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アストリアのお母様

 アストリアは武器屋のお姉さんに尋ねた。

「ここにドルモア、ランディ様は居られますか?」

「いえ、ドルモア様は2年前に旅に出かけられました。最後に作られた剣が、その壁にかけてある剣ですよ。」

「これがドルモア様が作られた剣ですか!!すごい剣ですね。」

「あら、あなたは剣が分るの!!」

「はい、その剣は鋼でも切れそうです。」

「あら、本当に分るのね。」

「お値段は御いくらでしょうか?」

「5,000ロムよ。」

「えっ、5,000ロムなのですか!!!では、是非私に売って下さい。」

「ごめんなさい、これは売り物ではないのよ。ここの鍛冶師達の目標としてドルモア様が置いていかれた物なのよ。」

「そうなのですね。」

「アストリア。」

「はい、何でしょう、カトリーナ様。」

「あなた鍛冶師なの?」

「いえ、鍛冶師ではありません。」

「では何故、剣に詳しいのです?」

「母に教わりました。」

「あなたのお母様は何でも知っておられるし、何でもお出来になられるのですね。本当に何者なの!!!」

「普通だと思いますが。」

「まあ、いいわ。邸に戻りましょう。」



 カトリーナとアストリアはベラドンナの領主館にやって来た。


「姫様、お帰りなさい。そちらの少年は誰でしょうか?」

「この少年は家で働く事になった庭師です。名前はアストリアよ。」

「では、アストリア、お前はこっちに来なさい。」


 アストリアは門番に連れられて邸の裏の家にやって来た。


「ガーデンはいるか?」

「はい、エドガー様。」

「こいつは新しく雇った庭師だ。名前をアストリアと言う。面倒を見てやってくれ。」

「畏まりました。」

「アストリア。」

「はい、ガーデン様。」

「お前の部屋に案内してやる。」

「ありがとうございます。」

「しかしお前、言葉使いが丁寧だな。」

「はい、母から教わりました。」

「お前の母は何処かの貴族の生まれか!!ここがお前の部屋だ。明日から仕事をしてもらうぞ。」

「畏まりました。」

「よしよしではまた明日だ。」

「おやすみなさい。」



 翌日になり、アストリアは朝日が出る前に起きて、日課の体操とランニング、そして剣術の型を1時間ばかりやって汗を流した。

 最後にクリーンの魔法を自分にかけて、朝の日課を終えた。


「アストリア。」

「はい、ガーデン様。」

「朝食だ。食堂へ行け。」

「はい。」


 アストリアは食堂へやって来た。

 そこには15人の使用人が朝食を食べていた。


「初めまして、アストリアと申します。本日ガーデン様の下で庭師を致します。よろしくお願い致します。」

「おおーっ、ガーデン様だってよ。あっはははー。よろしくな。」


 アストリアは朝食を食べ、庭の剪定を始めた。

 それを見たガーデンは、こいつは出来るなと思った。


「アストリア。」

「はい、ガーデン様。」

「お前に、こっちの庭を任せる。お前の好きなようにしな。」

「はい、畏まりました。」


 朝の7時に始めて2時間が経った。

 アストリアはぼさぼさの木を鹿の形に剪定していた。


「アストリア。」

「あっ、カトリーナ様。おはようございます。」

「あなた、何をしているのよ?」

「庭師の仕事をしております。」

「誰があなたに庭師の仕事をさせたのよ?」

「それは昨日、カトリーナ様が新しい庭師だとおっしゃられました。」

「あれは方便よ。あなたは私たちのパーティーの仲間なのよ。」

「カトリーナ様。」

「何です、アストリア。」

「カトリーナ様は何故、ダンジョンに挑んでいる事を家の人達に秘密にしているのですか?」

「色々事情があるのよ。それにしても、あなた凄いわね。これ鹿?」

「はい、鹿です。」

「今にも動きだしそうだわ。あなた、庭師の技、誰にならったのよ?あっ、もしかしてお母様に習ったの?」

「はい、母に教わりました。」

「本当にあなたのお母様は何者なのかしら?」

「あっ、いい所で会ったわ、ガーデン。アストリアを借りるわよ。」

「はい、分りました。しっかりお供をするんだぞ。」

「はい、ガーデン様。」



 ガーデンは目の前にある鹿の木に気付いた。

 これは何と言う技なのだ。

 初めて見る鹿のアートにガーデンは見入ってしまった。


「カトリーナ様。」

「何、アストリア。」

「カトリーナ様のレベルを上げる良い方法を思いついたのです。」

