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田舎の新人冒険者

「こんにちは。」

「いらっしゃい。ご用件は何でしょうか?」

「冒険者になりに来ました。」

「では、そのステイタスくんの手に右手を置いて下さい。次にステイタスくんの目を見てください。次は名前を言ってください。」

「私はアストリア、ゴールドです。」

「最後に、その小皿の上に、貴方の血を一滴垂らすか髪の毛を1本置いて下さい。」


 アストリアは髪の毛を1本置いた。


 この時点で受付の女性の前のパソコンにアストリアのステイタスが表示された。

「はい、これが貴方の身分証です。隣のカウンターでお金をデジタルロムに交換してください。ここでは全てがデジタルロムで取引されてます。」

「他の人からデジタルロムを譲り受ける事は出来ますか?」

「はい、出来ますよ。相手の認識番号を入力して、承諾ボタンを押すと、相手が承諾していれば譲り受ける金額が表示されます。OKボタンを押せば、その金額が貴方のステイタスカードに入金されます。」

「ありがとうございます。」


 アストリアは相手のステイタスカード番号を入力した。

「000000000000001」

 次に承諾ボタンを押した。

 100,000,000ロムの金額が表示された。

 OKのボタンを押して終了した。


「他にご用はある?」

「貴女の名前は何んと言われますか?」

「あら、私に興味があるのね?」

「貴女は、私の家にある肖像画の女性にそっくりなのです。」

「その女性の名前はなんて言うの?」

「ユリア、ゴールドと言います。」

「あら、そうなの!!私の名前はAIユリアよ。よく来たわね。待っていたのよ。今度ゆっくりお話しましょう。」

「はい、是非お願いします。」


 この時、後から声が聞えた。

「貴方は新人よね。パーティーメンバーはいるの?」

「いえ、まだ1人です。」

「ダンジョンに入るつもりある?」

「はい、ダンジョンにアタックするつもりです。」

「あなたレベル30以下よね。」

「はい、レベル10です。」

「レベル30以下だと5名以上のパーティーでなければダンジョンに入れないわよ。どう、私達のパーティーに入らない?」

「ちょっと待って、カトリーナ。こいつ、村の出身よ。パーティーに入れるのなら、騎士の子供で女性がいいわよ。」

「あの、すみません。何故、私が村の出だと分るのですか?たしかに、フェアールは何も無い所なのですけど。」

「貴方、フェアール村出身なの? フェアール村は何処ら辺にある村なの?私、聞いた事もないわ!! 」

「フェアール村はずっと西の方にある村です。」

「西の方!!開拓村なのね。分ったわ、あなた、さっきステイタスくんに髪の毛を置いたでしょう。」

「はい、そうしました。」

「騎士の子供は自分の血を垂らすのよ。髪の毛を置くのは村出身者なの。」

「そんな規則があるのですか?」

「規則?そんなもの無いわよ。あたりまえの習慣よ。」

「習慣なのですか!!」

「あなた、そんな事も知らないの。どんな田舎から出て来たのよ。それに剣の1本も持っていないし、お金も無いのでしょう。カトリーナ、こいつはダメよ、足手まといになるわ。」

「アリアナ、私はこの方を助けたいと思うのよ。」

「そうなの、あなたがそう思うのならしかたがないわ。でも、私達にはあまり時間がないわよ。」

「それは分っているわ。それでも神ムーン シルバー様は困った人を助ける事を喜ばれるわ。」

「あのーーっ、私はご遠慮しておきます。あまり歓迎されていないみたいですし、そちらのメンバーは4人とも女性ですよね。私一人、男と言うのは、何んとなく居づらいです。」

「あなた、冒険者に男女の差別はないのよ。これは勇者様が冒険者の能力に男女の差はないと言われたからなのよ。」

「貴女は勇者様をご存知なのですか!!」

「あら、名のるのが遅れたわね。わたくしはカトリーナ、ベラドンナ12歳よ。」

「ベラドンナ!!それでは領主家のお姫様なのですか!!」

「あら、良く分ったわね。」

「はい、母に習いましたので。」

「あなたのお母様は物知りなのね。どう、遠慮はいらないわよ。それに宿も無いのでしょう。家に泊まらせてあげるわよ。」

「カトリーナ、本当にいいの!!」

「アリアナ、これは私の感よ。」

「あなたが、そう言うのならしかたが無いわね。」

「あなたの名前はなんと言うの?」

「えっ、私の名前ですか、アストリアと申します。」

「じゃあ、あなたを私達のパーティーに入れてあげるわ。感謝しなさい。」

「いえ、私は女性ばかりの中は居づらいのでご遠慮したいのです。」

「何言っているのよ、あなた男でしょう、遠慮は要らないわ。こう見えても私はレベル15なのよ。あなたより強いのよ。パーティーには入れてあげるけど、変な事をすれば死んでもらうわよ。分った!!」

