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1.恋する味噌ラーメン

サクッと読めるラブコメ新作です。


始まります~


「ねえねえねえ! 何眠そうな顔してんの~?」

「実際眠い……ふわぁ」

「寝ちゃダメ! 隣にいるあたしを見なさい!」

「ん~? 変わり映えの無い、いつもの姉貴が見える……」

「違うぞ? さぁ、お姉ちゃん……ではなく、彼女さんはキミを待つ! さぁ、思いきり来たまえ!」


 朝の通学路。

 姉と弟が仲睦まじい姿を道行く人々に見せつけるのは、決しておかしなことじゃない。


 ただし普通の姉弟の話に限る。

 俺の姉貴、桃未ももみは何かがおかしい……いや、かなりおかしな状況を作り出している。


 姉貴と同じ高校に入学した時、姉貴の近くには常に男の気配があった。


 どいつもこいつも、顔を見れば「桃未さん、俺と付き合って!」だとか、「運命って信じる?」とか、見た目がほんわかしている姉貴は、断る言葉を上手く出せずにひたすら微笑み返すだけだった。


 入学したての俺はというと、右も左も分からない状態で上級生の姉貴に腕を絡まれた挙句、群がる男たちを前にして、失意と失望を与えるような”告白”をされてしまう。


 それも普通では無く、不思議なセリフのオンパレードでだ。


「キミキミキミ! お待ちあれ!」

「……何か用で――あ、姉貴?」

「ノンノンノン!」


 どうやら姉とばれたくないらしく、人差し指で残像を作り出すくらい、左右に激しく動かしている。


「……何ですか?」

「うむうむ。モヤシ、味噌、チャーシュー、湯気! いやいやぁ、そこ行く少年よ! あたしと恋する味噌ラーメンを食べないかい?」

「不思議系でも目指してんのか? 腹が鳴っていないので結構です。そんじゃ……」

「まてぇぇぇぇい!!」

 

 周りの男たちはどう見ても先輩で、身の危険を感じるのにも関わらず、桃未は俺の肩をガシッと掴んで離してくれない。


「お願いがありまして、少年……いや、愛しき真緒くん。悩める女子の彼氏となりたまえ!」

「帰る」

「待って待って~! 真面目に味噌ラーメン食べたい。食べるまででいいから、彼氏のフリをして欲しいのですよ。ヘルプー!!」

「……脈ありを思わせるような微笑みをやめれば解決する。以上!」

「ぎゃおー! 待ってよぉ……真緒くんは桃未が好きじゃないのかい?」


 姉弟といっても、精神年齢は弟の俺に軍配が上がっている。


 見た目通りふわふわしている姉貴には、危機感だとか警戒といったものが欠落していて、話にならない。

 

 しかし俺だけに聞かせて来る数々の甘えた言動、さらに懐いて来るネコのような可愛さは、可愛すぎて言葉を失いそうになる。


「しょ、しょうがないな。味噌ラーメンまでだから!」

「やっほぉい! ラーメン、ラーメン! 彼氏、彼氏ぃ~!!」


 くっ……その可愛さは反則だ。

 桃未という俺の姉貴は、今日も可愛すぎた。

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