物語との出逢い
初めまして。梅野光と申します。とてもながい話を思いついたのですが、一人では完成しないと思いここに投稿しながら続けていこうと考えています。
物語の構成として「現実世界→物語の世界→現実世界→物語の世界→…」というものになっております。この理由は物語最後に分かるのですが、最後まで書き切れるかどうか…とりあえずぼちぼち投稿していこうと思います。
ここはとある高校、演劇部の部室の一角。A.Sという部員が頭を抱えていた。
「一人ひとつ、劇の話を作ってこいだなんて……」
A.Sは顧問から出された課題についてあれこれ考えているのであった。何かヒントはないかと部室に来たものの、あるのはロッカーと演劇についての本数冊、学校の机と椅子が二つずつ。唯一の窓は北側にあり、日は差しこんでこない。野球部の練習のかけ声が遠く聞こえる。いつもの見慣れた光景からは何も着想は得られそうになかった。
「どうすっかなぁ~…」
とりあえずA.Sは二つのうちの一つの椅子に座り、背もたれにこれでもかと寄りかかってみた。猫のように全身を伸ばしてみるとバランスを崩し、椅子と共に背中から床に落ちてしまい、部室中に大きな音が響いた。
「つ~~~…」
鈍くも響く痛みに顔を歪ませながら体を起こす。
『部室に誰もいなくて良かった』
とA.Sは思った。A.Sは高校一年生、つまりは部活では一番後輩であり、部員によくからかわれるのだった。倒れた椅子も起こして元に戻そうとして、気づく。
一つのロッカーが開いていたのだ。そのロッカーは古くさび付いており、男の部員が顔を真っ赤にして踏ん張っても開かなかったものだ。箱形の塊と化したロッカーをそろそろ撤去しようという話があがっていた。
「さっきの衝撃で開いた、とか…?」
とりあえずの推測を呟いてみるA.Sだが、次の瞬間にはロッカーが開いた謎など頭から消えてしまった。ロッカーには大量の冊子が積んであったのだ。
思わずロッカー近くに寄り、一番上の冊子を手に取る。冊子は少し埃を被っていたようでA.Sは少し眉間にしわを寄せてその埃を払った。表紙には
【このながく、ながい物語を読み終える頃には。】
と印刷されており、表紙の右上に①と手書きしてあった。手に取った冊子の下に積んである冊子に目をやると同じ題が印刷されおり、右上に②と手書きしてあった。
「もしかして、これ全部続いてるのか?」
二十冊以上の冊子の隙間に指を入れてA.Sは確認してみると、やはりこの冊子は
【このながく、ながい物語を読み終える頃には。】
との題であった。そして右上に律儀に、巻数と思われる数字がふられているのである。
その時A.Sはひらめいた。
「この話を元に劇の話作ればいいかも!」
二十冊以上ある話をどうやってまとめるというのか、というごく当たり前の問題はA.Sの頭にはなかった。A.Sは通学用のリュックサックを、いつも自分が使っているロッカーから取り出した。そのリュックサックから学級通信などを入れているクリアファイルを出した。クリアファイルに先程の、一番上の冊子を折れないように入れた。
A.Sは帰宅して自室に入るとすぐに冊子を取りだした。A.Sは久々の高揚感に身震いした。誰のか分からないが、長年開かなかったロッカーに入っていたこの冊子には一体何が書いてあるのだろうか!親に隠れて長電話をするような、少しの後ろめたさとそれ以上の
「わくわくするなぁ!」
少し口角を上げながら表紙をめくった――