「あっ、はい、分りました。」

「そう、分ればいいのよ、分かればね。後のメンバーは、こっちがナタリであっちがアナリーゼよ。みんな12歳よ。レベルはカトリーナは5、ナタリが10で、アナリーゼは12よ。じゃあ、早速あなたをパーティー登録するわよ。あなたのステイタスカードを私に見せてくれる。」


 アリアナは自分のステイタスカードをアストリアのステイタスカードにかざした。


「これでいいわ。あなたのステイタスカードにパーティー名が書き込まれているでしょう。OKを押してね。」

「ポチリ。」


 アストリアはOKボタンを押した。


「それで登録完了よ。」

 アストリアは自分のステイタスカードのパーティー名の欄を見た。

「ユウシャ」

「えっ、勇者パーティー!!あの、勇者パーティーっていいのですか?」

「私達は勇者ファンクラブのメンバーなの。このベラドンナでは、結構有名なクラブで人数も300名ぐらいいるわよ。」

「何か凄いクラブですね。」

「そうよ、クラブの歴史も100年ぐらいあるらしいわ。」

「100年前!!」

「まあ、それだけではないけどね。じゃあ、早速ダンジョンに入るわよ。」

「えっ、これから入るのですか?アリアナ様はダンジョンにお詳しいのですね。」

「何言っているのよ、みんなダンジョンは初めてよ。私達来年、冒険者学校へ入る事になっているのよ。みんな5月、6月生まれで、今年はまだ入れなかったのよ。」

「では何故ダンジョンにアタックなされるのですか?」

「まあ、事情が色々あるのよ。とりあえずあまり、時間が無いのよ。ダンジョンアタックの目的はレベルを30に上げる事よ。」

「レベル30ですか?」

「そうよ。」

「ではダンジョン30階のボス、ルナ、モスラを倒すのが目標ですね。」

「あら、あなたはダンジョンにも詳しいのね。」

「はい、母から習いました。」

「あなたのお母様は高位の冒険者なの?」

「いえ、母は普通の人族です。」

「人族?」

「はい。」

「変な言い方をするのね。まあいいわ。ダンジョンに行くわよ。」


 ダンジョンは冒険者ギルドから直ぐの所にあった。

 入り口は門があるだけで誰もいない。

 勝手に誰でも入れそうだ。

 ダンジョンの入り口の直ぐ西には砦があり、南側は城壁があった。

 その向こう側が海らしい。

 北側には兵士達の家が立ち並び、東側はローム川が流れている。


 5人は入り口でステイタスカードをかざして、ダンジョン1階へ続く小部屋に出た。

 小部屋のドアを開けるとダンジョン1階に出た。

 ダンジョン1階に入って全員驚いた。

 どこまでも続く草原が、そこにはあったのだ。


 全員立ち尽くして草原を眺めていた。

 3kmぐらい進むとスライムが現れた。

「あれはスライムよ。」

「あれがスライムなのですか? 」

「アストリア、あなたの所にスライムは居なかったの?」

「はい、スライムはいませんでした。」

「まあ、私も初めて見るのだけどね。」

「アリアナ様も初めてなのですか?」

「当たり前でしょう。魔物なんて普通居ないわよ。」

「えっ、ベラドンナには魔物はいないのですか?」

「居ないわよ。」

「では何がいるのですか?」

「うさぎや鹿、熊などね。ずっと遠くの村へ行けば、ヒドラがいるそうよ。まあ、出会ったら死を覚悟しなければいけないのよ。」

「ヒドラがいるのですね。」

「とりあえず、あなたは見ていなさい。剣を持っていなければ、戦えないわ。」

「はい、見学しています。」

「カトリーナ、私が盾でスライムを押さえるので、剣を構えて待っていてね。」

「分ったわ。」

「ナタリもアナリーゼも小楯を構えていてね。」

「分ったわ。」



 スライムはレベルの低い者が分るのか、カトリーナに襲いかかって来た。

 カトリーナは、とっさに剣をスライムに叩きつけた。

 カトリーナは剣術Lv1だ。

 剣は鋼の細身の剣だ。

 スライムの動きが早くて、皮の胸当てに直撃を受けた。

 そのまま後に倒された。


 スライムは次にナタリを狙った。

 ナタリは剣術Lv2で盾術Lv1だ。

 盾でスライムの攻撃を防いで、剣で切りつけた。

 スライムは二つに切り裂かれたが、まだ生きていた。

 切り付けたナタリの剣は刃先が融けた。


 スライムは合体した。

 そして、もう一度、スライムはナタリに飛び掛った。

 そこをアリアナが盾で押さえつけた。

 アリアナは剣術レベルは3で盾術Lv1だ。


