26.彼氏のフリの資格!?
同じクラスの女子たちとの遭遇は、姉貴を大いに奮わせてしまった。
屋台のあらゆる食べ物に敵なしと言わんばかりに、ほぼ制覇していた。
「サイフの心配はともかくとしても、俺、また心配なんだけど……」
「ぬぁんだとぉ~!! 桃未さんの彼氏役をしているならば、彼女に何も言わない優しさも必要じゃないのかね! そこが駄目なんだよ! いいかい、真緒くんはそこら辺が――」
どうしてもお腹いっぱいにして満足し足りない姉貴を見ると、二の腕その他もろもろの部分に、いらぬ心配をかけてしまう。
もちろん、密かに尋常じゃない隠れ筋トレをしているのも知っているし、一切手抜きの無い体育をしていることも分かっているのに、やはり弟なりの心配はあるもので。
「おんやぁ~? ネエチャン、ナヨったガキと歩いてて楽しいんか~?」
「そうそう、俺らと回った方が楽しいぜ~! その両手に持ちきれないたこ焼きなんざ、いくらでも買ってやるから、楽しもうぜ~」
こんなことは今まで無かったはずなのに、やはり姉貴の魅力に気付かない奴等がいないはずもなかった。
まして夏祭りというだけで、浮かれる人間の方が多いだけに、これは想定外だ。
「真緒くん、守れる?」
「えええっ? えーと……」
これも彼氏のフリとしての資格を試されているのか。
しかし二対一で、姉貴は両手塞がり。
手を握ってダッシュして逃げることも出来ないなんて、難易度が高すぎる。
「あああ~~ん? そんなガキ、ほっといて行こうぜ~なぁ~~?」
「ほらほら、ガキはすっこんでな!」
「え、えと、その……か、彼女に手出しは……させない」
「は~ぁぁぁ!? 今なんつった? 聞こえねぇなぁぁぁ?」
「おらぁ! もう一度聞こえるように言ってみろや!」
せめて体当たりくらいは食らわせられるだろうか。
「真緒くん、守って……あたしの大切なたこ焼きさんたちを守っておくれ!」
「はい?」
姉貴から手渡されたたこ焼きパックを大事に抱えていると、姉貴は絡んで来た男たちを次々と投げていた。
「はっ?」
「とおぉぉぉりゃああああ!!」
「ぬはっ!?」
「ぐぼぁっ!?」
な……ん……ですか、これ……は?
「むふふふ……恐れ入ったかい? 桃未さん、密かに紫帯ですぜ?」
「それって、柔道の?」
「うむうむ! それよりも、たこ焼きさんをよくぞ守ってくれた! 真緒くんには褒美を遣わそう!」
「あ、うん」
「ほい、あ~ん」
「あ、あ……ん」
「ほれほれ、もう一つおまけにあ~~ん!」
「あーつーいー!!」
「ふふ、ありがとね。さすが、あたしの彼氏くんだ。真緒くんにはその資格と素質があるぜ!」
「ど、どうも……」
何から何まで姉貴に敵いそうに無いが、強さも兼ね備えているとか、姉貴最強すぎる。