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カトリーナの神託の人

直ぐ、カトリーナのレベルが上がりだした。

 レベルが上がる度に、カトリーナはビクッ、ビクッと震えた。

 アストリアはみんなに悟られないようにサーチを放った。

 カトリーナのレベルが25まで上がっていた。


 ダンジョンアタックして5日目、アストリア達は9階層のリトルダイナソーと戦った。

 斬鉄剣改も和音の剣もドルモアの剣もリトルダイナソーの硬い皮膚を切り裂いた。

 その日の内に10階層のボス部屋へ降りる階段まで到達した。


 ここで、また1号に9階層の残りの魔物を殲滅させた。

 カトリーナのレベルが29まで上がった。

 10階のボス、カメレオンダイナソーをカトリーナの短剣で倒して、10階層のダンジョンドアを使って1階層の小部屋に戻って来た。


「カトリーナ様、ギルドに行ってレベルを確認しましょう。」

「そうね、後どれくらいで、レベル30になれるか見てみましょう。」


 ギルドに来て、全員ステイタスくんにカードをかざした。

 アストリアはレベル30になっていた。

 アリアナは27、

 ナタリは23、

 アナリーゼは25、

 そしてカトリーナは32だった。


「えっ、私のレベル32なの!!」


 その時、横のカウンターで30才ぐらいのイケメンの男がレベルを確認していた。

 レベル52だ。


「あっ、この方だわ。」

「カトリーナ、如何したのよ。」

「出会えたわ。」

「何がよ?」

「神の言葉の人よ。」

「神託の人なの?」

「そうよ、少し待っていてね。」


「不躾で失礼ですが、私の話を聞いてもらえませんか?」

「お嬢さん、私はナタリオ、ニコメンデス32才と申しますが、どんなお話ですか?」

「ここでは不味いです。人がいない所で話を聞いてください。」

「いいですよ、それでは私の宿へ行きましょう。」

「はい、お願いします。」


「アリアナ、私、行ってくるわ。ありがとう。」

「いいのよ、友達でしょう。」

「あっ、カトリーナ様、少しお待ち下さい。」

「お嬢さん、私は急いでいます。行きましょう。」

「はい、よろしくお願いいたします。」


「アストリア、邸で待っていて下さい。」


 アストリアは男にサーチを放っていた。

 ステイタス


 ライトニング キッド32歳

 称号 シャークヘッド海賊団 第1隊 副長

 レベル52

 HP 600

 MP 30

 力 180

 体力 220

 敏捷 150

 器用 150

 魔力 30

 剣術Lv4



 アストリアは、まだ良く分っていなかったが冒険者ギルドのステイタスくんと魔法使いが直接放つサーチは若干の違いがある。

 ステイタスくんは登録時に名前を告げるのだが、この名前は本名でなくてもいいのだ。

 偽名でもニックネームでもOKだ。

 そして称号は記載されない。

 これに対して、魔法使いが使うサーチでは、使った魔法使いが必要な情報を神ムーン シルバー様が与えてくださるのだ。


 どんな偽名でもサーチは必要な情報の名前が頭に浮かびあがる。

 ロカ、ニルンルートのように、本人も知らない名前が表示される事があるのだ。

 また、称号は神から見た本人の一番大切な情報だ。



「アリアナ様、本当に1人で行かせていいのですか?」

「いいのよ、カトリーナの勘は当たるのよ。それに、これは神託なのよ。明日になれば、全て解決よ。」

「内容を教えて貰えないでしょうか?」

「カトリーナ本人の口から聞いてね。では明日、ここで待っているわ。」


 アリアナ達は家に帰って行った。

