18.睡魔と友達になりたい?
姉貴は元からふわふわしていると認識している。
狙い通りの天然ではなく、弟の俺でも彼女がどこへ行くのか分からないほど、予測不可能な天然さがある。
だけど意外なことに、成績は常に上位にいるという七不思議さがあったりする。
だからでもないが、姉貴は少しばかり不思議系女子なのではないかなと感じるようになった。
そんな思いの下校途中、姉貴は奇妙な呪文を唱え始めた。
「み~んみんみんみん……むぅぅ」
「セミの気持ちでもお考えで?」
「違うよぉ! 真緒くんは教室でもそうだし、家でも変わらないから悩みなんて無いだろうけど、あたしは悩みまくりなんだぞ!」
「一応聞くけど、何の悩み?」
「みんみん……睡眠! 眠くないの! ちっとも眠くならないんだよ~真緒くんは、桃未さんの苦しみが分からないのかね! あ~睡魔さんはあたしと友達になってくれないのか! 薄情者め」
「そっち!? てっきりセミに生まれ変わろうとでも思っていたけど、眠れないってことか」
よくよく見ると、確かに姉貴の目の下にはうっすらとクマが出来ている。
悩みが尽きない姉貴でも、眠れなくなるとかがあるんだなと、妙に感心してしまう。
「真緒くん、何か知らない?」
「なにの?」
「眠れるようになる呪文か何か!」
だからこそのみんみんって、可愛すぎか!
「オーソドックスだけど、目を閉じてから羊を思い浮かべて数えたら?」
「羊? えっと~」
「野生では見たことなくても、どこかで見たことあるでしょ?」
「あー! モフモフさん!」
「モ……そ、それな! そのモフモフさんを一匹、二匹……って数えていればそのうち眠っているんじゃない?」
「真緒くんを信じて部屋に戻ったら試してみるぜ! ありりん!」
「とにかく根気な!」
モフモフさんって何だよ! といった突っ込みをするよりも、まずは試してもらって眠ってもらわないと、姉貴の不思議系が増加しそうだ。
そのまま家に帰り、寝る時間になったので眠ろうとしたら、姉貴が物凄い勢いで部屋に入って来た。
「真緒くん!! モフモフさんが増えるばかりで息が詰まった! フワフワ羽毛だらけだよ~」
「は? いや……どんなモフモフさんを想像したのかなんて分からないけど、その場に留めないで通過させた?」
「ううん、あたしの周りに集結してたよ~」
「それだと寝れないじゃん! モフモフさんは一体どういう状況で桃未の所にいたんだよ……」
「そもそもモフモフさんって何なんだろうね?」
「俺に聞かれても……」
「こ、こうなったら、真緒くんを数えることにする! 真緒くんならいつでもどこでも思い浮かぶ!!」
「好きにしていいから、おやすみ……」
しばらくして――
『らぶりぃ~真緒くん!! ありがとーありがとー! ぐーぐースピー……』
俺を姉貴の夢にどれくらい出演させたのかは聞かなかったが、睡眠不足は改善されたらしい。
睡魔と友達とか、発言を聞いてますます不思議系に近付いたが、それでも姉貴は可愛すぎた。