「えっ、レベルを上げる方法。」

「はい、ちょっと卑怯な方法ですが、カトリーナ様は卑怯な方法はお嫌いですか?」

「卑怯な方法は嫌いですけど、今はそんな事、言っておられません。早くレベル30にならなくてはならないのです。」

「では、これなど如何でしょう。」



 アストリアは70cm×70cmぐらいの大きさのカゴをカトリーナの前に置いた。


「これが卑怯な方法なの?」

「はい、これは私のご先祖様がお作りになった物なのです。」

「おかあさまではないのね。」

「はい、母の夫だった方がお作りになった物だそうです。」

「あなたのお父さまはお亡くなりになったの!!」



 アストリアは違いますと言いかけて、「はい」と答えた。


「そうなのね。」


 カトリーナは涙ぐんでくれた。

 大粒の涙が頬を伝わった。

 アストリアはギルドでカトリーナに話しかけられたのが、人族としては初めての事だった。

 心がドキドキしたのだ。

 今、カトリーナの涙がポロポロ落ちるのを見て、好きなのだと感じた。


 これが恋。


 何故か心が温かくなった。


「これは何なの?」

「これは罠です。」

「ワナ?」



「はい、ここにエサを入れて、これを獣の出る場所へ仕掛けると、ここが閉まって獣を捕らえます。

 そしてこのボタンを押すと、カゴが縮まり獣の動きを止めます。

 後は剣で止めを刺せば、レベルが上がるのです。

 こんな方法、嫌ですか?」



「いえ、やりますわ。今はどんな事をしてもレベルを上げたいのです。」

「では今日はこれを試して見ましょう。2個ありますので持って来ますね。」


 アストリアはカゴを2個背負ってやって来た。

 冒険者ギルドにつくと、既にアリアナ達は待っていた。


「アストリア、そのカゴは何なの?」

「アリアナ様、これはスライムを捕まえるカゴです。」

「そのカゴでスライムを捕まえるの?」

「はい。」

「でも、スライムはそのカゴの隙間を通り抜けるわよ。」

「このカゴは特殊なカゴで、この隙間を通り抜ける事は出来ないようになっているのです。」

「そうなの!!」

「そうなのです。このカゴを使ってカトリーナ様のレベルを上げましょう。」

「じゃあ、ダンジョンに行くわよ。」



 ダンジョン1階に来て、カゴをカトリーナは設置した。

 10分もするとカゴにスライムが掛かった。


「カトリーナ様、そのボタンを押してください。」

「ポチリ。」


 カゴは小さくなり、スライムの動きを止めた。


「スライムの身体の真中にある魔石が見えますか?」

「見えますわ。」


 カトリーナは剣で魔石を貫いた。

 スライムはダンジョンに融けて行った。

 二つ目のカゴにもスライムがかかっていた。

 これも倒して、またカゴを仕掛けた。

 次のカゴにもスライムがかかり、その次のカゴには角うさぎが入っていた。


 今、この1階層にはアストリア達の他に冒険者はいなかった。

 新人冒険者が、今はアストリア達以外にはいないのだ。

 もう直ぐ、冒険者学校の生徒達が、ここを訪れるだろうが今はまだ誰もいなかった。

 1日かけて28匹のスライムと角うさぎを倒して帰って来た。


 リポップ期間は1週間なので、明日からは2階層へ進み、野宿をしなければいけない。

 カトリーナは親の許しが貰えるのだろうか?

 領主館へ帰り、アストリアは昨日のように自分に与えられた部屋で眠り、朝日の出る前に起き出して庭木の剪定をした。


 今日はうさぎにして見た。

 昨日の夕食の時、領主館の全員が鹿の木を見て、驚いていたと聞かされていた。


「アストリア、おはよう。」

「カトリーナ様、おはようございます。」

「今日のうさぎも凄いわね。今にも跳ねそうだわ。」

「カトリーナ様。」

「何ですアストリア。」

「1週間ぐらい帰宅出来なくなりますけど、外泊の許可は貰えたのですか?」


「その点は抜かりないわ。今日からわたくしは1週間、アリアナの所に泊まる事になっているのよ。この日の為に、1年前から準備して来たのよ。」


「凄いですね。」

「そう、とにかくレベル30まで、成らなくてはならないのよ。では冒険者ギルドに行くわよ。」


 ギルドにはすでにメンバーが集まっていた。


「おはようございます。」

「おはよう、アストリア。これがあなたの剣よ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、行くわよ。」