 アストリアは一瞬迷ったが、カトリーナの後を追いかける事にした。

 しかし、アリアナと話し、そして迷った事でカトリーナの乗る馬車を見失った。


 アストリアはサーチを放ちながら、カトリーナを探した。

 しかし中々見つからなかった。

 魔力がレベル30では、広範囲を探すのに足りないのだ。


 その頃、馬車の中でカトリーナはナタリオ、ニコメンデスにベラドンナ家の悩みを語っていた。

 兄ナムディ、ベラドンナ15歳が10才の時、呪いにかかり命が後わずかになっている事。色々なポーションを試みたが、効果がなかった事。

 もし兄が死んだ場合、自分がロカ領主家から養子を取り、跡を継ぐ事になる事を伝えて、「私を助けてください」とお願いした。


 ナタリオ、ニコメンデスはお茶を進めて、「私でよければ、あなたの力になりましょう」と言ってくれた。


 そしてカトリーナは意識を無くした。

 ナタリオ、ニコメンデスはお茶の中に眠り薬を入れていたのだ。

 これは金になると思った。

 領主家の娘が自分の懐に飛び込んで来たのだ。

 飛んで火にいる娘だと思った。

 何故、自分を頼って来たのかは分らないが、そんな事は如何でも良かった。



 カトリーナは意識を取り戻した。

 そこは真っ暗で、首には首輪が付けられ、壁に固定されて動かなかった。

 手足がクサリで繋がれているらしく、両手はバンザイの格好で両足は八の字に開いたまま動かなかった。


 混乱していると灯りがともった。

 3人の男がいやらしい目で自分を見ていた。

 その中の1人がナタリオ、ニコメンデスだった。


「ナタリオ、ニコメンデス様!!」

「お目覚めですか、お嬢様。」

「ここから出してください。」

「ふっははは、まだよく状況が分ってないようだな。お前は俺たちの金ヅルになったのさ。」「金づる?」

「今から、お前をエサにしてベラドンナ家から金を(むし)り取るのさ。その前にお前の身体で楽しませてもらうぜ。」



 ナタリオ、ニコメンデスはカトリーナの胸を力づよく揉んだ。

 そして太腿を撫で上げた。

 カトリーナは、今自分の置かれている状況が飲み込めた。

 しかし何故?

 ますます混乱した。


 裸でこの状況より、何故こんな事になっているのかが分らず混乱していた。


「今夜10時に隊長が来る。1番は隊長のモノと決まっているからしかたない。その後、俺たちがたっぷり可愛がってやるぜ。あっははははっ。」

「兄キ、大金が手に入りそうですね。」

「いい思いが出来るぜ。」

「楽しみです。」

「任せておけ。」

「娘は如何なさるのです。」

「隊長の後は、お前らで好きにしていいぜ。生きていれば、それで金になる。殺すなよ。」「ヘイ、分ってまさ。」




 3人は灯りをつけたまま、上に上がって行った。

 カトリーナは神に祈った。




「ああっ、神よ。

 貴方は言われました。

 お前がレベル30になった時、一番近くにいる者に、お前の望みを伝えよ。

 この事は望みが叶うまで、誰にも言ってはいけない。

 何故なのですか?

 神よ、ムーン シルバー様、お教えください。」




「カトリーナ。」

「ああっ、ムーン シルバー様。」


「私はお前に言ったはずだ。

 お前がレベル30になった時、1番近くにいる男にお前の望みを伝えよ。

 そして、この事は他の誰にも言ってはいけないとな。」


「はい、わたくしは、そう致しました。」

「そうか?」

「はい。」

「では、お前のレベルは今いくつだ。」

「はい、レベル32です。」

「では、レベル30の時、お前は何処にいたのだ。」


「えっ、レベル30の時?

 あっ、ダンジョンにいました。

 えっ、でも、そこに男の人はいません?

