22.先生とお呼びなさい!!
「うっわ~~塚野、ひどくない?」
「うるせ~かりんとう! ……うぅっ、何で……ちゃんとポイントは聞いたのに……」
「塚野くん、ど、どんまい」
姉貴にポイントだけを聞いた小テストの結果が帰って来た。
結果は散々なもので、期末に加算されそうにないのが痛すぎる。
「塚野くん、期末対策は一緒にやろうか?」
「あ! それならウチもウチも!!」
「いや、いいよ。かりんとうといるだけで、今回よりも落ちそうだし」
「何だと~! 塚野のくせに! 言っとくけど、塚野よりもマシだからな!」
「それに人気女子を独占するのは、マインドが落ち着かないし」
「他にアテはあるの? もし無かったら、いつでも声をかけていいからね。来週までに声をかけてくれたら、調整出来るし」
「あ、うん」
クラスで一、二の人気女子がどういうわけか、俺に話しかけて来る。
これに腹を立てて眺めているのは、男子全てと姉貴であり、気軽に誘ってくれても困ったりする。
「贅沢なヤツめ。かりんとうと杏に誘われるとか、どこのハーレム野郎だよ!」
「知らないぞ、そんなのは。尾関も気付いているだろうけど、廊下にいる彼女の視線の強さが分かるだろう?」
「まぁな。期末対策も先輩に頼むんだろ?」
「……というか、小テストの結果を教えた時点で、その先に起こることは目に見えて分かる」
「先輩、頭いいもんな。それに引き換え、真緒はな~……厳しい先輩からの教えとか、うらやま!」
「優しくは無いからな。変な想像すんなよ」
「でもあいつらよりも先輩を希望だろ?」
「否定しない」
そんな思いのままで家に帰ると、おかしな姉貴がおかしな格好で待ち構えていた。
「真緒くん、あたしのお部屋に来なさい!」
「え、ど、どうした? その格好……」
「早くっ! ノートとテキストを手にして来るのですっ!」
「分かったよ」
一体どこから調達をして来たのか、姉貴は何故か白衣を着ていた。
しかも何のイメージを参考にしたのか、メガネ女子と化していておまけに白衣の胸元をわざと開けているようだ。
それはそれでセクシーに思えなくも無いが、姉貴には似合わない。
「桃未、それは何の真似?」
「桃未先生とお呼びなさい!!」
「も、桃未先生……どうして白衣? それだとどう見てもドクターなんだけど……」
「真緒くんはポイントだけ抑えて、他を疎かにしたでしょ!! もう~~先生は厳しく行くわよ!」
「一応聞くけど、先生って響きのイメージで医者しか浮かばなかったんじゃないよね?」
「ち、違うぜ! 桃未を偉そうに思うのです。お分かりかね?」
「偉そうに思えとか、どこのやぶ医者なんだか……あの、小テストは何というかごめん」
「むっふふふふ……先生は成績下降は許さないぜ!! 今夜は寝かしませんよ? いいかね、真緒くん」
セリフだけ聞いていれば、大胆な感じに思えなくも無いが、今の時点で真っ先に寝てしまいそうなのは桃未の方である。
慣れないメガネに加えて、白衣? の心地よさに早くも目がトロンとしているのが確認出来る。
おかしな姉貴だけど、弟の為に体を張ってくれるおかしな頑張りに免じて、頑張るしかなさそうだ。