3.姉貴を探そう!
姉貴と一緒に休日に買い物に行くのは珍しくない。
人混み自体は俺も姉貴も好きじゃないが。とはいえ家の中で退屈するよりは、マシという考えだけは一致。
それだけに、姉弟でお出かけすることが多かったりする。
もちろんこれも姉貴の頼み事。しかもよりにもよって、親たちがいる前で。
「真緒くん、外に出かけるから!」
「ほい、行ってら」
「……彼氏のフリをしておくれ!」
「は?」
俺と同じような反応を親たちは見せていて、「あんた何言ってるの?」と制止しようとするかと思えば、親たち推奨の関係。
ふわふわしている姉貴のことは親たちも認識しているらしく、そういう意味で俺はうってつけの役目らしい。
「うわ~~すっごいね! みんな同じ顔に見えるくらい、人だらけ~!」
「気のせいだけど」
「いやいや~人混みの中に交じって行ったら、もしかしなくてもあたしってば別人になっちゃうかも!?」
「また不思議な桃未になろうとしているのか。というか、あり得ないし。そうなる前に桃未の手を握って離さないようにする」
「えっへっへ~! 真緒くんは寂しがり屋だね!」
「それは桃未の方な」
「ぶ~! 意地悪い真緒くんは一度迷子になって、あたしというおっきい存在を有り難く思えばいいんだよ!」
「いや、頼むから迷子にならないでくれよな」
「知らな~い!!」
休日にわざわざ人だらけの繁華街に出かけるのもどうかと思うが、そんな時でもお構いなしに姉貴はズンズンと勝手に早歩きをする。
人の波に流されるように、姉貴は俺との距離を次第に離していく。
当たり前のように迷子になり、俺は姉貴を探す羽目になった。が、姉貴の言っていたことはあながち間違っていないくらいに人が多く、顔も似た感じに見えて探しようがない。
「真緒く~~んんん!! こ~~こ~~だよ~!」
「俺はここだぞーー!!」
二人で迷子になっていて、結局混雑が解消されるまで出会えることが無かった。
「ったくもう! 真緒くんが迷子になってどうするのさ!」
「ご、ごめん……」
「うんうん! 今日も一日お疲れ様だよ。真緒くん、頑張った! 迷子はアレだけど……彼氏にならなくても、これからは手を握って離さないんだぞ!」
くっ……可愛すぎか!
元はといえば姉貴のせいなのに、強く怒れない可愛さがありすぎた。