだったな」
「おぉ、マジかよ!どんなお姉さんだった?黒髪?茶髪?」
「茶髪の、かわいい感じのお姉さんだったぜ」
「うわ~いいな~。俺もそんなお姉さんと近づきてぇ……」
「そういえば、昨日から新ガチャ来たけど引いた?」
「引いた引いた!30連爆死だぜ! フッ、悔いはないさ。これが俺の生きざまだ!」
「ざま~みろ。骨は拾ってやるよ」
――とまあ、こんな会話ばっかりするのが俺の日常だ。
バカみたいなやりとりだけど、こういうのが案外楽しい。
教室に入って、まずやることは決まってる。
さてさて、今日も今日とて俺の親友・湊は……
「はぁ~あ」
はい、今日も眠そうでした。
そして詩葉は――もう学校に……いた!
湊のこと、チラチラ見てるのバレてますよ~(本人は気づいてないけど)
まあ、中学のころから大体こんな感じの光景を見てきた。
そして俺がやることも、毎度おなじみ。
「よぉーっす湊! お前今日も眠そうだな、またアニメでも見てたんか?」
「なんだ優希か。いや、勉強してただけだよ。そろそろテスト期間だろ? 高校初めてのテストだし、いい点とっときたいからさ」
……このクソ真面目が! まだ焦る時じゃねぇんだよバカたれが! と、心の中で叫ぶ。
まあ、この高校も偏差値52くらいだし、バカにとってはちょっときついぐらいのレベルだ。
高校から頑張って、いい大学に進学したいやつもいるんだろうな~。
俺は「人生楽しけりゃなんでもOK」派だ。
「テスト期間って、まだGWにもなってねーぞ。先にGWの予定考えろよ」
「そっか、もうGWか。すっかり忘れてたわ」
「てかさ、部活って決めた? 中学サッカー部だったし、やっぱりサッカー入るん?」
「高校は部活入らねぇよ。バイトしたいから、帰宅部だな」
「お前、熱い青春はいいのかよ! 女子マネとのラブコメ物語はどこ行ったよ!」
「べ、別に恋愛とか興味ないし……」
「綾瀬はいいの~?」
「うるせぇよ。デート行くにしても金必要だろ? その時のためだよ」
……まだ“友達”って呼ぶにはちょっと遠い距離感なのに、デートの妄想してるこのバカを誰か殴ってください。