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赤毛のアンナ 極光の巫女  作者: 桐乃 藍
第1章
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異世界

 鍾乳洞(しょうにゅうどう)には各所に火が灯され、ドラゴンやオークなどの怪物達が何かを探すように忙しそうにしていた。

 怪物達から少し離れた暗がりに成瀬(なるせ)ユウキは倒れていた。

「うっ……」といううめき声と共に目を開け身体を起こす。

「また、あの夢か……」

 先刻まで見ていた幼き頃の夢を思い出すように額に手を当て、ため息を吐いた。その場を立ち上がり周りを見渡すユウキ。

「ここはどこだ?」

 一番初めに目に付いたのは、暗がりの向こうに見える火の明かりに灯された異形の怪物達の姿。

「……あれ……マジか!?

あんなのゲームかアニメの中しか見たことないぞ。いったいここはどこだよ?」

 ユウキは一度驚いた後、フラッシュバックのように先程の橋の上での光景を思い出した。

「そうだ! アンナは!?」

 周りを見渡しても、どこにもアンナの姿が見えない。

「あいつ、どこ行ったんだ?

まさかモンスター達に捕まったりしてないよな?」

 直後に、後ろから足音が近づく音と話し声が聞こえてきた。


「この辺りのはずだろ? 早く探せ!」

「元はといえば、俺は一緒に連れて帰ろうって言ったのにお前が人間は放っておけって言ったからだろ!」


 2人組みの会話が聞こえ、ユウキは慌てて近くの岩陰に隠れた。

 2人組みの足音が更に近づき、話し声と足音はどんどん大きくなり、やがてその姿をユウキの前に現した。

 2人組みは背中から翼の生えた黒い肌のガーゴイルだった。辺りを丁寧に何かを探し回っている。


「あー、見つからない。だからあの時、2人とも連れ帰れば良かったんだ!!

このまま見つからずに魔王様からお叱りを受けたらお前のせいだぞ!」

「過ぎた事をいつまでも愚痴愚痴言うな! どうせ生身の人間だ。そう遠くまでは逃げられないさ」


 2人の会話からユウキは状況が掴めてきた。

「魔王!? ここは魔王の住処の近くということか! そんなのありか!?

なんで冒険の始まりがラストダンジョンから始まるんだよ。初っ端から詰みゲーじゃねーか」

 2人組みに聞こえないようにユウキが続けて呟く。

「倒れてた2人のうち1人を連れ帰ったということは、アンナだけ魔王の住処に連れ帰って俺だけ取り残されたんだ。

……理由はわからないけど、俺まで魔王から連れてくるように命令されたアイツらが探しにきてる感じだな」

 2人組みの捜索範囲がユウキに近づく。

「くそっ! このままここにいても捕まる。でも走って逃げ切れたとしてもアンナを置いていくことになる……」

 ユウキが周辺の町まで逃げ切り、助けを呼んでアンナ救出を行う算段と覚悟を決めようとした時だった。


「やっと目が覚めたか?」


 ユウキの後ろから突如、女性の声が聞こえる。

 ユウキはすぐさま振り返ると、そこには紫色の美しい長い髪と紫色の瞳、膨よかな胸と背中からガーゴイル達と同じような翼を生やした魔族の女性が立っていた。

「なっ!? いつの間に……!!」

 そう、ユウキは先程岩陰に隠れる時、確かにそこに誰もいない事を確認していた。

 ユウキの後ろには人が一人やっと立てる程度のスペースしかない事と、ユウキの背後まで移動するにはガーゴイル達が現れた一箇所の入り口から移動するしかない事を確認した筈だった。

 ユウキは思った。

(確かにあの入り口から俺は目を離していない。あのガーゴイル達以外、誰も通過していないぞ! なんでだ!?)


「本当にルナの言っていた通り黒髪、黒い瞳だ!

まさか片翼の女神(かたよくのめがみ)と同じ姿をした人間がいるとはな……。信じられん」

 魔族の女は驚いたように話した。


(なにをこのナイスバディな姉ちゃんは言ってるんだ?

片翼の女神(かたよくのめがみ)? なんのことだ。やっぱり敵か?)

 ユウキが警戒を強め、一か八かガーゴイル達が来た入り口に向かって走り去ろうした時だった。


「眠れ」


 魔族の女が、尻尾の先をユウキの額付近に瞬時に伸ばし、音波のようなものが発生した瞬間、ユウキはまた深い闇に落ちていった。

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