神樹と神器
非常に不味い雰囲気だ……
機嫌を損ねたラウにこれ以上喋らせる訳にはいかないと思うし……
あぁもう俺が話すしかない!!
エルフの長なら重要な場には出席していたはず……
「フォレスさん。フォレスさんは世界不戦条約の締結の際、その場にいたのではありませんか?」
「……うむ。もちろん私も参加していたが、その事がラウ殿の件の証明に関係が?」
よし!
予想通り!エルフ族の長なら間違いなく参加していたと思った!
「でしたら先代魔王様ともお知り合いかと思うのですが、ラウは先代のことをお爺様と呼び慕い、先代もラウのことを実の孫娘のように可愛がっています」
……どうだ?
ユウマはフォレスの顔色をうかがうが、どうやら芳しくはないようだ。
これじゃ弱いか……
だったら……
「実は先日、ラウの案内で先代魔王様に会って来たんです」
「……ほほぅ……隠居された先代魔王様の住む場所を知る者はそう多くはない……」
食いついた!!
「そこで俺は先代魔王様からこれを譲り受けています」
ユウマは神器、創造の指輪を外し、高々と掲げた。
椅子に座っていたフォレスが指輪を見つめたままガタリと立ち上がる。
「これは……いや、間違いない……まさしく先代魔王様の!!」
ここまできたらもう安心だな。
「はい。先代魔王様はこれを俺に託し、ラウの兄捜しの力になってくれと……」
いつの間にか周りのエルフ達全てが跪いている。
またこのパターンかw
「あの、いや、凄いのは先代魔王様とかであって、俺やラウには普通でいいので!な?ラウ?」
「チョット待って!イマ証明方法ヲ頑張って考えテルんだカラ!!」
……あの、ラウさん?もうそれ必要なさそうですよ……ラウさん?
「なるほど……ホワイトドラゴンを頭に乗せ、先代魔王様から神器を託された人族を従える……こんな事ができるのはまさしく魔王様の妹君!!」
「えーー!?いや!俺はラウに従ってるわけじゃ……」
なんだか急に自分達が褒められてるような雰囲気にラウが気がつく。
「そ、ソウよ!わたしのユウマはスゴいんだカラ!そしてルルはとってもカワイイんだカラ!!」
ふんぞり返って大笑いしているラウだが、内心自分の発言に大焦りしている最中であった。
ドドドドドドウしようっっ!!わたしノッ!わたしのユウマって言っちゃっタ!!!!!
ナンカ勢いで言っちゃったケド変な空気にナッテないよネ!?
大丈夫……ダイジョウブなはずよ……セフセフセーフ!
「疑って申し訳ない。ここにある神器は我等にとって大切な物故……お許しくだされ」
「いえいえ、疑うのも当然の事だと思いますし、俺もラウも気にしていませんから。な?ラウ?」
「ソソソソそうよ!!フォレスさん達は何モ悪くないワよ!」
ひどく汗をかいているラウを不思議そうに見つめるユウマ。
「では早速、我等の護る神器の所へ案内しましょう」
おお!すぐに見せてくれるのか!
フォレスに案内され建物の外に出るユウマ達。
建物の裏手に周り、さらに森の奥へと進むと、そこにはいったい樹齢何年なのか……驚くほどの大樹が現れた。
「これは見事な……もしかしてこれが神樹ですか?」
「はい。これが我等エルフの王であり、女王でもある神樹です」
なるほど……ブリッツ大森林のエルフの王国。
その王はエルフではなく、一本の大樹……俺、なんかエルフのこの考え好きかもしれないな。
神樹の根元に小さな台座のような物が見える。
「あの台座の上にあるのって……」
「ええ、あれが我等エルフの護る神器、万歌の弓です。神々の内の一柱が、この神樹から作ったと伝えられているのです」
神々しくも優しい光を薄らと放つ一張りの弓。
その少し横に一人の女の子が座っている。
女の子はこちらに気がついたのか、振り向くと立ち上がり、一礼してどこかへ行ってしまった。
女の子が立ち去ると神器の光も消えていく。
「見ての通りこの神器は武器……ラウ殿の求める能力は持ち合わせていないかもしれませんな」
「残念だけどフォレスさんの言うトオリね。デモこんなに大きな木ヲ見れて感動ヨ!!魔族領にもきっとコンナ木ないワ!!」
ラウが求めるような神器じゃなかったのは残念だけど、この光景を見れたのは俺にとっても最高の出来事だ!!
神樹…まさしく神の樹…絶対にこれは小説に書かなくては!!
それにしても……
「フォレスさん、さっきの女の子は?」
「あの子は……この万歌の弓の使い手……になるはずだった子です……」
「はずだった?」
フォレスは静かに神樹を見上げる。
「あの子はハーフエルフ、名をクレアといいます。エルフ族最強の弓使いですが……あの子が弓に触れる事はもう二度と無いでしょう……」
遠くの空で不穏な雲が畝りだしている……




