『気がついたみたいだね、転生先の選択肢聞くの忘れちゃったけど、君ならなんとかなるさ。笑』
ん...、どうなったんだ俺。
すごい激痛に襲われて...。
二日酔いのような気怠さがあるが、なんとか無事みたいだ。
ゆっくりだが思い出してきた。
邪神の人形に会って、それからスキルを与えられて、そのまま気絶したらしい。
目を開けるとガラス素材の壁が見える。
どうやら俺は何かに閉じ込められているみたいだ。
壁から周りは曇りガラスなのか、周りを見渡すこともできない。
「なんだ、どこだここ。
おい誰かいないのか!
開けてくれ!出してくれ」
1時間ほど壁を叩いたり、大声で叫んだが、結局誰も来なかった。
おいおい、スタートラインからこの扱いってさすがに酷くね?
動けないし、とりあえず冷静になろう。
こういう時だけはマイペースな自分の性格が頼もしく思う。
ん?マイペースってなんだ?
思いついた言葉だが全く記憶にないものを思い出す自分に違和感を感じる。
「待って、俺邪神に会う時点より前の記憶が...全て抜けている。」
その箇所の棚だけ、元からありませんでしたという感じだ。
くそっ、くそっ、さすがにそれは無いだろ!
せめて過去の記憶でもあったらまだマシだが、
それすらもないとか鬼畜ゲームかよ!
怒り身を任せて、暴れていると、ガタガタっと全体が揺れて正面ガラスの扉がゆっくりと開いた。
「おおっー目覚めたぞ!これが依代かい。」
声の主はどうやら、60代ぐらいの緑のローブをかぶった温和そうな女性だ。
「長い時間かけて作ったのだ。ここで失敗したら元も子もないからな。」
反対側には同じく60代ぐらいの男性が気難しそうな雰囲気で声を出す。
依代?俺をみて作ったと言ったぞこいつら。
「なんだどこだここは。」
「初めまして、私たちは君の創造主だ。
私の名前は、ヨグ。
彼女は、テレシアだ。
二人で君を作り、魂を入れ、そして今の身体まで成長させたのだよ。」
どうやら聞き間違いではなく、俺はこの二人に作られたらしい。
二人からは<敵意>や<従属><支配>は感じられない。
むしろ俺の誕生に喜んでる感情すら見受けられる。
「創造主?俺はお前らに作られたのか?」
「驚くのも無理はないさ。
私はテレシア、あんたと同じホムンクルスさ。
私達も驚いてるぐらいの奇跡なんだ。
しかし、産まれてすぐに会話出来るとは驚いたもんだね。」
一気に血の気が引いていく。
俺は人間ですらないみたいだ。
しかも産まれてと言った、ここで、この中で今俺は産まれたのだ。
「しかしゆっくり話している余裕はない。
もうすぐここはアレに飲まれる。急いでここを離れなければ。
産まれてすぐではあるが、我々は代理出産したのだ」
ショックの最中、酷い追い討ちだ。