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404号室 恐怖の鹿人間

自分で言うのもあれなのですが、何を間違ったのか未だにわかりません。

 

私は間違っていません。間違ってないはずです。

常に正解を選ぶスマートな男、それが私なのですから。間違いはなかった…はずなのです。

 

 

現代日本で高学歴学生だったから私は、少子高齢化により内需が縮小する中、これからは海外に目を向けるべきだと考え、幾つかの言語をマスターした。実にスマートな判断です。

 

バイト先を探す際、私は言語能力を生かすべきだと考え観光業に目をつけけました。

ちょうどその頃、金を持った外国人観光客が日本に押し寄せていました。

私はお金儲けのチャンス!だと考え、すぐに一流ホテルに履歴書を送りました。もちろん合格!当然です。


お客様は裕福で、チップとして私にたくさんのお金を払ってくれました。

観光業には未来があると考えた私は、一流ホテルにそのまま就職しました。実にスマートな判断です。


 

 

そうして私は、ホテルの支配人になりました。実にスマートです。

経営の勉強をするために、経営系のゲームを遊びました。

これからです!どんどんお金を稼ぎましょう!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私はファンタジー系異世界に転移しました。これはスマートではありません。クソが。

 

 

 

 


 

ですが!転んでもただでは起き上がりません!交渉の結果、転生特典とやらを手に入れました。私のホテルマンとしての力を昇華したものだとか。人材育成、職員採用、企画経営、ベッドメイキング、ホテルの設計、接客…なによりも、現代日本の技術を使った設備の再現。これはいい!スマートです!

 

 

 

 

 

私はこのスキルを活用し、スポンサーを集め、信頼できるビジネスパートナーとともに宿屋を開業しました。

 

 

みるみるうちに、私の経営する宿屋は大きくなっていきました。当然です。圧倒的なまでの技術と提供されるサービス。王国一のホテルになるのは時間の問題でした。

 

こうして、世界中の大金持ちが利用する、超一流ホテルにまで成長したのです。実にスマートです。

ここまで、何一つとして私は間違っていません。実にスマートです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モオォォォォォォォオッッッッ!!」

 

「お客様が暴れているぞ!!担当チームは何をやっているんだ!」

 

「こちらネルファ-1!こちらネルファ-1!害悪顧客事案発生!害悪顧客事案発生!おそらく飲酒!おそらく飲酒!援軍をお願いします!現地の職員だけでは対処できません!援軍を!」

 

「スキャン完了!顧客名簿に該当あり!データ共有します!」

 

 

 

Sランク冒険者『オール・バァッファボルト』

クラン 『夜明けの平原』所属

担当 タンク兼デバッファー

種族 獣人(鹿)

全属性に耐性あり。無敵貫通無効。状態異常『恐怖』を与え敵の正常な判断能力を奪う。

保有スキル『大地の力』ダメージの9割をカットします。

正面からの戦闘は避けてください。

酔っ払うため、飲酒耐性のみ解除を行う行動が確認されています。恐怖耐性スキルを保有した職員で構成されたチームで接客を行なってください。

 

 

「モォォォォォォォ!!」

 

 


「つーかなんで鳴き声が牛なんだよ!鹿じゃないのか⁈」

 

「ツッコむだけ無駄だ!恐怖耐性スキル持ちは前へ出ろ!!援軍の警備部隊が来るまで持ち堪えるんだ!」

 

「A34通路に誘導後迎撃だ!バリケードを築け!携帯式魔術爆弾用意!」

 

「うおおおおお!何が牛じゃ!全力で相手をしてやる!」

 

「だから鹿だって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわあああああああ!牛が!牛がぁぁぁぁぁぁ!怖いよぉ!おかぁさん!』

 

『言わんこっちゃない!牛が、牛の群れが来るぞ!群れがくるぞォォォォォ!』

 

 

 

支配人室。目の前のモニターでは、暴れる顧客を相手に何人もの警備員たちが命懸けの遅延戦闘を行っていた。

 

既に援軍の警備部隊は派遣済み。Sランク冒険者でも、所詮は酔っ払い。これで鎮圧はできるでしょう。

 

 

 

 

 

…さて、夜ももう遅い。仕事はこれまでにして、寝る準備でもしましょう。

 

ピロン!!!

 

『呪いの魔剣の汚染状況報告書』

『ネクロマンサーの異臭対策予算申請について』

『Sランクパーティ『希望の星』結成1ヶ月記念会への出席要請』

『ダンジョン攻略隊への物資輸送隊全滅事案』

『人事部門より 職員の退職に歯止めがかかりません助けてください』

『敵対的買収に対する対応会議』

『諜報部門より。王族に不穏な動きあり』

『辞任届 マクスウェル理事より』

 




「はぁ、今日も残業ですか」



 

 

『支配人へ緊急報告!対象は認識阻害、幻影系のスキルを保持している可能性が高いです!恐怖耐性装備では意味がありません!現場の職員は牛の群れと戦闘中と報告していますが、監視カメラにはそんなもの写っていません!あああ、震えが止まらない!!!まさか、映像越しでも状態異常が感染するのか⁈』

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああああああああああああああ!!!

スマートに!仕事をしても!仕事をしても!終わりません!

 

 

 

 

 

 

 

 

私は間違っていません。全ての選択肢を正しくスマートに選んだ結果、こうなったのですから」

 

 

 

私はは知らなかったのです。

この世界の金持ちが貴族などではなく、力仕事を行う荒くれ者の冒険者であるということを。

 

私は思い出したのです。

宿屋経営なんていうのは結局、お客様の顔色を伺う客商売だということを。お客様には頭を下げるしかないということを。

 

 





●業務命令

宿泊客が自己申告した保有スキルに虚偽の内容があることを確認しました。

全宿泊客の保有スキルや能力を再調査を行ってください。顧客情報はトップシークレットですので情報漏洩に最大限の注意を払うこと。




●情報調査部 タレス調査官のコメント

上級冒険者に鑑定装置はほとんど効きませんよ。どうやって調査しろと?


●情報調査部 ウォルマート調査官のコメント

冒険者はステータス偽装スキルなどを保有しています。鑑定装置が効いたとしても、その情報は信頼できません。つまり何が言いたいかというと、ストーカーになりなさい。タレス調査官。


ガチャと僕のプライベートプラネット 連載中


https://ncode.syosetu.com/n2783id/

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異世界ホテルという狭いジャンルに現れたスマートな男… 続きを全裸待機します!
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