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2章11 第39話

 カーギツ大陸西方、その南は丘陵地帯として山々が連なっており平均標高は1500mある。この遮蔽物によって水蒸気の供給が阻害されることでその北に広大な2つの砂漠地帯を形成していた。


 北西の砂漠をベリヤムズといい、南東をシンジェンといった。


 締約国が管理するシンジェンから見て東方にあるベリヤムズは東西で2つの都市に分割管理され、東方をオーク系であるゼムシド共和国、西方をドワーフ系であるコリブロイ連邦の都市に属している。 


 そこから見て西の内海に臨む位置に、私が今いるストーク都市があった。


 その年の2月に私が迎えられたのは街の中心部から北西にある共同住宅と戸建てが並ぶ住宅街で、出迎えてくれたのはエルフの夫妻でした。――




「あぁ、ごめんなさい。」


 車から出る時ゴッとドアに荷物を当ててしまい、思わず声が出た。


「構いませんよ」


 私の位置からは見えないが、後ろのトランクからタクシーの運転手がゴソゴソと荷物を出しながら声をかけてきた。


 ぶつけたところを見るとさいわい、へこんでもいないようだった。


 私はキャリーケースを地面に置くと、ドアを閉めるために振り替えった。するとドアの反対側からエルフの女性が降りていて、その後ろには内海へ向かって斜面上に建物が広がっているのが目に入ってきた。


 建物のだいたいは赤茶けた外壁をしているが、白だったり青だったりも混じっている。そこに遠くからは遊歩道なのか塀なのか庭木なのか街路樹なのかよくわからないが、木々の緑が混ざっている。


「ほら、」


 運転手はトランクから取り出した荷物を ドンッ と目の前に置くと、来た道を戻っていった。


私の前にはキャリーケース2つ、


13年生きてきて必要なものはそれだけあれば十分だった。


「ここの3階だから少し歩くわよ」


「はい」


 タクシーが走り去った待機スペースから見上げ階数を数えると9階建てのマンションだった。


 マンションの敷地の隅には災害時用に薪を備えておく貯蔵庫と発電施設が設置されている。こういうのをカーボンニュートラル?と言ったんだったかしら。



――ベリヤムズとシンジェンはともに夏は灼熱、冬季には厳寒という寒暖差が激しい気候で、大陸南方にある山脈により雨雲が遮断され降雨が乏しい事から夏季には砂漠地帯を移動しながら遊牧を行い冬季には点滴灌漑(土を耕しすぎると土壌の維持力が減衰し表土が剥がれるので長根苗の果樹の葉や実を利用する)で収穫したり輸入した穀物を使った畜産業が盛んな地域だ。もちろんそれだけではなく場所によって蜂蜜、養蚕も行われそうして作られた青果や香辛料、皮革を輸出し不足する小麦や米などを輸入していた。


 こうした環境なので食糧事情にこの地方の人々は敏感だった。ただし、これを理解するには少し歴史的経緯を理解する必要があるだろう。


 かつて自由貿易・国際商業という名のもとに不平等条約がまかり通っていた時代があった。


 国民国家という思想において最も重要で危険な支持基盤は農家(第一次産業)であり、集権化を図りたい政治機構は領邦制を破壊した後は、必ず農地解放政策という名において農家の解体を行ってきた。


 かつての共産主義がコルホーズ・ソフホーズという形態をとったように、資本主義では合理化という名目で企業集農が行われた。


 ~~なるほど農家というのは不景気であっても政治的失敗が発生しても自家消費で乗り切れる一個の自治領でもあり、既得権者である政治機構からすれば邪魔な存在なのだ、


しかしそれは諸刃の剣でもあり、特に不景気には社会を不安定化させる要因であった。


 不景気でも天候に左右されるだけですむ農業輸出国は工業国においてあぶれた労働力が流れ込むと、今度は過剰な労働力を軍事力へ転換し始め、この軍事力を背景にさらに不平等条約を推し進めていった。


 早期に企業集農を済ませた国は国家によるダンピングにより価格競争という名目で他国へ余剰生産物を押し付ける代わりに工業・輸出国へ進ませて労働者を増加させる、そして時間がたつと貿易摩擦という体で通貨価値や国際取引の安定化を名目に工場を移転させて空洞化させ他国を属国化する、理屈的にも筋が通っている話だ。


 しかし、こうした過剰農業生産により地下の帯水層から水をくみ上げすぎたり、過剰な耕作により表土が風で吹き飛ばされた結果、穀物輸出による不安定化を続けることが困難となっていった。


 さらに都合が悪かったのは国内産業が空洞化した国は学業やサービス・通信インフラ業といった無形のものへ流れ込んだことだった。


 今日ではいけないことだという意識改革が進んでいるが、かつては文民統治という名の実業軽視こそが至高の理屈なのだと考えられた時期があった。ここにうまくはまってしまったのだ。