 アリアナを先頭にダンジョン1階を進み、お昼ぐらいに2階層へ降りる階段に到達した。

 2階層へ降りて直ぐスライムが現れた。


「あれは私が対処するわ。カトリーナはワナを仕掛けてね。」

「分ったわ。」

「アストリアはカトリーナについてあげなさい。」

「いえ、アリアナ様、あれはポイズンスライムです。確実に倒さなければ、こちらが毒でやられてしまいます。」

「何故あれがポイズンスライムと分るのよ。」

「体が赤と黒のスライムはポイズンスライムで毒に気を付けるように母に言われました。」

「あなたのお母様はポイズンスライムと戦った事があるの?」

「はい、あるそうです。」

「分ったわ、じゃあ如何戦うかも習ったの?」

「はい、習いました。」

「それ、あなた出来るの?」

「はい、出来ます。」

「じゃあ、やってみて。」

「畏まりました。」



 アストリアは右手にアリアナから借りた鉄剣を持ち、左手で風魔法Lv1ウインドをポイズンスライムの下から風を吹かせて、ポイズンスライムを空中に浮かせて、魔石を剣で貫いた。



「えっ、あなた今、何したのよ?」

「母から習ったやり方で倒したのですけど。」

「そうじゃないわ。今、スライムが空中に浮いたでしょう。そして動きが止まったわ。」「あっ、あれは風魔法で浮かせたのです。」

「えっ、アストリア、あなた魔法が使えるの?」

「はい、使えますよ。」

「そう言えば、あなた15歳だったわね。その魔法、誰に習ったのよ。あっ、お母様にならったのね。」

「はい、母に習いました。」

「そうよね、さっきお母様から戦い方を習ったと言ったものね。じゃあ、カトリーナもその方法でスライムを倒せるのじゃない?」


「無理です。

 レベル8で剣術Lv1では、剣で敵を切ったり、突いたり出来ません。

 剣筋がフラフラでは、スライムは倒せません。

 他の方達なら大丈夫ですが。」


「分ったわ。カトリーナ、罠を仕掛けましょう。」

「アリアナ、ありがとう。」


「いえ、礼はアストリアのお母様に言うべきでしよう。

 それにあなたのカンにもね。

 これでレベル30になれる気がしてきたわ。

 本当の事を言うとね、カトリーナ、私無理だと思っていたのよ。」


「いいのよ、アリアナ、ありがとう。私の為に付き合ってくれて。」

「何言っているのよ、友達でしょう。罠を仕掛けるわよ。」




 1日をかけてワナを仕掛けては、魔物を倒して行った。

 ポイズンスライムだけは、アリアナ、ナタリ、アナリーゼがアストリアが風魔法で浮かせた所を剣で倒した。

 2階層をクリアした時、カトリーナのレベルが10になった。

 しかし剣術はまだLv1だった。


 ここで野宿になった。

 女性達はアストリアから10mぐらい離れて休む事になった。

 さすがに、トイレや身体を拭くところを見られたくなかったのだ。

 食事も干し肉と水で済ませた。

 ダンジョンには水だけはあるのだ。


 アリアナはトイレの為に、大きな木の所に来た。

 その木からアストリアが覗けた。

 アストリアは食事を作っていた。

 ダンジョン内で火を使っていたのだ。


 アリアナはもっと近くまで覗きに行った。

 すると何かを通り越したような感覚が襲った。

 そして突然、何か良い匂いが漂って来た。

 目の前にはスープにパン、シチューを食べているアストリアがいた。


「アリアナ様、どうかなされたのですか?」


 アリアナはアストリアの側まで来た。

 良い匂いに、お腹が「グーーッ」と鳴ってしまった。

 アストリアと目が会った。

 アリアナは顔を赤くした。


「食べますか?」

「えっ、食べていいの!!」

「はい、まだありますよ。カトリーナ様達の分もありますよ。」


 後ろを見たら、3人がいた。


「何これ、こんなに美味しいスープ、飲んだ事ないわ。」

「このシチューも美味しいわ。」

「何故、パンが焼き立てなの!!」

「これ、アストリアが作ったものなの!!」

「はい、今作ったばかりですよ。」

「あなた、料理も出来るの?」

「はい、母に習いました。」

「あなたのお母さんがどんな人が会ってみたいわ。」

「まあ、明日も早いですし、もう寝ましょう。まだ、身体も拭かれていないのでしょう。」

「そうだったわ。ごちそうさま。」

「アストリア。」

「何でしょうナタリ様。」

「あなたがさっき、私の側に来た時、あなたから汗の臭いではなく、バラの花のような匂いがしたのだけど、如何言う事かしら?」

「ナタリ、本当なの?」

「本当よ。」

「どれどれ、このアリアナ様が確かめてやるわ。」

「いや、アリアナ様、おやめ下さい。怖いです。」

「アストリア、じっとしていなさい。」



 アリアナはクンカクンカした。

 アストリアからバラの花のような匂いが確かにした。


「あなた人間なの?」

「いや、これが私の体臭です。」

「ウソおっしゃい。白状しなさい。」

「あっ、ひょっとしてクリーンポーションを使ったの?」

「アリアナ、あれは希少で金貨1枚もするのよ。」

「そうね、アストリアがそんなお金持っている訳ないわね。」






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