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31.桃姉さんのファーストな感触!? 市営プール編③


「……んん、んむむ……むっ?! んむーんむーんーんーんー!!」


 姉貴と柚子先輩の激しいやり取りがあったかと思えば、少しして辺りが静まり返った直後だった。


 遠慮がちに柔らかな唇が触れて来たと思っていたら、押し付ける強さに加減が無くなり、人工呼吸どころか息の根を止めに来ているんじゃないかと思うくらいに苦しい。


「ちょっ! 桃! ダメダメっ!! それは人工呼吸じゃなくて、とどめを刺しに行っているって!」

「ゼーハーゼーハー……そ、そんなことを言われても、は、初めてすぎて分からないぞ!!」

「ええー!? 人工呼吸も初めてどころか、キスもってこと?」

「お、おぉぉう……ま、真緒くんにあげちまったぜ」

「何を意識してんのか知らないけどさ、そういう感情も持ってるんなら、なおさらウチに任せとけば良かったのに! で、真緒くんは?」

「……し、死んでないよ?」

「当たり前でしょーが!! どこの悪魔だよ!」


 死にかけたけど、泣いてしまうので黙っておこう。


 柚子先輩ではなく、姉貴の人工呼吸はキスっぽくて、唇に塗っていたらしき桃の香りがした。


「……桃未さん」

「ま、真緒くん!! はぁぁぁぁぁ~~よがっだぁぁぁ!!」

「生きてるからな? 何でそこまで泣いてんだよ」

「だってだって……あたしのせいでまた真緒くんを溺れさせてしまって、あたし自身に泣けるよ……うぅっ」


 怒る気は元から無かったが、自分のせいで自分が悲しくなるなんて、何とも桃未らしい。


 それにしてもファーストキスというか、口づけ行為自体が初めてだなんて、いいのだろうか。


『塚野~~! あんたも来てたんだ?』


 まだ桃未からの口づけの感触が残っていた中で、どこから聞いてもうるさい声が俺を呼んでいる。


 この二人もGPSで追跡されているのかというくらいに、よく出会うのはどうしてなのか。


「塚野くん、こんにちは」

 

「あ、うん」


「むむむむっ!? ちょこざいな!」


 姉貴からのファーストな感触の余韻が残る中、それでも変わらない姉貴が可愛すぎる!

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