 もちろん、他国出身者が他国の指導者層を握るのは国内的に反発が出た。


 500年前の世界的改革で法律事務などの実態がルーティン作業もAIにより平易化を行い既得権を破壊し「特別視」する業態ではなくなると、今度は実業に偏重した。


 こうして多くの国で鉱業・農林牧畜産業が属国化すると、


コンピュータにより統計的に価格が表され価格競争が困難な飲食店や個人商店といった収入が水物の産業は販路を国際的に広げることで利権を確保しようとし始め 組合 により属人化して国際組合化した。 ”来るものは拒まないが、去る者は独立しろ 取引の複雑化と多重構造ネットワークこそが我々の強みだ” というのが彼らの座右の銘らしい。


 その結果、多くの国で2大政党制が進み国家統合推進と国家自治強化の対立に発展した。


 ベリヤムズとシンジェンでは農林産業が土地の特徴として向かず仕事量が足りないため余剰労働力がほかの地域よりより多く水物産業へ流れた。この結果、国家統合推進派を中央政権が弾圧する構造が常態化した。


 それは軍事闘争ではなく、主に穀物の輸出入法制により平和闘争という形で行われていた。


 これにより収穫量を持続的に増やし耕作可能な土地を増やす ということがこれら地域の至上命題となっていた。~~



 部屋の前につき、女性が開けたドアを私が部屋に入るためにドアを受け取ると、 ズシリ とアルミや木材のような軽さではない重さが手に伝わってくる。 


ドアをまたぐと玄関のわきに収納部屋があり、私は前の人にならい、そこにかけられているハンガーにコートをかけしまう。


 そのすぐ隣に手洗い所が併設されてたのでついでに手を洗っておく。そこから家の中をのぞくと 廊下の側面は足元にはライト、天井付近にはボックスが見える。


(なるほど………。)


 と私は心の中でつぶやいた。


 天井付近にあるボックスはネット通信の中継器だろう。


 普通、この程度の部屋規模ならメッシュ中継器はいらない。壁材で電波が減衰するなら周波数を下げればいいだけだから。それだと家電同士で電波干渉が起きやすいが、使用する機器を調整すればたいして差はない。高画質画像のような高負荷の高速データー通信が求められていて通信速度が確保できないと支障が出るなら、モニター側の設定をデータ読み込み方式に切り替えてメモリに一時保存させラグでカクツキを消せばいいから。


 実際私が前いたところでは中継機は置かず建物の中央にルーターを設置していた。


 だから、そう、中継器が必要なのは電波が減衰されているではなく遮蔽されているはずだ。つまり、建築材として壁の中にカーボンの板か何か入っているのだろう。


 カーボン建材自体はめずらしくはない、ただ高価なのだ。実際、私が仕事を手伝っていた商店街では、そんな高価な建材を使っているとこは見たことがなかった。


 意匠段階から電波の流れに指向性を持たせている凝った建物に住んでいるというのは、彼らが中流以上の家庭であることがわかる。そうでなければpingが重要なネットゲームのプレイヤーか……しかし、この二つは同時に成り立つ……。


 そして、照明に照らされたその奥に階段が見える。


 (あ~なんていうんだったかな、こういうの。・・・カタ・・・カタパルト?違うな・・・メゾネット たしかそんな名称だったな)


 そんなことを考えながら部屋に入ると、これから私の養父と養母となる二人が座っていた。


・


・


・


私はソファーに座った。


私の前には二人の壮年のエルフのが座っている。


一人は男性、一人は女性。


そこでちょっと話をした


簡単な話だった。


学期終わりに転向すると試験があるけど、義務教育中だから無理に急がなくてもいいから3月の学期終わりの後の4月から入学でも云々・・・というような話をしていた。


一通り話が終わった後、私は話を切り出した。


「私は学業だけではなく、これまで通り何か仕事をしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「何か欲しいものでも?」


「私たちがお小遣いをあげてもいいわよ? そんなには渡せないけど」


「銭をただで渡せば借りて返さぬ中になりますが、仕事を任せれば働いて駄賃をもらう中になる ということわざがあります。 私が権限あるものは自分で収入も管理したい、……です」


「なるほど……わかったわ。でも何をするかは教えてね」


 私は首を縦に振った。


 たしかに学業という義務強要が子供の支出を要求していないなら、私に収入はそれほど必要ではない。


 だから一般的にも学生が何か仕事をするというのは、ただ時間をとられるだけと考えるのは当然の話だ。


 

 とはいえ、これで私には彼らに縛られない自分の時間を認めさせることができたのだった。

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