 あっ、アストリアがいました。

 アストリアが神託の人!!」


「そう言う事だ。」


 声は聞えなくなった。

 カトリーナは絶望にただ泣くだけだった。


 そして夜10時になり、シャークヘッド海賊団第1隊隊長ハイデッカー、シャークヘッド38歳がカトリーナの前に現れた。

 ハイデッカー、シャークヘッドはシャークヘッド海賊団船長サンヴィーニ、シャークヘッド42歳の弟だ。


 ハイデッカーはムチを持っていた。

 何も言わずに鞭打った。

「パシリッ」と音がして、裸のカトリーナの白い肌に、赤いスジが走り、血が滴った。

「うあああああぁぁぁぁ、やめてぇぇぇぇ。」

 またムチが走った。

「きゃあぁぁぁぁぁ、やめてぇぇぇぇぇ。」

「止めて欲しいか?止めて欲しいなら手紙を書け。お前の父に当てて、身代金1億ロムを持って来いとな。」


「そんな事出来ません。」

「ふふふふっ、まあいいぜ。お前が手紙を書くのが早いか、それとも鞭打たれ死ぬのが早いか見てみようじゃないか!!」

「ピシリッ、」

 また鞭が走った。


「ああぁぁぁ、たすけてぇぇぇ。アストリアァァァ。」


 自分でも無意識にアストリアの名前を叫んだ。

 その時、ハイデッカー、シャークヘッドの胸から剣が突き出した。


「遅れてすまない。直ぐ追いかけたのだけど、途中で見失ってしまったのだ。良かったよ、まだ生きていてくれて。」

「アストリア、何処にいるの?」

「あっ、透明化のポーションを飲んでいるんだよ。今、鎖を外してあげるね。」


 アストリアは短剣で鎖を切った。

 カトリーナは、そのままアストリアの腕の中に倒れ込んで来た。

 アストリアはカトリーナにパーフェクトヒールをかけた。

 そして詠唱した。


 空間と次元を越え、我を届けよ。テレポート。


 2人は海賊のアジトの外へ出た。

 アストリアは、この時点では空間魔法はLv7テレポートまでで、Lv8のワープはまだ覚醒していなかった。

 2回目のテレポートでローム川を越え、ベラドンナの城壁へ飛んだ。

 3回目でアストリアの部屋に飛んだのだった。


「カトリーナ様、今何か着る服を持って来ます。少しこの部屋で待っていてください。」

「アストリア、今は私の側に居て下さいませんか?」

「いや、その格好では、不味いと思います。」

「あなたなら、いいのよ。」


 カトリーナは裸のままアストリアに抱きついた。


「私は、貴方になら、私の全てを捧げます。この心も身体もです。」


 カトリーナは、これまでの事をすべてアストリアに語った。

 特に万能薬ポーションを兄に使うか?

