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色彩の守護者  作者: 桜井愛明
第一章 日常編
22/52

第22話 一段落

 結局ファッションショーは中止になり、後から来た警察に卯ノ花たちは無事逮捕された。

 スタッフやモデルなどは話を聞いた後に帰され、あかりも大きな怪我自体はなかったが、念のため検査を受けることになり、柊に付き添われて病院に向かった。

 一方、事件に大きく関わった八尋たちは、現場の状況説明をするために会場に残ることになった。


(なるほど、事件で動くのは警察なのか……)


 異能力が絡む事件では、守護者と警察のどちらが動くのかと以前から八尋は気になっていた。

 ちょうどいた警官に八尋が尋ねると、その辺りは警察と守護者協会の間で良いバランスで決められているらしいが、詳しいことは教えてもらえなかった。

 今回八尋たちが異能力を使用したのは防衛のためである、ということを八尋たちと土屋から説明すると、許可証を所持していたこともあり、警察からは特に咎められることはなかった。

 後日、新橋は守護者の資格を剥奪され、取り調べを受けている、と八尋は風の噂で教えてもらった。

 そして卯ノ花の事情聴取は、新橋を含めた今回の面子については、金で雇った、報酬を釣り上げたらほいほいついてきた、とあっさり供述したらしい。

 こんな手の込んだ誘拐には恐らくバックがいるだろうと警察も捜査を進めているが、卯ノ花は「私一人で計画した」としか答えず、それ以上は黙秘を続けていると八尋たちは教えてもらった。


「ひゃ〜、まさか学外活動がまさかこんな展開になるなんてねぇ」


 帰り道。

 事情聴取や現場確認が終わり、ようやく解放された八尋たちは会場を出て、駅に向かっていた。

 外はちょうど日没前で、夕焼けと夜空が綺麗なグラデーションを作っており、それを眺めながら涼香が大きく伸びをする。


「やっぴーときょんたん、話聞いてた感じだと、結構がっつり戦ったみたいだね。無事でなによりっ」

「ま、八尋との特訓の成果っすね」


 涼香に軽く笑って返す恭平だが、卯ノ花との戦いでところどころケガをしているのを八尋は知っていた。

 しかし、他人に格好悪いところを見せたくないという恭平のプライドが邪魔をしているのか、周りにその素振りを見せることはなかった。


「そうやって無理すんのやめろよ」

「家でちゃんと治療するって」


 お互いにしか聞こえないような音量で、八尋と恭平はやりとりをする。

 涼香は後輩たちが異能力を使って活躍したことに興味津々なのか、さらに恭平に話題を振った。


「ねぇねぇ、どうやってあの人捕まえたの? 幼馴染のコンビプレー的な?」

「そんな感じっすね。そういえば黄崎先輩たちも大変だったって聞いたんすけど、大丈夫でした?」


 恭平が尋ねると、涼香はよくぞ聞いてくれました、と言わんばかりのニマニマとした顔で話し始める。


「あたしたちは迅速な対応でお客さんを助けて、凌ちゃんと突如現れた桃姫のお兄さんとなんなくトラブルを解決。その後はもう手に汗握る展開で……」

「話を盛んな」


 避難させて終わりだっただろ、と後ろから凌牙が涼香にグサリと現実的な言葉をぶつける。

 ちょっとくらいいいじゃんと涼香がふてくされる横で、やれやれとエリナは呆れていた。

 さらにその後ろではその光景を見守りながら、誠と貴一が並んで歩いていた。


「貴一は停電を直したりしてたらしいな」

「あの場は黄崎と灰谷に任せても大丈夫だと分かっていたから、土屋さんと動けたのが大きい。誠こそ、会場で守護者と戦ったと聞いたぞ」

「そうそう。そこまで長期戦にならなくて良かったよ」


 空を眺めてなにか言いたそうにしている誠に、そうだな、と貴一は一言だけ返した。

 駅に着いて各自解散になったところで、八尋は恭平に先に行っててと伝え、ホームに向かおうとするエリナを呼び止めた。


「紫筑先輩!」


 八尋に呼ばれてエリナは立ち止まる。

 近くにいた涼香に告白かな、といつぞやのエリナと同じようにからかわれるが、エリナは八尋の雰囲気から涼香と凌牙を追い払い、人混みを避けて駅の端の壁に寄りかかる。


「なに?」

「俺、決めました」

「なにを?」

「目標です。俺は、自分の周りの全てを守るために守護者になります」


 八尋の目が真っ直ぐエリナを見つめた。

 その真剣な表情に、エリナはなにかを考えた後に八尋に尋ねる。


「……それで?」

「あ、えっと、紫筑先輩が言う覚悟っていうものがまだちゃんと分かっていないんですけど、それも絶対見つけます!」


 軽くあしらわれるだろうと思っていた八尋は、まさかエリナから続きを求められると思っておらず、真剣な表情から一転してしどろもどろになりながら、なんとかエリナに返事を返した。


「そのためにあたしにわざわざ報告しに来たの?」

「え、それは……」

「あんた、変わってるね」


 たしかになぜだろうと八尋は頭を抱える。

 おそらくショーの前日にああ言われてしまったが、今の自分はこんな目標ができたと見返すために言いに来たのかもしれない。

 そんな八尋を見て、エリナは小さく笑う。

 

「あんたが決めたことならそれでいいんじゃない? 一度決めたなら、その信念は曲げないようにしなよ」

「はい!」


 そう言って、エリナは駅の人混みに紛れて去っていく。

 普段ポーカーフェイスであるエリナの初めて見る笑顔に、改めてあの人はかっこいい、と八尋は心の中で尊敬した。


   * * * * *


「ただいま」

「おかえり、遅かったね」


 家に帰ると、風呂上がりらしい透がラフな格好で出迎えた。

 事件解決からバタバタしており、透に連絡を入れるのを八尋はすっかり忘れていた。帰る時に透から電話が一件入っており、『遅くなったけど今から帰る』とだけ送っていた。


「ごめん、電話出られなくて」

「いいよ。連絡もないからなにかあったのかと思って」


 心配そうに言う透に、まさに何かあったけど、と八尋は思い、透に事件があったことを簡単に説明した。

 話を聞き終えた透は青ざめた顔で八尋を見つめ、今にも泣きそうな表情で八尋の肩を抱いた。


「八尋が無事で良かった……!」

「心配かけてごめん。俺は全然なんともないから」


 大袈裟だよ、と八尋は笑って流そうとしたが、肩を力強く掴む透の手が震えていることに八尋は気がつき、それを見て、八尋は「ごめん」と小さくつぶやいた。

 透は下を向いて息を深く吐き、パッと顔を上げて表情を切り替えてキッチンに向かう。


「ご飯食べてないなら作ってあるからな。それともあったかいココアとかいるか? あ、先に風呂入るか?」


 いつもの明るい透に八尋はおかしくなって笑い、透に代わって自分の分の夕食を温める。

 その後シャワーを浴び、もう寝ると透に伝え、自室のベッドに倒れ込むようにして横になった。


(急に疲れが出てきたな……)


 それほど異能力を使ったわけではないが、張り詰めた緊張状態の中にいたせいか、確実に八尋に疲労が溜まっていた。

 するとスマホの通知が鳴っていることに気がついて手を伸ばすが、画面を見る気力も残っておらず、八尋はスマホに手を伸ばしたまま眠ってしまった。

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