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トレーネの町と兎の獣人

シックザールの村を出発してから初めての町。


遠目から見てけっこう大きな町なんだろうけど、ちょっと様子がおかしい。


父さんに以前聞いた話だけど、大きい国や町は魔物対策のために石壁で囲われていたり、結界で覆われていたりするらしい。


シックザールの村人たちは魔物を獲物としか見てないから何も対策してなかったけど……w


でもトレーネの町は石壁もないし、結界もないようだ。


なにか他の魔物避け対策が施されているのだろうか?


町に入ると食事処や宿屋、土産屋や果物屋、どれもそこまで大きくはないけど一通り揃っているようだ。


それにしても……町の人たちが皆こっちを見てくるのがとても気になる。


一先ず宿屋へ向かったのだが、そこで町の人たちの視線の答えが解った。



「あら珍しい!魔族のお嬢さんなんて久しぶりに見たわ。それにしても大変なことになったわね」



宿屋の女将さんらしき人の第一声だった。



「大変なコト??」



そこで女将さんから世界不戦条約が破棄されたことを聞かされたのだが、驚く俺の反応とは違いラウは怒りに震えているようだった。



「……それで町の人たちは魔族であるラウを警戒してこっちを見てたのか……」



やはり居心地が悪くなってしまったのか、ラウは下を向いてしまっている。



「あ~違う違う!町の連中は他の種族をあまり見た事がないから、ただ珍しがってってだけだと思うよ。許してやっておくれ」



え?たしかにこのトレーネの町に入ってから人族しか見てないけど、不戦条約の件は気にしてないってことなのだろうか?



「それにね、人族と一緒に……しかも頭の上に神聖なホワイトドラゴンを乗せてる可愛いお嬢さんのこと、怖がる人族なんているかね?」



あぁ……もしかして魔族のラウよりもホワイトドラゴンのルルの方に皆の目はいってたのかもしれないなw



「ところであなた達、申し訳ないんだけど……」



……


…………


………………


なんだとーー!!


いくつかの部屋が改装中で空き部屋はたった1つ……しかもベッドも1つ……



「俺……床で寝るからベッドはラウとルルで使ってくれw」



俺の言葉で事態を把握したのか、ラウはハッとした表情で顔を赤らめる。



「べべべ別にユウマも一緒にベッド使ってイイわよ!ルルよ!そうよ!ルルを真ん中にシテ寝ればいいノヨ!!」



ルルの存在は色々な意味で大きいな。


神器については明日にするとして、今夜はもう休むことにしよう。


ラウとルルはもう横になっている。


俺も日記を書き終えて横になろうとすると、ラウが声を掛けてきた。



「ユウマ、不戦条約が破棄されたコト……わたし許せナイ……兄様がいたらそんなコト絶対にシナイもの……」



たしかにこの件を聞いた時は本当に衝撃だった。


血で血を洗うような争いが起きてしまうのかと不安にもなった。


でもこのトレーネの町の雰囲気がのどか過ぎるのもあり、実感はわかないし情報も不足している。


それも含めて明日から情報収集しよう!



「……ねぇユウマ?変なコト……言ってもイイ……?」


「んーー?変な事って?」


「……前カラ思ってたんだケド……なんかユウマって……人族のくせに兄様と似たニオイがする……」


「なんだよ人族のくせにってw」



まったく……可愛いことを言ってるような失礼なことを言ってるような、本当に面白い子だなw



「アニ……様……」



もうラウは寝てしまっているようだ。


涙を零しながら寝言でお兄さんを呼ぶなんて、ラウにとってお兄さんはとても大きな存在なんだろう。


俺も会ってみるのが楽しみだ。


とりあえず……寝るか…………


……


…………


部屋に差し込む陽の光で目が覚める。


思いの外ぐっすりと眠れた。


けっこう疲れてたのかな。



「んん……モウ朝?おはよーー」



ラウも目を覚ましたようだ。


よし!今日はこの町のどこかにある神器を探したり、不戦条約の件とか色々と情報収集で忙しくなるぞーー!


……


…………


っておいおいおいおいおいおいおい!!!!!



「ラウ!?なんでっ!なんで裸なんだよ!!!?」


「んぁ?ハダカって?」



……


…………


………………



「……ミ……見るなバカぁぁあ!!!!!」



俺の記憶にある限り、この世界にきて初めての理不尽パンチをくらった気がする。


真ん中で寝てたルルの体温のせいで、暑くて無意識に脱いでたとかブツブツ言ってたけど、俺……悪くないよね……?


宿屋の女将さんが軽い朝食を出してくれたので、食べながら色々と話を聞いてみることにした。


まず神器についてだけど、宿屋に来る客が武器や防具、アイテムの話はよくしていたけど、女将さんは神器って言葉自体はじめて聞くものだったらしい。


次はこのトレーネに来て俺が一番気になっていたこと。


この町の魔物対策についてだ。


この辺りは魔物が少ないとは言え、石壁も結界もないのは不可思議すぎる。


もしも黄色オーラ以上の魔物が出たら普通の人族では太刀打ちできないだろう。


女将さんが言うには今回の世界不戦条約の件が原因らしい。


普段はこの町に暮らす冒険者チームが結界を張ったり魔物討伐をしたりしているが、不戦条約破棄の対策協議のため、町の代表者と共にシュベルトという国へ出掛けてしまっているとのことだった。



「大丈夫さね。この町の周辺に強い魔物が出たことはないし、トレーネには頼れる兎っ子がいるからねぇ」


「兎っ子?」



トレーネは不在の冒険者チームも含め人族だけが住む町だったらしいが、数年前から一人の獣人が町外れに住み着いたらしい。



「兎族の女の子なんだけどね、愛想はないけど手伝いとか魔物討伐とか色々としてくれる子なのよ」



その子の存在もあるから無防備な状態でも冒険者チームが町を離れる事ができたのか。


二日後には冒険者チームが町に戻る予定らしいし、その人たちからも情報集めしたいな……



「ありがとう女将さん!あと二、三日はお世話になるつもりだからよろしく!」



さぁて、今日は町をぶらつきながら神器を探そう!




トレーネに向かう空中の二つの大きな影に、まだ誰も気づかない……

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