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多種族惑星ヴァンダルギア  作者: マルセークリット
1章序 やれやれ・不殺・鈍感はゴミ箱に捨ててきた 0から始める戦争活動
17/45

1章14

時刻は朝8:00

今日は朝から早いのでポップタルト(簡易食品)と栄養補助ゼリーをかっこみ、襷をかけ急いで宿舎を出る。

通常の業務が始まる前に南区の教護院へ着いたとき、時刻は8:20を回ったころだった。表に止められた車に乗るとき、

「ありがとう」

そういうと彼は深々と頭を下げ、車内に入っていた。


ドグマが施設に行く日、前もって話し合った結果、彼を連れてきたのは俺なので、当日は俺とアサが立ち会うことになった。

教護院で簡単にやり取りを済ませるとシルリと同僚数人が緊急車両を出口に誘導し、彼を乗せると走り去っていった。


シルリ「寂しいものだな、また仕事が一つ終わってしまった」


シルリはドグマが車内に入っていく様を見ながら声色も変えず切り出した。


「肩の荷が下りたということですか?」

シルリ「いや、すまない。何かできたことがなかったのか自問自答のための独り言のようなものだ」

アサ「時代劇なら法を曲げられぬと言いながら市井のものが訴えれば代官が何とかしようと言うでしょうが、現実では一度官庁がした裁決というのは1吏員が何をしたところで覆されないものですから自分にあまり多くを求めないほうが良いですよ」


官庁とは例え自分たちの行動が間違っていたとしても「間違っていた」とは認めない、完全に分権化し機関同士で相互監視を徹底したとしても、弁護士やジャーナリストというものは金にならないものにはかかわらない。

内部告発者はいつだって職を失う覚悟がいる。もちろんその行為に正義があれば支援するものと、批判するものがいるだろう。

いずれにせよ、きれいごとを言っても、時代がどんなに変わろうが、組織改革が進もうが、そんなものだ。


「そういえば、エリザという人は、どういうヒトだったんですか?」

シルリ「私の10ちょい上だったかな、同僚のエルフとはあまり付き合いがうまい方ではなかった」


そういうと昔を思い起こすように、シルリは少しの時間考え込む。


「彼女も強情で、先輩や同僚から詰められても頑なに罪を認めなくてな。

決め手になったのは結闘の前に排卵誘発剤を用意していたのが発覚したことだった。ちょうど自由化会合の調整が大詰めの時期だったから後任を誰にするかや、折衝役の任命でゴタゴタしたのを覚えているよ。最終的に要求案の再検討まで進んでな。」


「一人の去就で政策が変わるとは、ずいぶんと大事になったのですね」


「そうだな、私は詳しくはないが、一部から検討のやり直しが強く要求されたらしい」


「そうした強引な事が見られるときは不自然に昇給したり、利益誘導があったりを疑いますが、そうしたことは?」


「20年前だからなぁ、普通にやっていても昇級している者もいるだろうし、もはやわからないな」


「例えばコメなどの一部が完全自由化の対象から外されていますが、それで利益を得る対象、例えばゴブリンはどうですか?正確にはゴブリン派が何かしら利益を取るための工作だったとは?」


「ふむ・・・そういえば例のスパイ騒動の発覚時期はこれの5年前か・・・時期的には彼女が工作員と接触していた可能性はあるが、しかし私には彼女たちは実際に思い合っているように見えたが、それが工作だとすると、 」


「いえ、彼女の行為を利用して周囲がという意味です」


「ふむ・・・そういうこともある・・・のか?いや、しかしそれなら公安部が何か言ってくるのでは」


アサ「役所というのはおおよそ縦割りで、横には情報を流さないものでしょう。特に組織外部に情報を流さないなんてことはざらです。権限が重複している範囲では、例え情報提供を求められても守秘義務を盾に取りますからね」


シルリ「そうだな、しかしもう終わった事件だ、仮に何かが今更発覚したところで彼の処分に影響はないぞ。

――愛を叫びながら収奪する強盗にあった我々エルフは、

愛を叫びながら敵を殺す兵士になった、

愛を叫び生命を産む行為を肯定することはできない。

かつて、母という概念があったそうだ。

『あなたの子供に望むことを、あの不幸な子供たちにも分けてあげてください』

こうした言葉でいったいどれほどの争いが隠されてきたか――

例え何が隠されていたとしても、彼女エルザと、ドグマが罪を犯した事実は覆らない」


シルリがキッとした視線を向けたのを見て、

(あぁ、彼女は俺がドグマの罪を再審せよ、という意思を持っているか確かめようとしているのか)と思った。


「そうですね、余計な業務が増えると、普段の業務にも差しさわります。 とりわけ、何が分かったところで下された裁決が覆るとは思いませんし」


そう、俺が興味があるのは自由化会合・・・ね。


「ところで当時、具体的にどういった検証がされたか調べる方法はありますか?」

「そうだな、報告書については政府HPに公開されている。興味があるのか?」

「えぇ、少し。公開されている情報なら今日の研修終わりにでも見てみますね」


そう言うと俺たち二人はシルリに別れを告げ、今日の研修へ向かったのだった。



※あなたの子供に望むことを~ 

・イラク戦争時にブッシュが言ってた事の改変。キリスト教ってほんと愛を騙って戦争扇動するの好きですよね。まっすぐ石油のために死んで来い言ったらいいのに。

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