 両親が悩んで悩みぬいた末、苦渋の決断で使わない事に決めた事を涙を流して語った。

 勇者様が未来のローム王国の為、錬金魔法に覚醒した者が生まれた時に使うように言われた事を守ったのだ。

 また、自分がいる事も万能薬を使わない理由だった。

 両親は養子を取って、家を継がせれば最悪、ベラドンナ家は残る。

 それで勇者様との約束が守れると思っているのだ。


「カトリーナ様、私はあなたが望みの代償として全てを私に捧げるのであれば、そんなものはいりません。無償で望みは叶えてあげますよ。」

「えっ、何故なのです。」


「私に初めて声をかけてくれた女性があなただからです。

 嬉しかったのですよ。

 人と初めて話したのです。

 この気持を一目惚れと言うのですよ。

 キウィ先生が教えてくれました。

 私は一目で、あなたが好きになったのです。」


「嬉しい!! 」


 カトリーナは唇をアストリアの唇に押し付けた。

 2人は長いキスをした。

 そしてベッドの中でカトリーナはアストリアの生い立ちを聞いた。



「私には生みの親と育ての親がいるんだよ。

 生みの親の両親の名前はシンゲン、ゴールド43歳とカリーン、ゴールド40歳だよ。

 それに私には兄が1人と姉が1人いるんだ。

 兄の名前はナシーム、ゴールド23歳、

 姉の名前はチェルシー、ゴールド20歳だよ。

 私は3歳の時、シンフォニーお母様にさらわれたらしい。」



「攫われた?」


「そう、私が3歳の時、シンフォニーお母様が現れて、こう言ったらしい。

 この子に神託があった。

 この子は、この世界を自由に生きさせなさい。

 その為の力を、この子に授ける。

 その力の成長をシンフォニー、お前がやるのだ。

 私はまだ小さかったので、良く分らなかったよ。

 だから私は父の顔も兄姉の顔も知らないんだ。

 カリーン母様は時々会いに来てくれて、私を抱きしめてくれていたよ。

 しかし、僕は段々本を読むのが好きになり、1日中、本棚の前にいたね。

 またコンピューターがあって、何でも質問に答えてくれたんだ。

 5才になったら、シンフォニー母様の修行が始まった。

 魔法の修行と剣術の修行だった。

 1日中、走らされたり、倒れるまで魔法の訓練をしたりした。

 私は魔法の才能があるらしく、魔法の出来はシンフォニー母様から褒められたよ。

 嬉しかったね。

 だって全てに於いてシンフォニー母様には、かなわなかったからさ。

 後妹がいるんだけど、妹はいつまで経っても幼女のままなんだ。

 可哀想なやつなんだ。

 でも、強いやつで剣術も魔法も私より強いんだ。」




「変わった妹さんね。」

「そう、ハーモニーって言うんだけれど、それでも私にとってはただ1人の妹だから可愛いよ。」


 そのまま2人はベッドに入って眠ってしまった。

 翌日になり、二人はカトリーナの兄、ナムディの部屋にやって来た。

 アストリアは部屋のドアに違和感を感じた。


 サーチ。

「ワイバーンの呪い。子供を殺されたワイバーンの母親が呪いを短剣にかけたもの。」

「この扉には触れないがいい。」

「触れたら如何なるの?」

「死にはしないけど、力が段々なくなって倒れるみたいだよ。」

「少し待ってて。父と母を呼んでくるわ。」


 5分ぐらいで父、サファビー、ベラドンナ35歳と母ナイラ、ベラドンナを連れて戻って来た。

 アストリアを見たサファビーはアストリアの前に跪いた。


「貴方は勇者様のご子孫。」

「何故私が勇者の子孫と分るのですか?そのような事、聞いておりません。」


「私には貴方が発しいおられるうす青色の光りの粒が見えます。

 勇者ゴールド、ユカワ様もその光りを発しておられたのです。

 そしてゴールド様の周りにはユリア姫、サンターナ姫、アリス姫、シンフォニー様がおられたと初代アンリ、ベラドンナの日記に書かれているのです。」


「その日記は何時頃書かれた日記ですか?」

「100年前です。」

「シンフォニー母様は20歳ぐらいですよ?」

「シンフォニー様はアンリの日記では妖精族ではないか?と書かれています。」

「妖精族?」


「アストリア、それより兄の事をお願いよ。」

「あっ、そうだったね。」


 アストリアは聖水をドアに降り掛けた。

 白い(もや)がドアから立ち上った。

 ドアの呪いは解除された。


「それは聖水ですか!!」

「よくご存知ですね。」

「アンリ様の妹、アドリアナ様が使って、人々を癒されたそうです。」

「では、入りましょう。」


 アストリアが入ると、ベッドにナムディが眠っていた。

 見るからに痩せこけて死にそうだ。


「サファビー様、この部屋に短剣があるはずなのですが、何処にあるか知りませんか?」

「短剣はその箱の中に入っているものだけです。」

「この短剣は如何されたのですか?」

「ナムディの10才の誕生日にロカ領主から送られたものです。それから、ナムディはとても大事にしているのです。このようにいつも側に置いているのです。」

「そうですか、分りました。」


 アストリアは万能薬ポーションを取り出した。

「それは万能薬ポーションではありませんか?」

「よくご存知ですね。」

「息子の為、家の宝物庫にあるその薬を何度使おうかと思って見ていたのです。結局は諦めてしまいました。」

「しかし、今の状態では飲めませんね。別の方法を試して見ましょう。」


 アストリアは詠唱しだした。


「ユグドラシルよ、聖なる光りで、この者から呪いを祓い給え。シヤナク。」


 アストリアの両手が白い光りを放ち、頭から足先にかけて移動して行った。

 すると足先から白い靄が箱の中に消えて行った。

 アストリアは短剣が入っている箱の周りに聖水を4ヶ所置いた。


 そして箱のふたを開けて、短剣が見えるようにした。

 そうして於いて、アストリアは短剣に聖水をジャブジャブ降り掛けた。

 短剣から「ギャーーー」と声?がして黒い靄が立ち上がり、それが白い靄に変わって消えて行った。



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