『前回めちゃかっこいい感じて煽ってたのに、普通に逃げれてんじゃん...、もーそういう展開じゃなくもっとすごいの!待ってるから、期待してるから!』
目の前に文字らしきものが表示されてくる。
(ステータス)
ドライ=マクダレン 18歳
種族:ホムンクルス 種族値:不明
力: 5 体力:5 精神:5 敏捷:5 容姿:17 知性:15
SAN:不明
※早期受肉のため一部能力値低下
(スキル)
精神汚染:無効
SAN値減算:無効
クトゥルフ言語:理解
(特殊スキル)
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※閲覧権限がありません。
能力値を見た俺は、ガックリと肩を下ろす。
要するに、母親よりも能力値が低すぎるのだ。
最低限の戦闘系のスキルもない。
早期受肉のため一部能力値低下という文字が気になるが、どうやら俺はルックスと知性以外の産まれ方を失敗してるらしい。
ありえない...、転生させたのに能力値低すぎだろあの邪神!!
力と体力普通以外じゃねーか!非力で病弱とか、走って逃げることすら無理だろ。
「わかったよ、これじゃあやつらと闘っても返り討ちに合うだけだよね。
しかしこんなに弱かったなんて...、たしかにちょっと動くだけですごい疲れると思ってたらこれが理由だったのか。」
「そうだね、魚人顔は力も体力もすごいんだ。
人間の大人3人がかりでようやく捕まえれるぐらいだよ。
あんたなんか、捕まったらひとたまりもないよ。気をつけるんだね。」
「わかったよ、無茶するよりこれじゃあ自分がもたいないからな。
しかし、早期受肉のためステータス低下って書いてあったがあれは何なんだ。」
「それがわからないんだ。
普通ならもっと産まれるのも遅い予定だったのに、すごい光に包まれたと思ったら次の瞬間みるみるお前が成長していったんだよ。
神様ってやつなのかねえ。
気づいた頃には、成体に近いぐらいのサイズだった。
ただ、そこから魚人顔をちらほら見かけるようになってきてね、この島を出た方がいいって二人で決断したんだ。
そん時にはもう遅かったけどね。
あんたが産まれるまで、私達が動けないってこともしっかり見られてたらしい。
研究施設を乗っ取られるのも時間の問題ってほど、散々好き勝手にされていたみたいだね。
どうやらアレを起こす儀式場も研究施設の地下を開発して作ったみたいだしね。」
「さっきから、アレを呼び出すだの呼び起こすだの言ってるが、アレってなんのことなんだ?」
ヨグもアレを止めにと言っていた、よっぽど大きな力を持つものなのだろうか?
「アレは一つの封印されていた悪き神様なんだよ。とある時、大きな戦いがあってね、何とかその神を封じ込めたのさ。
ただ、最近その封印がどんどん弱まってきていてね、どうやら何者かが解放しようと企んでるらしい。
ただアレの名前を口に出すと、アレが私達を見つけちまう可能性があるからね。
あんたも意識しちゃいけないよ、アレは常に信者を探してるからね。」
そう言いながら、テレシアは下水道からの入り口をゆっくりと開けた。
「どうやらあいつらは、いないみたいだね。
<ハインド>を使うよ、このスキルはあんたも取得可能さ、暗闇に潜んで移動する技術だよ。
コツは、素早く、静かに、正確に次の闇に移動することさ、じゃああたしの真似をしてついてきな。」
そういうとテレシアは、ランタンの火を消しゆっくり闇にとけていく。
本当に目の前に居る存在感が薄くなったようだ。
俺も見よう見まねで冷静に静かに、暗い場合を選んで移動する。
もちろん意識は、常に周囲に敵が居ないかを意識しておくのだ、その瞬間ピコンと頭の中で音が鳴った。
目をつぶるとポップアップ表示が出ている。
内容は、「スキル<ハインド:1>を取得しました。
スキルの詳細については、スキル名をダブルクリックしてください。」
ダブルクリックだと?そんな機能あるのか?
ただハインドのスキル取得のおかげか、移動もだいぶ楽になった。
気がつく頃には、スキル<索敵:1>を新規獲得。
ハインドスキルは3まで上昇した。
どうやら、スキル保有者の指導を受け実践しているため、スキルの伸びが早いらしい。
ただし4以上は簡単に上がらないそうだ、スキルを教える側の人間のスキル上限値を超えるのはとても難易度が高いらしい。
ようはさらに知りたいなら、さらにうまいやつに学べってことだそうだ。
つくづくズルが効かないらしい、なんといういやらしいシステムなのだ。
ハインドで巡回中の魚人顔を避けながら、二人は施設に外を目指す。
魚人顔を観察しながら居るが、どうやら彼らは2人1組でペアとして同じ場所を回っているらしい。
施設から外は長い廊下で、入り口もオートロックのため侵入者がいれば丸わかりだ、しかもしっかり影がないように廊下までをライトアップしてやがる。
「これじゃあ、出るに出られないじゃないか...、ここまで対策バッチリだとやる気なくすよ。」
まぁ、それを見てあの邪神はニヤニヤしてるんだろうけどな。
思い出すだけで腹が立ってくる、絶対あいつをボコボコにしてやらないと気が済まないぞ。
「入り口部分の電気は看守室で管理してるはずさ、ブレーカーごと落とせば5分ぐらいは入り口まで移動できる時間があるはずだよ。」
「場所はわかるのか?」
「大丈夫さ。ここの設計当時からあたしは立ち会ってるからねえ。
看守室は倉庫区画の奥にある。じゃあ行くよ。」
テレシアはこういう場面にはとことん強いらしい、さすがなのか母の強さなのか。
看守室の入り口に着くと中から声がする、何人かいるようだ。
看守室の扉はどうやら、シリンダーキー式の鍵らしく、キーピックで開けれるのだが問題は中にいる奴らをどうするかだ。
「中にいるやつを出さないとどうにも出来ない、弱ったねえ。
そうだあんたのローブを見えるとこに括り付けておびきだすってのはどうだい。
どうやら看守室にも窓があるみたいだし、いい方法じゃないか。」
「そうすると俺は全裸になるんだが...。」
「それじゃ何かい、あたしに脱げっていうのかい。レディに恥かかせんじゃないよ。」
母親のドスの効いた声で脅されたら逆らえるわけでもなく。
俺はしぶしぶ、自分のローブを持って、看守室窓から見えるギリギリの位置にモップを使って立てかけておいた。
しばらく変化がなかった看守室だが、どうやら一人が気づいたらしい。
ギャーギャーという声が一段と大きくなり、看守室の2人が飛び出してきた。
「よし今だよ!」
タイミングを見計らい、テレシアは入り口をキーピックで開ける。
俺は周囲を警戒しつつ、危険が迫ったらテレシアに連絡する役だ。
「空いた。入るよ。」
時間もないので看守室に入り、玄関の主電源を探す。
とロッカーを見つけたので、とりあえず着るものがないか探していたら、中からズボンと作業着を発見した。
よかった、全裸脱出としてたら一生の恥を背負う大変な事態になっていた。
「あったこれだ。これがブレーカーだ。
タイミング合わせて、一気に落とすよ。」
その最中、ローブを見に行った魚人顔が戻ってきたらしい、ギャーギャーと言う泣き声が近づいてくる。
「よしじゃあ、あいつらがドアノブに手をかけるのと同タイミングでブレーカーを落とす。
その後、一気に扉を開けばある程度混乱するはずさ。
よしじゃあブレーカーを落としとくれ、あたしがドアを開ける。
「行くよ!....今だ!」
バチんという音と共に周囲は暗闇に包まれた。