「カトリーナ、剣を構えて。盾を外したらスライムを切ってね。」


 アリアナは盾を外した。

 カトリーナが剣をスライムに叩きつけた。

 しかしスライムの動きの方がカトリーナより早く、またスライムの直撃を受けた。



 戦いが長引き、角うさぎがやって来た。

 それも2匹、同時だ。

 一度に3匹の魔物と戦うのは、命に関わって来る。


「ここは一度、撤退しましょう。」


 アリアナが大声で撤退を指示した。

 最初にカトリーナを逃がし、ナタリ、アナリーゼと続いた。

 殿(しんがり)をアリアナが務めた。

 アストリアも最後まで、その場にいた。


「アストリア、逃げるわよ。」

「了解です。」


 アリアナの横をアストリアは走った。

 3kmぐらい走って1階の小部屋のドアに辿り着いた。

 小部屋の中に入って全員の傷を確認した。

 カトリーナが胸を押さえていた。


「カトリーナ様、大丈夫ですか?」

「ヒールポーションを持っているから大丈夫よ。」


 カトリーナはヒールポーションを飲み干した。

 他に負傷した者はいなかった。

 しかし、一番の痛手はナタリの鉄剣だ。

 1本5,000ロムもするのだ。

 それがダメになった。


「アリアナ様。」

「何ですアストリア。」

「アリアナ様ならスライムを倒す事が出来るのではないですか。何故アリアナ様がスライムを倒されないのですか?」

「それは私達の目的をあなたに言ったわよね。」

「はい、レベル30になる事だとお聞きしました。」

「先ず、急いでレベル30に成らなければいけないのはカトリーナなのよ。」

「それには色々な事情があるのですね。」

「分かりが早くなったじゃないの。」

「では、私もはっきり申し上げます。カトリーナ様の剣術の腕ではスライムを倒す事は難しいと思います。剣は切るもので叩きつけるものではありません。」

「言うじゃないの!!!じゃあ、あなたは剣が出来るの?」

「ステイタスカードに剣術Lv3とありました。」

「あなたも剣術Lv3なの!!やるじゃない。何処で習ったの?」

「母から教わりました。」

「あなたのお母さん、何者なのよ!!まあ、いいわ。明日もアタックするわよ。いいわね。」

「はい、大丈夫です。」

「アストリア、あなた剣術レベル3なのに剣は如何したのよ?」

「剣は家に置いて来ました。今は、この短剣で戦っています。」

「それじゃ、うさぎでも倒せないわよ。いいわ、明日は私が剣を貸してあげるわ。それで役に立ちなさい。何よ、その目は!!嫌なの!!」

「いえ、ありがたくお借りします。もしスライムに融かされたら如何なります?」

「その時は弁償して貰うわよ。」

「御いくらでしょうか?」

「鉄剣は5,000ロムよ。剣術Lv3でレベル10ならレベル1のスライムに負ける事は無いでしょう。では明日冒険者ギルドに9時に集合よ。」

「アストリア、あなたは約束どおり、私の家に泊まるといいわ。」

「ありがとうございます。その前にギルドに寄って行ってもいいですか?」

「何しに行くのよ?」

「採取した薬草を買い取ってもらいに行きたいのです。」

「えっ、あなた、何時採取したのよ?」

「カトリーナ様達が戦っておられる間に採取しました。」

「何を採取したのよ?」

「ブルーフラワーが20本とルナ草が20本です。」

「えっ、そんなに採取出来たの!!」

「はい、あの場所には、まだ沢山咲いてました。群生地だったのでしょう。」

「でも、凄いわね。あの状況で、それだけ採取するなんて!!」



 全員でギルドにやって来た。


「買取コーナーはあそこよ。」

「はい、行って来ます。」


「すみません、買取をお願いします。」

「はい、少しお待ち下さい。」


 受付のお姉さんはカイケイくんに薬草を呼び込ませた。

 パソコンに数と買取金額が表示された。

 ブルーフラワーが20本、ルナ草が20本、買取金額は20組×20ロム=400ロム。

 200ロムで宿屋の1泊2食付の値段にあたる。


 ナタリは武器屋にやって来た。

 スライムに融かされた剣を引き取ってもらい、別の剣と交換してもらうのだ。

 引き取り価格が4,000ロム、新品が5,000ロムだった。

 ナタリは1,000デジタルロムを支払って新しい剣を手に入れた。




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