未来と過去が意味なく邂逅する〜その自慢、不愉快です〜
思い付いたので書いて見ました。
ファミレスでバイトを始めてから半年。お小遣い目当てで始めたバイトは、無理をしない程度のシフトでも満足出来る額を稼げていた。そんなある日の夕方。初めてのお客様がご家族3人でやって来た。滅多に外出する事が無いのか、お子様の坊っちゃんは嬉しそうだった。はしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいではしゃいで……、最初はニコニコ笑顔だったご両親も周りへ気遣って、子供を落ち着かせようと必死だった。
その矢先だ。
当店では大人にはミネラルウォーターだが、お子様にはオレンジジュースをサービスで出している時間帯があるのだが……、その時間に入店していたお坊ちゃんに出していたオレンジジュース。それをど派手に零してしまったのだ。
メニューが来るまでは動画でも見せようとしていたのか、丁度母親がスマホを出した処で、そのスマホもビッショビショ。
流石にはしゃいでいたお坊ちゃんも凍り付き、ご両親は2人共、恐らく一括して叱り出す処だった。
私はさっとタオルを取り出し、ニコニコと笑い、「あらあら〜」とお坊ちゃんの濡れた箇所を拭き出した。そこへ他のバイトも来て、ご両親に対応をし出した。私達が来たからか、ご両親も忽ち冷静になられ、「申し訳無い」と言いながら、坊っちゃんに柔らかく注意をしていた。
その後は何事もなく、終わった。
我ながら今日の対応は良かったと思わずSNSに挙げていた。勿論、店名等は出していなかった。
翌日。スマホがチカチカ光っているので確認すると、コメントが着ていた。「おおっ!」となりながら読んで行くと、あれ? ご両親の悪口……?
子供が零したジュースの犠牲となったスマホにご両親の怒り爆発!! 怒鳴る一歩手前で華麗に私、参上!!! 気の抜けた声掛けとタオルで素早いフォローで大泣き回避! 流石は私!
何だかご両親が虐待してるみたいなコメントで、私もそれに気付かないと駄目だよー、みたいな事を書かれている。何でそうなったか分からないけど、とりまご両親の怒りの理由をちょっと詳しく書いた。
お子様がずっとはしゃいで、周りに気を遣って、イライラが溜まってたみたいで〜以下略
これで良し! さ、学校行く準備しなきゃねー。…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。
バイト先の店長からラインが送られて来た。グループを作っているラインで、要は連絡網だ。「このアカ知ってる?」となっていたのは私のSNSアカだ。余り考えず、殆ど反射的に「私のアカですよ〜」と正直な返事をした。
数日後、クビになった。
久々に懐かしい街に引っ越して来た。前にこの街に居たのはもう10年以上前になるだろうか。夫に案内がてら、懐かしい街を家族で廻る事にした。
「あら?」
私はその中である店を見付けた。昔バイトしていた店の1つだった。当時は時給の兼ね合いで幾つか転々としていたから、具体的な時期までは思い出せないけど間違いないない筈。折角だから入ってみた。
「すっごいすっごいすっごいすっごいすっごいすっごい!!!!」
理由は不明だが、テンション高く燥ぐ息子。最初は微笑ましいレベルだったけど、流石に周囲に迷惑だろうと言う処まで騒がしくなったので、静かにする様に言い聞かせる。夫も大人しくする様に叱った。けれどおちゃらけ属性のある息子はますますテンションが高くなる。こうなると苛立って来てしまう。そして極め付けが起こる。
興奮の余りに息子がジュースをぶち零したのだ。
一瞬の間。次の瞬間、私も夫も声を荒げる筈だった。荒げてしまう筈だった。
「あらあら〜」
しかし間延びした声掛けで近付いてきた店員さんが息子の服を拭き始めた。更に別の店員さん達もやって来て、フォローしてくれた。多分、バイトだろうな、と思いながら私達は頭を下げて、息子に注意した。
翌日。夫と息子の居ない間に引っ越し作業後の大掃除を始めようとした時だった。スマホが光っている事に気付く。水没程では無いとは言えど、ビッショビショになったスマホが壊れて居なかった事はラッキーだった。掃除の前に、と確認するとSNS画面が開いた。
覚えがないアカだが、こう言うのは珍しくない。ちょっと興味を唆られて、読んだ。
子供が零したジュースの犠牲となったスマホにご両親の怒り爆発!! 怒鳴る一歩手前で華麗に私、参上!!! 気の抜けた声掛けとタオルで素早いフォローで大泣き男児回避! 流石は私!
何と言うか既視感を覚えたソレには「虐待を疑う」コメントが付いている。思わず、件のアカを確認する。
(昨日のバイトだわ……。)
プロフィールを確認すると、それが分かる情報があった。となる間違いなく、この内容は私達の事だった。素早い対応に感謝したが、ソレとコレとは話は別だ。何と言うか私達に悪意がある様な書き方だし……。少し迷ったが、私は昨日の店に連絡をした。
あれ? そう言えば私があの店のバイトを辞めた理由って………、
電話の後で思い出した。辞めたんじゃない。私はあの店をクビになってる。以来、あの店に行かなかったけど……、確か彼処の店は閉めて、別の場所に移転しなかったっけ……?
私は慌てて、店の検索を初めて知る。あの店はもう、あの場所に無い。電話番号を確認したページも見付からない。さっき掛けた電話の記録も消えた。あのSNSも何処にも無い。でも思い出していた。
あのアカは当時の私が………。
後日、店のあった場所に行ったが、そこは駐車場に変わっていた……。
間違いない、もの凄い事が起こっている。だけど一体、何の意味があったのか………。謎過ぎるんだけど。
って事が何年か前にあったわ。信じるかどうかは任せるけど。え? 黒歴史? 分かんない? SNSの件に決まってるじゃない。
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。