34.ラブストーリーは唐突に リモート・桃未さん②
「……っとに、面倒だよな~! 何でウチの学校てか、夏休み期間に登校しなきゃなんないんだろうな」
「そんなもんだろ」
「真緒は諦めがいいな。ところで聞いてもいいか?」
「……あぁ、アレだよな? アレのことだよな?」
「俺だけじゃなく、教室にいる野郎連中もそうだし、杏たちも気になっているぞ」
「知ってる。いつ声をかけるべきかタイミングを見計らっているところだ」
夏休みの真ん中、登校日ということで久しぶりに学校に来ている。
それは仕方が無い……として、自分の中では処理済み。
それよりも、尾関はもちろんのこと、クラスの誰もが俺の動向に固唾を飲んでいるのには、とある彼女がそこに来ているからである。
「なぁ、真緒」
「一応聞くが、何だ尾関」
「お前の姉……いや、先輩は何かに追われているのか?」
「まぁな。桃未さん曰く、見えない何かに狙われててなおかつ、操られているらしい」
「せっかくの美人先輩なのに、奇行を目立たせていたら駄目だろ。行って来い」
ということで、俺のいる教室の出入り口付近でまるで何かに追われているかのような動作をしながら、俺に熱い眼差しを注いでくれている彼女に声をかけることにした。
「ここは安全ですよ? 桃未さん」
「うわおぅ!? な、なんでぇい! そこにいるは愛しの真緒くんじゃないか。安全かどうかは、あたしが決めるぜ」
「分かるけどさ、学校に来てまで見えない何かを気にしても、仕方なくないか?」
「真緒くん……あたしを助けてくれないの?」
「それにしたって、俺の教室に来てもさ~……一応、桃未さんは先輩なんだから」
「い、一応とは何だい! ふんだっ! 真緒くんという男は桃未さんという健気な先輩女子を見捨てるというのかい? 全く、親の顔が見てみたいよっ!」
「……同じな」
「くっ……あたしは負けないよ? おのれ、見えない何か! この胸のモヤモヤをいつまでも留めておくほど、甘くないぜ! では真緒くん、また会おう! アディオス!! チュッ!」
投げキッスとか、嬉しいような寒いような。
胸のモヤモヤって、胸やけ?
何か重いモノでも食べたのか?
登校日から桃未さんの行動にやられっぱなしだが、早く何とかしないと!